#016 牧場にお客様を迎えること
昨年1月からお世話になっている方々が広島を訪れるということで、ご一緒させて頂き、せっかくなのでうちの牧場をご案内させて頂ました。
昨今畜産業は一経営体あたりの飼育頭数が増えており、疾病対策に基づいた衛生上の問題で外部との接点を極力減らす指導がなされています。リスクを減らすためには自由に見てもらうことは難しく、案内するための労力を割ける農家は非常に少ないということも実情です。
今回は梶谷農園さんの訪問、うちの牧場にお客様を案内して感じたことを整理し、今後どのような方針で事業を進めていくかを考えてみたいと思います。
〇北海道からのお客様
北海道チームは神戸を経由してレンタカーで梶谷農園へ。私とビジネスパートナーは広島駅で合流して広島空港からレンタカーで。
0.梶谷農園…前にちょっと寄り道
余裕をもって移動したので広島空港に隣接する八天堂ビレッジに立ち寄ってみました。閉店間際ではありましたが、遊具で遊ぶ家族連れで結構な人手。広島の食材を使った食事や土産、今回は行けませんでしたが体験も色々とできるようで新たな観光地として非常に興味深い。
広島空港は広島県の中央部に位置し、長らく「どこからでも不便」と言われていた場所でした。この開発を機に空港を含めて盛り上がっていけば良いなと思います。
八天堂のくりーむぱんを食べながら梶谷農園さんへ。早めに到着してしまい、時間に余裕があったので更に少し足を延ばして世羅町へ。以前木下斉さんのVoicyでとりあげていたTrip Base 道の駅プロジェクトの一つであるフェアフィールド・バイ・マリオット広島世羅へ。
"地域の知られざる魅力を渡り歩く旅の拠点となるホテル"ということで、事前知識を入れずに見に行きましたが、外観は非常にシンプル。施設建設は積水ハウス、オペレーションはマリオット、食事は地元でという事ですが、どれほどの地域への波及効果があるのか興味があります。どこかデータ落ちてないですかね?
道の駅付帯で、この立地であることで車移動のお客が対象となるので、宿泊施設がないところに設置する意義はあると思いますが、移動が自由となれば競合も増えるので難しいところです。これをきっかけに民間資本の宿泊施設の開発も進んで、地域全体の観光の底上げになれば。こういった開発はなかなか見る機会がないのでとても興味深かったです。
1.梶谷農園を訪問
そんなこんなで寄り道し過ぎてしまい、肝心の待ち合わせの時間にばっちり遅刻。先に食事会をはじめていた北海道チームのみなさんに合流し、ご挨拶。
初対面の方が多く、人見知りな私にとってかなりハードル高めでしたが、みなさんバックボーンが個性豊かで話していて非常に面白い。格闘技をしながら食肉加工業を営む方、大規模に放牧を行う畜産農家、アナウンサー、医師、ハーブ農家、異常なほど顔の広い弁護士…。なんなんでしょうか、面白い人を引き寄せる引力でもでているんでしょうか(笑
キャラクターの濃い皆さんばかりで、代わる代わる話に花が咲く。結局今回はホストの梶谷さんとはご挨拶くらいで、じっくり話をするのはまたの機会に。今回のお礼にうちのお肉を後日贈らせて頂くようにしました。新たな取り組みである今田酒造さんの酒粕を食べて仕上げたお肉をご用意しようと思います。
翌朝圃場を案内して頂きました。
朝の澄んで涼しい空気の中、整った圃場を見て回るのは非常に良い経験。育てられている様子を見ることで昨夜の食事がより一層華やぐものとなりました。こういったところはうちの牧場でも積極的に取り入れたいところです。周辺を散策することで地域自体の魅力も感じることができました。
見学中も従業員の皆さんがてきぱきと収穫を進めていきます。この様子を見ることができたおかげで、梶谷農園のハーブが私にとって思い入れのある食材のひとつとなりました。お店を探す際は梶谷農園のハーブの取扱店を探してみても良いですね。卸先の決め手は「面白がって料理をしているか」ということなので良いお店と出会える気がします。
2.牧場へのご案内
