Aventurineの祈り
今日、出かけるとき、あのネックレスをつけようとふと思った。
大学時代の親友と大学を卒業する時、ピアスとお揃いで買ったネックレス。
柔らかいグリーンの石は、Aventurine 。
自信をもたらし、成功に導いてくれる石。
淡く薄いピンクの石は、Rose quartz。
愛と癒しをもたらし、内なる美しさを輝かせてくれる石。
最初に提案したのは私だった。
けれど私にとってそれは、卒業の記念というより、祈りだった。
この先、私がどんな風に変わってしまっても、もしくはどんな風にも変われなかったとしても、環境が変わって、時間が経っても、彼女との記憶を忘れずに、自分を取り戻すものが欲しかった。
楽しかったことや感謝しきれないことまで、自分の暗闇に惑わされて壊してしまわないか、自信がなかった。自分の醜い心のせいで、嫌いになったり憎んだり、遠ざけたくなかった。
大切にしまってあったそのネックレスは、久々に陽の目を浴びて、まるで役目を果たすのを待っていたかのように、光ったような気がした。
私と彼女
私と彼女は、大学に入学した初日のオリエンテーションで出会った。
同じ学部に同じサークル。毎日のように顔を合わせて、明日も会うのに朝まで長電話をしたりした。
大学生活の全てに彼女がいた。
もう大学生だというのに、泣きながら大喧嘩をしたこともあった。口を聞かずに無言で歩いたこともあった。当時は真剣だったけど、くだらないことすぎる。
彼女が大失恋したときは、私の家に泊りにきて泣きながらスパゲッティを食べていた。そのあと男が血迷って告白してきたときは、人生が終わるかと思った。
彼女に新しい彼氏ができたとき、今度は私がお酒を飲みすぎたまま勝手に帰り、悪酔いが効いて散々な目に遭った。
かったるい授業を途中で抜けてはくすくす笑ったことも、小さいことに一喜一憂したことも、上手く言えない時間、大学生活の4年間、全ての季節のかけがえない記憶に彼女がいた。
彼女のお陰で楽しかった。彼女のお陰で乗り越えられたことが沢山あった。
彼女について
季節を重ね、何度目かの誕生日を祝って、大人になる岐路に立った。
私は立てなかった。
起きている異変を、大学で唯一彼女だけに伝えたとき、彼女は動揺しなかった。代わりに、一緒に考えようと言った。
「もしも、私のこと嫌いになっても、私は何も変わらないから」とメッセージが届いたとき、私は出かけ先でトイレに駆け込んで声を殺して泣いた。
私が自分と向き合って闘う日々は思ったよりも長く続くことになった。
文章での連絡も送れずに音信不通になっても、彼女はずっとメッセージをくれたり、他の心配する友人たちを誤魔化して、橋渡しをしてくれた。
卒業式を目前にして久しぶりに再会した時、彼女はミモザの花束と一緒に、手作りのアルバムをくれた。
大学生活が楽しかったこと、ちゃんと覚えていて欲しいからと言って。
卒業式に出た私は、仲が良かったみんなとお泊まりをして、翌日もドライブをした。
幻のようにふわふわした最後の数日間は、終わるのが信じられなかった。
私は
緑に光る石のネックレスを見て、そんな彼女のことを思い出した。
私と正反対なのに、何故か気が合った彼女のこと。
わがままでよく泣いた私と何故か4年間も一緒にいてくれた彼女のこと。
彼女がくれたアルバムを開いて、楽しかった思い出を、昨日のように思い出した。
手紙を開いて、"おばあちゃんになっても仲良くしてね"の文字を見た。
"◯◯の唯一無二の友達、◯◯より"と書いてあった。
私は、眩しい彼女が好きだった。
彼女に、ただ、
会いたいなあ、と思った。
"私がいなくても貴方は取り戻せる、もう大丈夫 "
役目を果たした緑の光が、そう言って優しく揺れたように見えた。