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保育士さんにも好評だった、あかちゃんと親のコミュニケーションが変わるワークの話し

こどももおとなもそれぞれひとりひとりのヒョーゲンをして、お互いに受け止め合う「ヒョーゲンアソビノバ」でワークショップを開催しました!
場所は高槻市にある浦堂認定こども園。0歳~1.5歳のお子さんと保護者を対象に、あかちゃんとのコミュニケーションにフォーカスしたワークショップを行いました。
(ヒョーゲンアソビノバ  主催:合同会社stamp)

弓井:今回は、大人が子どもとの関わり方を見つけ直す、子どもそのままを受け入れるということにじっくりと時間をかけて進行しました。
ワークショップ運営を一緒にやってくださった保育士さんたちからすごく好評で、上記のワークを通して親の視点を変えたり、感覚を変えたりと、子どもと楽しむワークでありながら、親の側に働きかけるものだったことが評価の一因だったと思います。

今回のワークショップ場所となった浦堂認定こども園は、子どもの自由な表現を担保する場として、興味深い取組みを数多く園の中で実践されています。しかし一般的には保育園が親にまで働きかけるとなると、それは園にとって手の届き辛い範囲ではないかと思います。そこに私たちだからできる領域があると感じました。

――今回のワークショップで、一体どうやって参加した親御さんの意識を変えることができたのでしょうか?

弓井:シンプルなことで、実はそんなに大したことはやっていないんです。
ベイビーシアターの役者と行う訓練の中で大事にしている「ミラーのワーク」を中心に行いました。BEBERICAの稽古で行っていることをそのままに、保護者のみなさんに実践していただきました。
ミラー=真似すること。親が子どもの真似をするのですが、みなさん意外とやったことがないんですね。
真似るためには、当たり前ですが、親は子どもをじっくり見ないと出来ません。
今この瞬間は何もかも忘れて、親が自分のことをずっと見てくれている。そして真似してくれている。その状態が子どもはまず嬉しくて、とても喜ぶんです。
大人の反応を上回るぐらいに喜ぶので、一緒にいる親は驚くんですよ。

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自分の子どもの真似をしてみたら、今度は全員で一人のあかちゃんの真似してみます。それもまた、子どもはめちゃめちゃ嬉しい。ちょっと異様な光景です。(笑)

自然に手遊びしているのに、ふっと見るとそこにいる大人全員が自分のことを見ていて、全員自分と同じことをしている。
「うあぁ~なにこれ~!」とあかちゃんでも気付くんですね。

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――ねんねのあかちゃんでも、真似されていることに気づくんですか?

弓井:気づく気づく。みんなが同じ動きをしていると楽しいようで「何してんだろこの人たち~」みたいな目で、じ~っと見るんですね。
泣いてるあかちゃんにも有効です。お父さんお母さんが一緒になって、本当にあかちゃんが泣いているのしっかり真似すると、泣き止むんですよ。あかちゃん。

感動的だったのが、1才ぐらいの子が真似されていることをわかりながら、お母さんに抱きついたんですね。お父さんと来ていた組だったので、それでお父さんが一瞬逡巡しながら、抱きついたんですね。お母さんに。
お母さんも「ふふ」となっていて。すごく良かった。

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この子とかも。なかなか他のワークショップに参加しなかったそうなんです。
でも今回は真似っこだったから、この子がギャンギャン走るのを両親がギャンギャン走って真似て、それでこの子がすーごく嬉しそうで。
普段ならあまり肯定的に捉えて貰えない、”走り回る”ということを、大人が一緒になってやってくれたのが珍しくて嬉しかったんだと思いますね。

自分の大好きなお父さんとお母さんが、怒りもせず自分のことを100%見てくれて、自分と同じことをやってくれている。
この子がめちゃくちゃハッピーそうで、印象に残っています。

――お話しを聞いていると、遊んでいるようで、実は親子間のコミュニケーションを作っているのでしょうか?

弓井:そうですそうです。

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――これはどうなっているんですか?

弓井:あかちゃんの自然体を真似するので、このブロックがある場所が魅力的であかちゃんも大人もみんなここに集まってしまって。
真似するだけではなくて、これはちょっとあかちゃんに仕掛けていきましょうというシーンですね。手だけ真似してから、遊んでみたり。

――弓井さんはこのワークを通して親御さんに何を働きかけようとしているのでしょうか?

