メルボルン、クソカフェバイトの末路③ラスボス店長のこと
〜前回までのあらすじ〜
ひょんなことから、スカウトされて始まったカフェバイト。
念願のカフェジョブをゲットし、バリスタとしての一歩を踏み出したかに思えたが、それは茨の道だった…。
蓋を開けてみれば、いつまで経ってもコーヒーはろくに作らせてもらえず、情緒不安定なクソ同僚には理不尽に振り回される日々。
しかし、ラスボスは他にいた。
それは優しくて頼れるはずの、店長だったーーーー。
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さて、ラスボスの店長がいったいどんな人間であったか。
時系列に沿って話していこう。
まず第1話でも述べたように、
第一印象は、笑顔が素敵で明るく優しい店長、
だった。
しかし接していくうちに、
この人の笑顔、なんか押し付けがましいな、
と感じるようになった。
貼り付けたように、常に笑顔だからだ。
いや、本当に良い人で常に笑顔の人もいる、もちろん。
でもこの店長は何か違った。
笑顔だけど、仲良くしてくれてはいるけど、
心の中ではどう思われているんだろう…。
そんな風に、なんとなくすっきりしない感情を抱かせる何かが、彼女にはあった。
そして、その笑顔の裏に感じる違和感は、日に日に大きくなっていった。
理由を挙げれば色々ある。
それは前述した給料や雇用登録のことも然り、
バリスタとして雇っておきながら、全然コーヒーを作らせてくれなかったことも然り。
次の月から増やすと言われていた週2.3日のシフトが、直前になって急に月2日に減らされ、生活に困窮したこともあった。
また、一見フレンドリーに聞こえる言葉の節々に、どこか冷たくビジネスライクで、人を値踏みし見下す様な態度を、じんわりと、しかし確実に感じていた。
言ってみれば、一人の人間として尊重されていると感じられなかったのである。
しかし、違和感の原因の最たるは、
前記事で触れたクソな同僚の私に対する横暴を、完全に無いものとして扱っていたことだ。
まず、基本情報として、クソな同僚(ここでは以下Aとする)と店長はめちゃくちゃ仲が良かった。
彼女達は年齢も近く、国籍が同じで、もちろん第一言語も同じ。
古くからの友人だったかは定かでは無いが、そうなのでは無いかと思う程、その仲の良さは一目瞭然であった。
当時、私がシフトに入る時、
スタッフの体制は、私、A、そして店長であることがほぼ常だった。
そう、店には私達3人だけなのである。
Aは、毎日私に対して横柄な態度を取り、隠そうともしない為、それは誰の目にも明らかだったはずだ。
しかし、明らかに問題があることに気づいていながら、店長はそれをガン無視。
ただの一度も、助けてくれたことはない。
Aに眼前でファックと叫ばれた時すらそう。
その時店長は私達のすぐ横にいたが、見えていない、聞こえていないかのように振る舞うのだ。
そしてその横暴はガン無視しながらも、
Aとはもちろん仲良く話しているし、
私にも笑顔で話しかけてくる。
不自然な程、Aと私の問題については全く触れずに。
Aのいない場所で、フォローとして私に労いの言葉をかけてくるようなことも無い。
もはや気持ちの良いくらい、その問題を断固としてフル無視なのである。
怖い。怖すぎる。
ホラーである。
この様に、店長はAに加担する訳ではないが、かと言って助け舟を出してくれる訳でもなかった。
そうなると、基本的に3人だけで働いている為、
私の味方が1人としていないのである。
第三者がいない為、この最低な状況を共有する相手もいない。
そう、私はあのカフェで、完全に孤独だった。
そしてそんな状況が続くと、人間こう考えるようになるのだ。
この状況、Aじゃなくて、自分がおかしいのか??
やっぱり私が何か間違ったことをしているのだろうか??????
と。
文字通り、気が狂いそうだった。
更に、店長への信頼を失った決定的な出来事がある。
それは、私がAの横暴に耐えかねて、遂に店長に相談した時のことだ。
勇気を振り絞ってメールで相談したのだが、
要約すると、
「Aの態度があまりにも酷すぎてもう耐えられない。
カフェでは働き続けたいが、Aと同じシフトではもう働けない。」
といった内容のメールを、可能な限り丁寧な言い回しで送った。
(こんなクソな状況でも相手に敬意を払う自分…
今思い返すと良い子すぎて泣けるぜ……)
今までの店長のスタンスもあった為、
Aとの関係を取り持ってくれることは無いだろうと諦めていたが、
流石に共感や謝罪など、何かしらの労いの言葉くらいはかけてくれるだろうと思っていた。
少なくとも、私には状況を知っていて理解してくれる人が必要だった。
しかし。
店長から返って来た返事はこうだった。
「あはは!そんな事思ってたんだ!彼女ああいう人だから!そんな深刻に捉えないで〜!
これからも、頑張って一緒に働いていこうね😉❤️✨」
(絵文字も完全再現)
(そして一緒に働きたくないという相談に関しては無視)
背筋が凍った。
そして同時に悟ったのである。
こいつ、話通じねぇわ🙂
と。
コロナ真っ只中に、当時27歳にしてオーナー兼店長として自分の店を持ち、渦中を切り抜け現在もそれなりに広い店を常に繁盛させていた敏腕店長。
彼女が頭のキレるやり手であることは間違いない。
そんなキレ者で勘もいい彼女が、
この問題に気付いていないわけがない。
もはや、”絶対にこの問題には触れない”という強い意志すら感じた。
そしてそれは、
あ、そういうスタンスで来るんですねぇ〜、承知〜、と、
私の中にわずかながらに残っていた彼女への信頼・希望が、突如として消え去った瞬間であった。
しかし、ここまでの話はプロローグに過ぎない。
本当の恐怖はここからだった。
つづく