梶谷農園を満喫した後、皆さんをうちの牧場へ。お世話になっていた一部の方はSNSでうちの牧場の様子を見て頂いたことはありますが、実際に現場を見て頂くことでその何倍も感じて頂くことができます。すべてを見て頂くので至らぬ点もお見せすることになるのですが…
牛舎の構造や来歴、どのような点が牛を育てる上で効果があるのか。仕上がる牛の特長、飼育方針、与える餌、体調のチェック方法など話しだしたら切がないのですが、至近距離で牛と触れ合う機会は昨今滅多にないものなのでうちの牧場で経験してもらえることはありがたい限り。
うちの牛達もお客様に興味津々で、おびえることなく近寄ってきてくれたので一安心。お子さんにも「(牛舎が)臭くないね」と言って頂き、日々の取り組みを率直に評価してもらえました。
その一方で設備の不足を痛感。自宅が近いということもあり、牛舎にトイレがなく、お客様を迎えた際にネックとなります。卸、直売していくうえで、牧場を見て頂くことは営業の第一歩。今後はそのようなところへの注力も必要だということを再認識しました。
〇昔との違い
1.疾病の発生、専業化・大規模化
このようなことが本当にあるのかと信じられません。普通に不法侵入です…。昔は役牛として田舎の家には1頭は牛がいたものです。生活の一部であり、今ほどプライベートの概念も薄く、このように問題として認識すらされてこなかったように思います。
役牛としての役割が終わり、専業で牛を飼うようになっていったことで各経営体の飼育頭数は増加していきます。飼養頭数の増加の勢いに伴ってより厳密に衛生管理を行わなければ、疾病の蔓延規模は過去に比べて大きくなりかねません。そのため特定できない人の侵入を制限し、仮に疾病が発生した場合にも要因の特定ができるように日頃から飼養管理を行っています。
そのため上記記事のように無断で侵入して、もし仮にその牧場で問題が発生した場合、原因を持ち込んだ犯人呼ばわりされても文句を言えない状況に陥ることはしっかり認識する必要があります。また野生動物によって疾病を持ち込まれる機会も増えており、畜産農家は対策に追われています。
2.分業化による接点の減少
前述の通り近年の専業化によって地元だけでは飼料を確保できず、飼料を購入することが増え、地域との接点が減少しています。規模が大きくなればなるほど安定的に出荷・販売を行うために問屋と取引を行うことが多くなるため、消費者との接点もなくなってしまいます。
地域との接点も希薄になり、直接消費者に販売する機会もないので交流も生まれにくくなります。結果、市場の評価するものを追求するあまり、消費者の求めるものとの乖離が生まれてしまっています。
効率的ではあるものの、その一方で工夫のできる点を自ら失うことになりかねないことは小規模農家にとって致命的であると考えます。
〇目指す先
今回の経験を通じて、うちの牧場の目指す先を整理してみます。
昨年から直売に挑戦し、小規模ならではの特色を活かし、飼育環境を整え、水分の含まれた素材でも活かせるように餌の配合にこだわったりしてきました。それら取り組みは現場をみてもらうことでより印象強いものとなります。
今回のようなゲストが来た際に民泊まではいかないにしても、しっかりとした調理のできるスペースが欲しい。現場を見るだけでなく、その場で食べることによって私自身の思い入れに加えて来て下さったみなさんにとっても思い入れのあるお肉にしていけることを目指して。
ただ生産して流通にのせていくだけでなく、ちゃんと使われている現場に行ったり、ゲストを迎えられる環境を整えるなどより前のめりで仕事に取り組んで行きたいと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
やはり農繁期は眠気との戦い。
暖かい日差しは容赦なく体力を奪っていきます。
今後も硬軟使い分けながら田舎の小さな肥育農家のリアルを伝えていきたいと思います。スキ・コメント・フォローなどを頂けますと励みになります。
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