備忘録的ふりかえり
気づいたら1年が終わろうとしております。みなさまいかがお過ごしでしょうか。流石に今年は色々あったので振り返っておきたいと思います。
研究関係
論文
まずなんといっても論文「虫屋の採集技法:「野生のナヴィゲーション」としての昆虫採集」の出版。今年度はこれが出せてよかった。
虫屋フィールドワークは3年くらい続けてきましたが、ようやく論文化できました。査読者、編集者の方にすごくよいコメントを貰えて、今後の展望も見えてきた1本でした。名刺代わりに色んなところに持っていけて、これをきっかけにいろんなつながりもできました。
研究会
今年は割と研究会を頻繁に開催した印象があります。まず3月25日北海道大学にて青年心理学系の先生方と情報交換会。以前からお世話になっている先生方で、師匠筋の先輩方でもあります。大変良くしていただいた。しかし、11月の青年心理学会にいけなかったのは残念であります…。
次に3月26日札幌学院大学にてフィールド研究と生態心理学的実験研究の架橋研究会。勝手に名付けましたが名前ないです。以前からお話を伺いたかった先生が北大、札学大にいらっしゃり、思い切って行ってみることに。こちらも大変有意義な会だったのですが、もう少し企画を練ってうまいことフィールド研究の旨味と実験研究の旨味を引き出すような議論にできればよかったと反省してます。とはいえ、いらっしゃった先生方には大変お世話になり、今後とも継続して議論していきたい所存です。
そこからちょっと飛んで12月14日、実践とコミュニケーション研究会再始動。青学の高木光太郎先生が以前やられていた研究会で、私も参加していたのですが、コロナ禍を期に休会状態でした。それを復活させたというわけです。事例研究とか隣接領域の議論を深める研究会なんですが、まああんまり垣根のない会ではあるので、どなたでも参加可能です。ご関心ある方連絡ください。次回は2月8日に開催の予定です。イカれた後輩のイカれた発表が見られると思います。
学会関係
学会大会にもいくつか参加してきました。
10月12-13日 日本認知科学会大会
今年はOS【人間中心から人間「性」中心デザインへ:Donald A. Normanと戸田正直の足跡を辿る】の公募に出したら採用していただき、デザイン系の人たちと議論してきました。個人的に、昨年ドナルド・ノーマンの初期論文を読み込んでいて、今やっているANT系の議論とも接続点がありそうだなと思っていたので、ちょうどよい機会でした。とはいえ畑が違うので盛り上がるかどうか不安だったのですが、蓋を開けてみればかなり楽しく、議論も好意的に受け止めてくださり、こちらも今後継続して議論していきたい所存です。
10月19−20日 日本質的心理学会大会
こちらはいつもどおり早稲田の細馬先生、滋賀県立大の高梨先生と一緒にやっているシンポジウムをやり、今年はがんばってポスター発表も出しました。
シンポジウムの方は、他の先生方に比べると私はグダグダで、ちょっと準備不足が否めない感じでした、反省。もうちょっとあのシンポジウムにおける自分の立場というか立ち位置を明確にしていきたいところです。他のお二人の先生がかなり強力なアイデンティティを持っているので、なかなか難しくはありますが…。もうちょっとフィールドワークに寄せたほうがいいのかな。映像とか作品の分析は、やっぱちょっとやったくらいじゃ勝てないんだよな。
ポスターは、昆虫の保存技法ということで、虫屋の方々の虫の〆方とか保存方法について報告してきました。見に来てくれる人はちらほらいて、来てくれた人の反応はいい感じだったんですが、他のポスターに比べて人数が少ない気がしてて、質的心理学会だと状況論系はあんまり受けないのかなーと思ってたら、後日、なんと大会優秀賞受賞の連絡をいただきました。印象と違ってびっくりしたんですが、見てくれる人はちゃんと見てくれてるんだって自信になりました。
12月14日 日本蝶類学会大会
招待講演にお招きいただきました。インセクトフェアにて運営をやられている伊藤さんと知り合って、連絡を下さり、招待いただくことになった次第です。講演は「認知科学から捉える虫屋の採集技法:野生のナヴィゲーションとしての昆虫採集」というタイトルだったんですが、ガチ蝶屋のみなさまの前で報告するのはさすがに緊張しました。とはいえ、ディスカッションやその後の懇親会などで大変熱心に色々教えてくださり、ものすごく勉強になる会でした。今後はぜひ蝶もやってみたい!
