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8月20日 #アジアベイビーシアターミーティング レポ4日目【ヨーロッパと日本の親子観の違い】

4日目。折り返しました。早いものです。
これまでいろいろな方に実践報告をいてもらい、乳幼児演劇に関するさまざまな視点を語ってもらいました。それが研究者の方の講義によって整理された日でした。
クリエーションは二日目で、ゲネプロをやりました。明日は子育て支援センターで公演があります。ごくごくわずかな時間で20分ほどの作品をつくり上げることができたのは、参加者のみなさんの経験知に寄るところが大きいでしょう。

自己紹介・実践報告パートでは二人の方が発表しました。
一人目の方は主に、フェスティバルで海外のアーティストとの出会いのこと、それから「お節介」をテーマに活動していることを報告しました。
もともとはコミュニケーションが苦手だったそうですが、コミュニケーションが重要である演劇には関心を持ち続け、今ではコミュニケーションにがっつり関わる活動をするようになったそうです。
質問コーナーでは海外のカンパニーとのコラボについての質問で盛り上がりました。印象的だったのは、日本は型的に一からつくろうとするが、海外のカンパニーはいろいろ試してからシンプルにしていくという創作に関する議論でした。

二人目の方は、研究者の方で、いくつかのトピックをもとに乳幼児演劇の基礎的な情報を紹介しました。まずは、子どもの権利条約について、それから、ヨーロッパと日本の乳幼児演劇の作品を映像とともに紹介し、最後に乳幼児演劇の創作のポイントをまとめていました。
ヨーロッパで乳幼児演劇のネットワークがつくられる背景には、社会包括への関心が広がり、子どもの権利について考えられるようになったことがあるそうです。この背景の部分がしばしば見逃されているのではないかという指摘がされました。これを受けて、ヨーロッパの乳幼児演劇と日本(あるいはアジア)の乳幼児演劇の違いについて議論になりました。そこで、親子観に違いがあり、日本の親子関係は過保護気味なのではないかという説が挙がりました。
いろんな作品の映像を見て、ヨーロッパの乳幼児演劇が子どもの反応に合わせて行われているのに対し、日本の乳幼児演劇はかなり作り込まれている印象を受けた理由が、この説によって説明できるような気がしました。

「過保護」という言葉で思い出したのは、新幹線が走っているのを見て、男の子に向かって、「ほら、~くん、新幹線だよ!」と声をかける母親という光景です。そのときは男の子は面倒くさそうにそっぽを向いていました。
彼は、自身が新幹線に気づいて、そのことを感受する以前に、母親によって意味付けされた価値観を押し付けられているわけです。
どれほど優れたパフォーマンスであろうと、「これも見た方がいい、これも見た方がいい」と次々にパフォーマンスを提示されたら、食傷気味になってしまい、感受どころではありません。
私たち大人は大量の記号的な情報を処理することを良いことだと思っているかもしれませんが、それは豊かな感受の機会を奪っていることになっているかもしれません。

これに関係して、プログラムとは別の雑談のような時間でしたが、乳幼児演劇をインクルーシブの視点から捉える議論がありました。
老人向けの演劇だったり障がい者向けの演劇だったりにも共通するのは、社会から疎外されている人たち、ふつうでないとされている人たちに感覚的に接近する点だろうということです。
これまた個人的な意見ですが、現代は極度に「ふつう」が高度化している時代だと思います。あらゆる「ふつう」が基準として評価として降りかかってきます。
乳幼児や老人、障がい者の方々の感覚に寄り添い、彼らがどんなふうに世界を経験しているのかに迫ることは、他者理解という点でも優れていますが、それだけでなく、私たちが極度の社会化によって失ったものを取り戻すことにもなるはずです。

夜には、城崎の若旦那の方とお話しました。アートと町おこしについての議論が中心でした。
町おこしをするとして、それがアートである必要はあるのか。優れた実践があるとして、それについてアートという言葉を使う必要があるのか。なぜなら、アートが好きな人には刺さるが、アートに関心のない人にとってはむしろ距離感を感じさせる言葉だからです。

若旦那の話で印象的だったのは、直接的で分かりやすいロジックとそうではないが本質的なものとの両輪で進めるというアドバイスでした。
乳幼児演劇を地域でやることの意義はいろいろあります。その本質的な意義として、母親と子どもの居場所なることや、それによって人とのつながりが生まれることが挙げられます。しかし、それは間接的な効果であり、乳幼児演劇を知らない人にとっては説得力があまりありません。
最初のきっかけをつくるためには、乳幼児演劇は子どもにとってこんなふうに良いとか、乳幼児演劇をすると町の収入がこんなふうに増えるといったロジックが必要です。このことはアートに限った話ではありません。
城崎の人にとって、城崎らしさを味わってほしいという思いがある一方で、若い観光客のニーズに応えておしゃれなお店を受け入れるということもあります。理想と現実と言い換えることもできます。

どちらか一方ではなく、この二つがあることで素晴らしいムーブメントが進んでいくわけです。

4日目のごはん
8/20 #朝食
#ビーガンカレーライス又は即席パン
#ハニージンジャートマト
#バナナ
#おから団子スープ

アジアベイビーシアターミーティングとは?

アジアの国々で、乳幼児を対象とした舞台芸術(=ベイビーシアター)に関わる人たちの継続的なネットワークづくりを目的として、国を超え、知識・経験を共有し、国内外で作品を製作し発表できる環境づくりを目的として開催。
世界の各地には、ベイビーシアターのネットワーク組織があり、ファンドレイジングをはじめとした相互支援の仕組みがあります。アジアで個々に活動を続ける個人や団体が繋がる場を目指して、今回アジア初の開催をBEBERICAの企画制作で行いました。

期間:2020年8月17(月)〜8月24日(月)
会場:城崎国際アートセンター Kinosaki International Arts Center
http://kiac.jp/jp/


文:仁科 太一

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