アイルランド紀行vol. 15 「蔵田、ステイ先を追われる。の巻」
アイルランド、ゴールウェイで過ごした語学留学中は、ノックナカラパークというエリアにホームステイさせてもらっていた。
学校のあるまちの中心部からチャリで20分ほどのところで、雨の日以外はかなり快適なサイクリング。
まあ、雨が多いのが問題なんだけど。
ステイ先の老夫婦はステキな方々で、ほがらかだしご飯も美味しい。
他のルームメイトとも仲良くして過ごしていた。
そんなステイがひと月ほど過ぎたある日、語学学校のスタッフの方から呼び出しを受けた。
この方日本人なのだけど、我々学生の勉強のために日本語でのコミュニケーションはせず、日本人の学生にも英語で話をしていた。
その方から、
「ちょっと今回は日本語で言う。君のステイ先から苦情がきている。君はしょっちゅう遅くまで飲んで帰ってきて、夜中にシャワー浴びて寝るらしいじゃないか。こんな不真面目な学生は初めてだって言われてる。うちの学校にとって学生もお客さんだが、ステイ先の家庭も大事なお客さんだ。なので君には別の家でステイしてもらう。」
と言われた。
反論は認めない、という感じで。
というか通達だった。
心あたりは、ある。
残念ながら。
ゴールウェイに無数にあるパブはそれぞれに魅力的で、ローカルなパブに行き、ロックなパブに行き、静かなパブに行き、ギネスやキルケニーやりんごのシードルを飲んでいたのは、紛れもない事実であった。
まぁ、ステイ先の老夫婦も、思ってることあったら直接言ってくれてもよかったのに、とは思ったけれど。
学校側も一度は俺に事情聴取してくれてもよかったのに、とは思ったけれど。
「だってギネスが美味しいんだもの!」
とは言わず。
心はモヤっとしたけど空気を読んで黙ってしまう。
というか、その時思ったモヤモヤをすぐに言語化することができなかった。
引越しのためステイ先で荷物をまとめていると、老夫婦が来て
「今度うちにステイに来るのが親戚同士でね、ふた部屋ないと困るって言うからうちになったのよ。マサーカには別のところに行ってもらうけど、そこも素敵なお家よ。」
とのこと。
お?あぁ。
「本音と建前」って日本文化と聞いてたけど、アイルランドにもあるのね。
この老夫婦は穏やかで素敵だったし、お家も快適だった。
ステイ先が替わるなんて経験もないだろうからよしとしよう!
と引っ越してから2ヶ月後、
「家族でスペイン旅行に行くから、元のステイ先に戻ってね。」
と言われるとはつゆ知らず。
いや新しいステイ先では帰宅時間も気をつけてました!って話。(ほんとか?)
"Welcome back!"
と老夫婦に言われ、なんとも言えない気持ちになった、っていうお話。
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