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カイゴはツライ?第3話~業務に追われて利用者さんをなおざりにする


1ヶ月が過ぎ、ようやく仕事に慣れてきた頃、ユリは利用者さんへの対応について先輩職員から厳しく叱られた。特養では重度化がすすんでいて、多くの高齢者が、仰臥位のまま浴槽に入れる機械で入浴している。ユリの担当ユニットにも、週に2回この機械による入浴を利用する高齢者が4人いた。宮田さんという寝たきりのおばあさんを入浴させようとして、起こして血圧を測ったら上が200近くあった。入浴は無理だろうと思ったが、こういうときに報告すべき看護師がなぜかみあたらず、入浴時間がせまっていたため、とりあえずもう一人のおばあさんを連れて浴室に向かった。血圧の高い宮田さんはその場に座らせたきりである。入浴中、他のユニットの年配の職員がガラガラッと入ってきて、ものすごい剣幕で怒り出した。「あんた、血圧の高い宮田さんを寝かせもせず座らせたままにして、どういうつもり?自分のやってることがどれだけ非常識かわかる?あんたに介護の仕事する資格ないよ!」怒りはおさまらないようであったが、入浴中でもあり、それだけ言うと出て行った。ユリはただただびっくりして、呆然としていた。いっしょに入浴介助をしていた看護師が「あの人キツイんや。あんましひどいときは他の人に相談すればいいよ」となぐさめてくれた。冷静に考えれば、浴室に待機している看護師に、内線で報告し、指示を仰ぐこともできたのだ。とにかく、機械浴に遅れてはいけないと、そのことばかりに気をとられ、利用者さんのことは二の次になっていたのだ。入浴がすむと、さきほどの年配の職員に呼ばれた。怒りはおさまったようで、諭すように話し出した。「あんたは、とにかくバタバタし過ぎている。慌てなくてもいい。新人が時間通りにできないのは当然だ。職員がバタバタしていると、利用者さんも落ち着かなくなる。」さっきとはうってかわって優しい口調だった。最初はかなりとまどったが、叱責の内容はそのとおりで、ユリはかなりこたえた。だが、いいタイミングで厳しく注意されてよかった、とも思った。自分では仕事に慣れてきたつもりでいたので、このままつき進んでいたら、大きな失敗をしていたかもしれないのだ。優先順位というものを考えるよい機会となった。

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