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カイゴはツライ?第4話~老人介護の常識


ユニット型の特養では、月に一度ユニット会議が行われる。利用者のケアについて職員が話し合うのである。ユリは利用者さんともっと関わりあいたいと思っていたし、保育との違いに戸惑いがあり、そのことについてもみなに話をしたいと思っていた。だが、ユニットリーダーの松岡さんは、職員会議の申し送りとやらで、介護報酬の話やショート利用者の数、すでに終ってしまった行事食のことなどをながながとしゃべるばかりで、30分経過しているのに利用者さんの話にはならない。ようやく報告が終わると、「利用者さんのことでなんかある?」とまるでついでのように聞くだけである。介護福祉士の資格を持つ専門学校卒のあっこちゃんが、ある利用者さんのケアのことで少し話をしたが、それだけである。ユリはなんだか話す雰囲気ではないとかんじ、黙ったままでいた。松岡さんがおもむろに「なんか毎日オムツ交換に追われているような気がするな」と言い出した。オムツ交換やトイレ誘導など、排泄介助に追われ利用者さんとコミュニケーションが取れない、レクリエーションなどもできないと言うのだ。乳幼児施設で働いていたユリにとっては、まさにこのオムツ交換こそが、あまりの回数の少なさに衝撃的だったのだ。高齢者はなんと長時間オムツを当てっぱなしにされているのか。一日に4~6回という回数を知り驚いたのである。長時間のオムツが利用者を不快にしているのではないか、皮膚トラブルを引き起こしているのではないか、又不活発の原因となっているのではないかと気になってしかたがなかったのだ。だが、松岡さんは子どもと老人は違うと言う。確かに違う。子どもには排泄の自立という目的があるが、寝たきりの老人にはそんな目的はない。だがそれにしたって自分がオムツをされたら6時間も濡れたままは嫌なはずだ。目的云々以前だ。松岡さんはけっして老人に対して高圧的な人ではないし、横柄でもない。どちらかというときさくに話しかけるやさしい人だ。他の職員だってそうだ。だが、排泄介助にかんしてはあまり疑問をもっていないようだ。ユリはあらためて、全く別の世界に足を踏み入れたんだなと思った。

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