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「コミュニケーションデザイン」の私的価値観
こんにちは、SmartHR でコミュニケーションデザインに取り組んでいる bebe(@watabebe) です。
これは、SmartHR コミュニケーションデザイン Advent Calendar 2024 16日目の記事です。
本記事では、今期の活動(特にデザイン業務)を通じて「自分はコミュニケーションデザインをこんな風に解釈しているなぁ」と自身の価値観に気づいたことを共有したいお趣旨です。
が、今期トライした施策の具体での活動そのものがまさにそれだったため、施策の説明が中心な構成となっていますので、そのような前提でお読みいただけますと幸いです。
■目次
・2024年は色々やっていた話
・具体のデザイン活動の話
・本題:自身のコミュニケーションデザインに対する価値観の話
2024年は色々やってました
この1年は、半年区切りのペースで取り組む業務内容が様変わりしてきたので自己紹介の仕方に迷う場面が増えていました。
1月からはコミュニケーションデザインセンターの活動とブランドマネジメントのチームを担当して、この7月からは経験もなく映像制作のチームを担当するという、具合です。
そして来期2025年はまた異なる活動に注力する予定です。
社内で知り合うはじめましての方から「どんな業務をされているんですか?」と聞かれる場面が少なくないのですが、そんな状況なので、なんと言おうか数秒黙り込んでしまい、周りから戸惑い顔で「えっ(?)」と反応されたことも稀によくありました。(それはそう)
プレイングも始めました
加えて、今期から現場でも少しデザインに取り組みはじめました。
これまで6年ほど、業務の割合としてマネジメントが占める部分が多かったのですが、思い立って自ら手を動かすことも取り組み始めました。
というのも、最近「デザインの成果の出し方」のようなテーマで、記事やイベントを通じて話されているのを見かけますが、まさにそのような背景にあります。
例えば以下の Cocoda の記事。
記事を書かれている Alma さんともお話させていただく機会があり、激しく共感しました。
デザインが貢献できる場面はあらゆるところにありますが、会社の状況が日々・年々変化する中で、よりインパクトを出せる・重要度の高い課題、もまたグラデーションで移り変わります。
Cocoda 記事内の言葉をお借りすると、"デザインが介入することでいま必要な事業成長のための指標を向上させる"こと、これに現状況の中で自らトライしてみたくなったためです。
そのような背景からVIDEOチームの活動の傍らで、マーケティングチームが課題について会話しているSlackチャンネルに参加しヒアリングさせてもらったり、他デザイナーの施策に飛び入り参加する、など機会を探した結果、実際にいくつか取り組みを始めました。
今回はその活動の一つで「インサイドセールスのコミュニケーションにデザインでアプローチしてみた」事例をご紹介します。
インサイドセールスのコミュニケーションデザイン
インサイドセールスチーム(以下、ISチーム)と導入前のお客さまとの間にあるコミュニケーションをより良くできないか?という試みです。
顔写真入りの名刺をつくりたい、という相談がきっかけ
ISチームは、SmartHRに興味・関心をもたれたお客さまに、電話やメールなど様々な遠隔からの手段を通じて、導入検討・商談への意向を高める活動をしています。
そのISチームから「顔写真入りの名刺」をつくりたいとデザインチームにご相談があり、課題探しをしていた自分も、担当予定のメンバーに声がけして参加させてもらったのが始まりでした。
自分としては、そもそも対面の機会の少ないISチームが「なぜ名刺?なぜ顔写真入り?」など興味深かったのでした。
また、たまたま過去に他セールスチームのために顔写真入りの名刺をつくったことがあったことから、今回の企画背景も気になっていました。
ひとつの接点からその先で起きていることが気になった
伺うと、ISチームが追う「商談獲得数・獲得率の向上」のために、展示会・イベントに参加することも増えていて、そこで担当者を覚えてもらいやすくしたり、後のお電話の際に思い出してもらいたい意図から、写真入りの名刺で印象に残したい、ということでした。
