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量子コンピューティングエンジニアを雇うと何が出来るか
この記事は量子コンピューター Advent Calendar 2024の7日目の記事です
Executive Summery
量子コンピューティングエンジニアは、以下の経験を積んでいます。
顧客への説明・提案
最新論文の解説やコード実装
顧客技術者へのデータサイエンスや機械学習のレクチャー
データサイエンスや数理最適化のコンサルティングと実装
Pythonのライブラリ開発
C++やRustでのPythonライブラリ開発
そのため、以下のスキルを持ちます。
顧客課題に合わせ、最新技術での問題解決方法を提案するスキル
聞き手のレベルに合わせ、最新技術について説明するスキル
論文をサーベイし、意味を理解し、実装を行うスキル
データサイエンスや数理最適化、機械学習も含め、技術を広く理解し応用するスキル
複数のプログラミング言語を使い分け、ソフトウェアやライブラリを設計、開発、リリース、保守するスキル
こういった経験やスキルを持つ人材を探している方と、他業界への転職を考えている量子コンピューティングエンジニアとの間で、適切なマッチングが行われるようになり、量子コンピューティングエンジニアが様々な分野で活躍できる世界を作っていければと思います。
私について
私は修士卒業後は量子技術とも研究開発とも無縁のキャリアを歩んでいました。しかし、2018年にMDR社(現blueqat社)に入り、blueqatライブラリの設計・開発をゼロから手掛けて以降、量子コンピューティングエンジニアのキャリアを積むようになりました。量子コンピューティングに関する多くの記事を執筆し、blueqatライブラリの普及活動を行い、国内外の人が量子コンピューティングを始め、深く理解するきっかけを作りました。また、その間、IPAが公募している未踏ターゲット事業に採択もされました。IBM Quantumに関する書籍を執筆した他、IBM Quantumのコミュニティが、その貢献者を認定しているQiskit Advocateにも選ばれています。
こういった経歴から、日本有数の量子コンピューティングエンジニアだと自認しています。
産業界における量子コンピューティング
近年、量子科学技術に多大な期待が寄せられています。量子コンピューティング技術はそのうちの中核部分で、未だに基礎研究の段階にありますが、産業界からも強く期待されています。ベンチャーや大企業を中心に、量子コンピューティング人材を抱える会社も増えています。アカデミアに近い基礎研究の研究者だけではなく、応用研究や実用を目指す人材も必要となってきています。しかし量子コンピュータの産業応用は必ずしも順調ではありません。
量子コンピューティングは実はビジネスとしてあまり成り立っていません。現在、キラーアプリがないどころか、まともに動くアプリケーションがありません。米国の上場しているハードウェア系ベンチャーの売上高を見れば、有名なハードウェアであっても、売上が少ないと感じられるでしょう。ソフトウェア業界はさらに厳しい状況です。今の非力な量子コンピュータを化学計算に活かせるアルゴリズムの発明者らが2017年に立ち上げたベンチャーは、かつては、ハードウェア事業を持たない量子コンピューティングベンチャーのスーパースターでした。しかし、2023年のSPAC上場時、彼らは量子コンピューティングではなく生成AIを掲げるようになり、2024年の10月には破綻しました。
量子コンピューティングエンジニアのキャリア
このように量子コンピューティングは、まだビジネスとして成り立っておらず、企業は投資として量子コンピューティングに参入しています。しかし、企業がビジネスとして成り立たないものに投資としてお金を出せる期間はそれほど長くありません。多くの企業では数年で、方針転換、縮小、撤退などが余儀なくされます。また、そういった企業から量子コンピューティングの仕事を受託していた企業もその影響を受けます。
企業としては、投資をし、将来性の判断をし、場合によっては撤退することは理にかなっています。しかし、量子コンピューティングのために入社した量子コンピューティングエンジニアは、こういったときどうするのがいいでしょう。仮に量子コンピューティングから撤退しても今の会社に残りたいのであれば、会社内で別の出来ることを探すのはいいかもしれません。もしそうでなければ、どういった道があるでしょう。
こういった悩みは、若い研究者や技術者はそれほど深刻に考える必要がありません。先進的で高度なことに取り組み、活躍していたことは他の業界でもポジティブに捉えられ、ポテンシャルの高い人材として迎え入れられるからです。しかし、若手と呼ばれない年齢になってくると事情は一変します。キャリアアップとしての転職をするためには、転職先で行う業務に対して確かな経験とスキルがあり、それを活かしてパフォーマンスを発揮できるということを説明できる必要があります。
量子コンピューティング業界の外で、「量子コンピューティングをやっていました」と言って、その経験やスキルが伝わることはまずありません。書類選考で「当社とマッチングするポジションがない」と言われて終わりです。この記事では、量子コンピューティングエンジニアが持っているであろう経験とスキルを言語化します。量子コンピューティング業界から去られる方や、なんか量子コンピューティングとか言ってる人から職務経歴書来たんだけどという採用担当の方の参考になれば幸いです。
量子コンピューティングエンジニアの積む経験
量子コンピューティングビジネスは規模が小さいため、分業があまり進んでいません。そのため、量子コンピューティングエンジニアは比較的「なんでも屋さん」になりがちです。私は多数の量子コンピューティングエンジニアと個人的な交友があります。私や他の方々のやっていることをまとめると、量子コンピューティングエンジニアは以下のような経験を積んでいます。
顧客への説明・提案
量子コンピューティングは営業担当者だけでは説明しきれないことが多く、量子コンピューティングエンジニアも同席し、説明します。顧客のやりたいことをヒアリングし、適切な技術を提案します。
最新論文の解説やコード実装
我々は、量子コンピューティング関連の最新の論文をサーベイし、顧客の抱えている課題に合った技術を提案し、実装します。
顧客技術者へのデータサイエンスや機械学習のレクチャー
顧客から、量子コンピューティングについてレクチャーします。また、その際、データサイエンスや機械学習に関しても要望を受け、レクチャーします。
データサイエンスや数理最適化のコンサルティングと実装
量子コンピューティングだけではなく、データサイエンスや数理最適化についても相談を受けることがよくあり、コンサルティングから実装まで行うことが出来ます。
Pythonのライブラリ開発
Pythonのライブラリ開発を行うことがよくあります。ゼロから設計・開発を行い、リリースや改修、保守までを行います。
C++やRustでのPythonライブラリ開発
Pythonで速度が出ない部分を、C++やRustでライブラリを書くことがよくあります。
量子コンピューティングエンジニアの保有スキル
上で見たように、量子コンピューティングエンジニアは、量子コンピューティング以外にも様々な経験を積んでおり、以下のようなスキルを保有しています。
顧客課題に合わせ、最新技術での問題解決方法を提案するスキル
聞き手のレベルに合わせ、最新技術について説明するスキル
論文をサーベイし、意味を理解し、実装を行うスキル
データサイエンスや数理最適化、機械学習も含め、技術を広く理解し応用するスキル
複数のプログラミング言語を使い分け、ソフトウェアやライブラリを設計、開発、リリース、保守するスキル
キャリアの幅を広げたい
著者は、量子コンピューティング分野でも、それ以外の分野でも、将来につながりそうな話や面白そうな話は随時募集しています。副業も可能です。
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