イベント関係
今年はかなりイベントもやりました。
2月2日「イル・コミュニケーション」 @学問バーkisi
ラッパーのダースレイダーさんが「イル・コミュニケーション」を出版されたので、その議論を深めるイベントでした。ダースさんの歯切れ良いトークと、いらっしゃった方とのディスカッションが楽しく、大変良かったです。
2月17日、フィールドワークについて語り尽くすバー@学問バーkisi
こちらはひょんなことからお誘いいただき、科学における「フィールドワーク」を考えてみるというイベントでした。人文社会系は私だけだったんで不安でしたが、蓋を開けてみれば和やかな良い会でした。ここから最近良く絡んでるてっさんたちと仲良くなったんだよな。
3月3日「ドイツ近現代史よもやま話」@学問バーkisi
私が登壇したわけではないのですが、友達のハズレさん、ちぬさんを学問バーに紹介して、一緒に参加させてもらったという次第です。ちぬさんにはここで初めて(直接)お会いしたました。内容としてもドイツの釣り文化などがわかる大変おもしろい会で、人も結構集まってて良かった。
以下は先日書いた↓のnoteにまとまっているので、ささっと紹介。
4月29日「昆虫採集家の認知科学」について語るバー @学術バーQ
https://x.com/bebe13572468/status/1777928455805673550
5月14日「生物学とその周辺についてゆるく語らう:進化も、生態も、「生き物屋の認知」も 」@学術バーQ
7月2日:不穏と機知:精神分析から考える「論理の一歩前」@学術バーQ
9月25日:90s~00s BAR @communivative bar HANABI
12月21日:「これいつ着よう…?」を着てみる夜@communivative bar HANABI
こいつだけ↑のnoteを書いた時点では実施前だったので、ちょっと書いておきますか。読んでわかるように、あんまり着てない服を着るパーティでありまして、12/21、無事開催されました。めちゃくちゃ不安だったんですが、結構人が来てくれて良かったです。
個人的には「これいつ着よう…?」って服からいろんな人の人生に焦点が当たると面白いなと思っていたのですが、どっちかというと「なぜこれを着るのが難しいのか」や「なぜ着なくなってしまったのか」って方向の議論が多かったように思います。それはそれで面白くて、次にやるときはそっちに振っても良いかなと。
あんまりちゃんと書いてませんでしたが、実は、かつてあった(かもしれない)ものを現前に出すときの感情やリアリティの問題は、修論の頃から引きずってるテーマなんです。ある種のノスタルジアの問題で、私達は忘れたかもしれないもの、忘れたかったもの、忘れることができないものとどう向き合うべきなのか。個人的にそういうモノとか思い出が多くて、自分に近すぎてなかなか論文にするのは難しいんだけれども、こうやって実践レベルで色々考えられるといいなって思ってます。あと服を媒介にしていろんなつながりができるのがうれしかった。またそのうちやります。
日本、パーティが少なすぎる。ガッツリしたやつじゃなくていいから、もっとみんなパーティを企画してほしい。あたしも企画するから。
イベントまとめ
振り返ると、後半にHANABIのイベントが増えてます。最近はあんまり考えていないんですが、なんか学術のノリじゃない形でやっていきたい機運があった気がする。授業とかやってても、学術的に面白い内容を話すと、刺さる人には刺さる。けどかなり多くの人には刺さらない。でも感想とかチャットをやって、そこから学術的なところに昇華することで、かなり多くの人に刺さることがある。このあたり「俺の話はおもろいんだから聞け!」じゃなくて、もっと観客の内在的な視点からいろいろなことを始められるんじゃないか。というわけで、トピック単位(認知科学、生態学…etc)ではなく、できごと単位でイベントを作っていきたいなんてことを思ってたんですね。このあたりの工夫は続けていきたいと思ってます。
フィールドワーク(昆虫関係)
フィールドワーク、とくに採集関係です。いやはや、ミイラ取りがミイラじゃないですけど、もはや趣味で虫を採るようになりつつあります。
今年初めて採れて嬉しかったのは、
・カワラゴミムシ
・クロコブセスジダルマガムシ
・ヨコヤマトラカミキリ
・ツジヒゲナガコバネカミキリ
・ヌバタマハナカミキリ
・オトメクビアカハナカミキリ
・アオタマムシ
ですかね。オトメは御嶽で連敗してたのでようやく採集できました。しかし…、実は一度スミイロをネットに入れたんですが、友達の虫屋に見せようとして掴んで網から出した落としてしまい…。来年絶対リベンジします。
いやーしかし、↑の採集は虫屋の人につれてってもらったやつなんですが、単独での採集は厳しかった。狙った虫はなんも採れなかった印象。何もわからず採った虫が意外とよい虫(ちなみにミスジナガクチキ)だったりはして、しかしこれもまぐれっぽい感じがする。やっぱまだまだ虫屋半人前という感じです。
でもアオタマムシ採れたりとか(これも現地でタマムシ屋さんに色々お世話になった)、オオチャイロハナムグリ採れたりして、楽しかったのは間違いない。来年も頑張ります。あとなかなかマウントできていない虫も多いので、年末年始は標本作成も頑張りたいところであります。
昆虫イベント関係は、まず9月に毎年恒例のインセクトフェアに行きました。終了間際に伺ったのですが、↑で書いたような招待講演につながったりして、紹介してくれた某Kさんに感謝です。今回は色んな人にご挨拶できてよかった。イベント自体もとてもよかった。
次につい先日、昆虫大学に行きました。ちょっとツイートしましたが、やはり大変良いイベントで、ガチの虫屋さんとか昆虫研究者もいつつ、一般のというか、採集をするわけじゃないけど虫を愛でる人たちも集まっていました。コミュニティって閉鎖的になると良くないですし、その点昆虫大学みたいに色々な人に開かれているイベントがあるのは健全でとてもいい。加えて、虫を愛でる人たちも「かっこいい・かわいい・美しい」を土台にして、その一歩先の色々なことに飛び込んでいる感じがしました。それがとても良かった。やっぱりそういう感情で留まっちゃうと、その先にある動物本来の姿とか、生態みたいな話にはならない気がして。とはいえ、その原初的な感情は大切にしたほうがいいし、もちろん否定なんか絶対しちゃいけない。そのあたりをうまく折衷していくイベントのバランスがお見事で、このあたり研究として虫や動物と人間の関係を考えるときにも大切な視点になるように思いました。
来年の抱負
いやはや、いろんなことをやってきたもんだ。来年はイベントを少し控えめにして(全くやらないわけじゃない)、論文読み&書きをメインにしていく予定です。いろんなことが進みつつあるんですが、全部中途半端なんで、ケリをつけていきます。
それではみなさん今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。