ただ、これはあくまでアイデアの一つであり、名刺に限らず手を打ちたいことも伺いました。
名刺制作の背景は伺いつつも、名刺交換後のコミュニケーションがどうなっているのか?そこで起きていることはどんなことか?その先の展開を想像したかったので、更に状況を伺うことでISチームのコミュニケーションの全体がクリアになってきました。
■ISチームの状況(一部)
「1度の連絡では商談まで繋がらない」
「スムーズにいかず時間がかかることが多い」
はじめに商談につながらずとも、◯月にまたご連絡しますね、と一時話を置きつつも関係値づくりのためにこまめに架電して状況を聞いたりしている「最近どうですか?」
「不信・不要・不急の突破」
都度電話をするにしても「営業色が強い」と嫌われてしまうことは避けたい。ヒアリングを深く行い、その人のためになる情報を共有して信頼を醸成していき、不信・不要・不急を突破する。
その回数を重ねて、商談につなげる。
業界、担当者、地域によって情報をカスタマイズし、1 to 1で情報を届ける。
(脱線)話がズレますが、見聞きしてなんとなく知っていた情報であっても、一次情報として直接聞くと腹落ち感がすごいのはなぜなのでしょうね。
話を戻します。
お話を伺いながらお客さまの状況を想像すると、すぐ商談に!と進めるまでの関心には至っていない状況で、メールや電話などその時々でのインプットでは、自分に有益な情報であっても記憶・情報が蓄積されにくそうだなという印象を持ちました。
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※犬と亀のモチーフに深い意味はありません
自分の業務で例えると、プロジェクトのMTG議事録が各回きっちり残してあるのに、それらが個別に存在していて一覧化されていないようなイメージです。
前回と前々回の議事録を見たいけど、それぞれどこだっけ…?と探さなくてはならない…。そんな感じです。(伝わるかしら?)
「共通のコミュニケーションの場」を提案
そもそも自分自身もメールでのやりとりはあまり得意ではありません。
メールのやりとりが度重なったときの、どの連絡でどの話をしたんだっけ…? と漁っても見つからない情報の海に潜るような辛さ…。
自分から送った時も、受け取った時でもそんなことが多々あります。
これまた最近の自身の業務で考えると、「自分」と「チーム・プロジェクトメンバー」との間で情報の一元管理・共同編集することが大半です。
その体験をセールスのコミュニケーションでもつくれたらどうだろう?と考えました。
一つの場所に情報を置いたら、双方がそこで同じ情報を取得できる。
受け取る側は気になった時・時間ができた時にそこに見に行けば、情報がアップデートされている。
機能としてはそんな場です。
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※犬と亀のモチーフに深い意味はありません
ライトに始めたい、運用しやすくしたい、ニュアンスも表現したい
では、どんな形で実現するかという部分。
業務ツールを用いることで、そのような場自体は簡単に実現できます。
「情報を共有する」最低限の機能だけに絞れば、Google Drive・Boxなどのツールを使って実現できそうです。
実際に、セールスチームの使用するツール(Salesforceなど)との相性を考えてBoxを使うことも検討していました。
ただ、そこに一言言葉を添えたり、コミュニケーションのニュアンスを入れないと、1to1でお客さまのことを真摯に考えているISチームの温度感は伝わらないのでは?と思うと、資料形式かあるいはサイトなど、コンテンツの柔軟な見せ方は必要そうだなと思いました。
といっても、初めての試みなので効果もわからず、予算も確保していない、早く試して効果を見たい。
自分1人の作業コストで、ISチームも気軽に閲覧・FBできる、柔軟に情報を更新でき、お客さまも閲覧できる。
その条件を鑑みて figma のプロトタイプ機能でトライしてみることにしました。
今の段階では、以下の効果をクイックに検証したい。
・コミュニケーション効率が良くなるか