弓井:この日のテーマを「みんなであかちゃんになる」にしたんですね。
触るということでこの空間を旅してみましょう。
聞くということやりましょう。
みなさんに目をつぶってもらって、お腹の中のあかちゃんになって、色んな音を聞いて貰いました。

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これは、手にお水とボールを持っています。目をつぶっているみなさんに向けて、お母さんのお腹の中の水がちゃぷちゃぷしている音を聞いて貰いました。
1ヶ月目にあれができて、2ヶ月目にはこれができて。4ヶ月、5ヶ月目になると耳が聞こえ始めて、7ヶ月目になると外のお父さんの声が聞こえ始める。
そんなことを語りながら、みなさんに寝転がってもらって、できる人はあかちゃんを抱っこして重みや体温を感じながら。
「そうか、あかちゃんってこの頃には聞こえているんだ」ということが、情報として分かるわけですね。

色んな音を奏でたり、寝転がっている大人の間を子どもたちがばたばた走り回ったり。
感想を聞くと、「すごく騒々しかったけど、お腹の中の世界ってこれぐらい騒々しいんだな」と言う方や、妊娠中のことを思い出したという方もおられました。

BEBERICAが考える「あかちゃんになる」ことの糸口として、あかちゃんのように触ったり聞いたりして、今一度じっくりと体験してみるということがあります。
そうしてお腹の中のあかちゃんになることを、体験やストーリーを通して実践して貰いました。
その後に、「あかちゃんがどんな風に手に持っているものを感じているのか」「どんな風にこの空間の音を聞いているのか」それらを想像しながらミラーをしましょうと言いました。

1時間あかちゃんになってみて色んな感じ方をされたと思うんですけど、参加された親御さんにこれからの生活でぜひ考えて欲しいのが、「あかちゃんが見ている世界、あかちゃんしか見つけられないことがある」ということなんですね。
私にとってあかちゃんは完全体で、大人にないものを持っていて、お腹の中にいるときから色んな機能を使えますし、あかちゃんをとても羨ましいと思っています。

乳幼児を育てている時期は大変な時期ではありますが、乳幼児期の今しか、この子が私に教えてくれないことがある。それを楽しめる期間は案外短く、今しか出会えないものがあると思います。
「この子が今どんな風に感じているかな。考えているかな」と想像しながら感じて、味わってもらえたら、子育てしている今しかないことがきっと見えてくると思います。
ワークではそれを伝えたかったし、感じて貰えたらと思いました。

――参加された保護者の方の感想はいかがでした?

弓井:「まねっこだけで子どもがこんなに喜んでくれるのがびっくり」とか、「とにかく子どもがすごく嬉しそうだった」という声が多かったですね。

あとはお父さんの感想で、「子どものマネをしたら足がつりそうで」と筋肉の話される方が多かったです。(笑)ワーク中は色々と感じている様子でしたが、気持ちが言葉になっていない、言葉にするのがまだ気恥ずかしいのかもしれないですね。
子どもを見るのが、女性の方の役割として大きいことがまだ一般的なので、子どもについて言及するのは、女性の方が言いやすいと感じます。
男性が言うときには、「言っていいのかな?」というハードルもありますよね。認めることにも、体が慣れていないかもしれません。

――参加する方々に感覚や気付きなどの変化を起こして、親の側は、自分自身の変化を認めることをしていく。そういうことをしているわけですか?

弓井:それを楽しみましょう!と言ったのかな。
子どもは自分とは全然違う生き物ですから。子どもが見ている世界を一緒に見て、その人たちが見ている世界を楽しんで欲しいですね。

――まねっこの効能としてお話しいただいた形ですが、体験している要素としては非常にベイビーシアター的と感じました。

弓井:非常にベーシックなベイビーシアターの要素で出来ています。
自分に変化を起こして感覚を自由にしていく作業としては、インプロ(インプロビゼーション=即興演劇)に近いものがあるかもしれません。
BEBERICAで非常に影響を受けているのが、クロード・レジとインプロなんです。自分が6年間所属していたインプロ劇団の主宰は、インプロの大家と呼ばれるキース・ジョンストンの弟子、高尾隆さん(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院)でした。
キースや高尾さんは何か一つのインプロをやるのに、必ず哲学を話してセットにします。だから今回のワークでも、一番はじめに何をやっているのか全てホワイトボードに書いて始めました。一つ一つのワークに意味があるということを、大人にきちんと意識してもらいながらやりました。

――子どもが生まれることをきっかけとして意識し直すような、そんなあかちゃんとのワークでしたが、ワークを通して自分にない感覚を学んだり気付きを得たり。むしろ大人に向けた学び直しのようで、とても良い機会と思えました。

弓井:確かに、親の側にワークショップを展開していくのも面白いですね。親御さん向けのカリキュラムとして、次はぜひ提案していきたいですね。


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