・パーソナライズした情報の一覧性が顧客エンゲージメントに寄与したか
本来のツールの目的とはやや異なる使い方かもしれませんが、今の状況にはウェブサイト構築・ノーコードツール制作では状況的に too much で、プロトタイプ機能がむしろちょうど良かったのです。
近いところで Notion とも迷いましたが、どんな粒度・形式の情報であっても直感的に伝わるよう柔軟にレイアウトできる余地を持っておきたいことから、現段階では figma で進めることにしました。
簡易なプロトタイプで話がガガッと進む
イメージを伝える目的で、「つまりこんなこと」のわかる最低限の情報でつくったプロトタイプを見てもらったことで、元々この提案に関心を持ってくれていたISチームが更に熱量を高めてくれて、話がグッと進みました。
一見のパワーがすごいんじゃ..。
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着地もミニマムに
そこからは具体的な顧客情報で、ISチームと詳細を制作。
これまで取っていたコミュニケーション・コンテキストを共有してもらい、中身は自分の方で大方作りながら、ページ上でのコミュニケーションの取り方を擦り合わせて完成としました。
元のプロトタイプではリストから詳細情報にアクセスする構造で考えていましたが、担当のISメンバーと会話をするなかで、離脱の可能性を極力減らしたいこと・画面を遷移するストレスを抑えることを重視し、LP 形式なページとなりました。
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効果のほどはこれから
先週実施したばかりで、効果のほどはこれからです。上手く行っておくれ...!!!
まずは数名のお客さま向けにトライアルし、効果があれば他の数社さまでトライアル、更にうまく行けば展開できる形にしていければと思っています。
またその際は適した方法に、ツールなども見直すかもしれません。
そこまでうまく行った際にはまた共有しにやってきますね。
本題:コミュニケーション上の課題を創意工夫でより良くしたい
インサイドセールスチームの活動に興味をもち、お客さまとの間で行われるやりとりが更に伝わりやすく、やりとりしやすく、より負荷の少ない体験となるためには、こんなコミュニケーションの形をとってみてたらどうじゃろうか?と考えた一つの形でした。
※商談につなげる目的は前提に
今回の事例のような取り組みが自分にとってのデザインであり、あえて言うならコミュニケーションデザインかもしれんなと、割としっくり来たのです。
手段として figma のプロトタイプ機能を活用しましたが、比較的最近使われているツールではありつつも使い方が目新しいわけではないと思いますし、アウトプットの形自体は情報を載せたよくあるウェブページの構成です。
状況次第では検討にあった box を使って一度やってみましょう、と提案し特につくることもなく着地していたかもしれません。
様々なコミュニケーションを、その状況・目的に適した手段とストーリーを構築し、理想の状態を目指す創意工夫の取り組み。
自分にとっての「コミュニケーションデザイン」はおおよそそんなところなのだなと、本活動の中で自分の価値観を改めて体感する機会となりました。
余談
自分はこんなことが大好きですが、同僚にこの活動の話をしたときに、その同僚はとにかく表現の品質を追いたいことを改めて感じているようで、自分の興味とは全然違ってそれぞれなんやな〜と思ったんですよね。
これまで積んできた経験や、所属した環境、など影響しているのでしょうね。
デザインとは、コミュニケーションデザインとは、そういったことに思いを馳せる機会が時折ありますが、向き合う課題に対してその人らしい振る舞いが表れながらそれぞれに取り組むものなのだろうな、と思うなどした昨今でした。
ひとそれぞれのコミュニケーションデザイン。
最後に
デザイン活動の中でも人によって得手不得手、興味の濃淡が変わるものかと思いますが、自分はこのような活動をコミュニケーションデザインと捉えて取り組んでいます、というお話でした。
今後も役割や領域にこだわれずに自分なりに"デザイン" をやっていこうと、改めて思った2024年でございました。
みなさま良いお年を〜 👋
おわり