イャクエ!

アイオワ州にいた頃の教え子たちは、ボスニア、クロアチア、イラン、イラク、サウジアラビア、ソマリアの子ども達が多かったのに比べて、ハワイではフィリピン、メキシコ、ホンデュラス、マーシャル諸島、ポンペイを含むミクロネシア連邦の子ども達が多いです。

タイトルの「イャクエ!」は、マーシャル語の「ハロー!」。

ハワイに来るまで知らなかったことのひとつにマーシャル諸島と日本の歴史があります。

ビキニ諸島での米軍の核実験が、自分が受け持つ生徒たちの母国で行われていたこと。そして、第一次世界大戦から太平洋戦争時に、日本軍が占領していたこと。教師として自分の無知を恥じました。

母国を紹介するという授業をした時、マーシャルの生徒がネットで検索した画像を見せてくれました。それは、白い砂浜のようなところにある綺麗な透き通った青い池、湖の写真。「これは爆弾の後だよ」とその生徒。「こういうのが島のあちこちにあるよ」とも。今はキレイな池に姿を変えているけれど、戦争や核実験のせいでそれまで普通に過ごしてきた島を汚され、島を離れなければいけなくなったこと。海が汚染され、魚が捕れなくなったこと。核汚染物はドームを作って埋められ、そのドームは、今は老朽化して核汚染物質が海に流れていること。こういう事実を日本人もアメリカ人も知らない人が多い。

そんなマーシャルの生徒たちは、とても家族・友達想い。小さい子の面倒を見るのは当たり前。家では料理や掃除の手伝いをしたりします。マーシャル諸島や他の学校から転校してきた子が学校生活に慣れるように、進んで手伝ってもくれます。

日本軍が占領していた影響から、ひいお爺ちゃんが日本人で顔つきが日本人っぽい子や、トキコ、ナミコ、マサ、など日本の名前を持つ生徒もいます。ある時、スポーツの話をしていて、野球を日本語でなんて言うか聞かれて、「やきゅうだよ」と答えたら、目を輝かせて「僕らもヤキュウ!」「まじで?」「すごいね!」と盛り上がりました。日本語と気づかずに使われている言葉は多いようですね。私の誕生日にくれたココナッツの繊維で作る細工のことは「アミモノ」と言うそうです。

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彼らはさまざまな才能にも溢れています。その昔は、素晴らしい航海のナビゲーター、アートデザイン、ダンス、リズム感、そしてなんといっても歌唱力がすごい! 教会で集まるとみんなで歌ったり、踊ったり。小・中学生なのに、上手にハモることができるんです。男の子もファルセットを使って、なんとも美しい歌声なんですよ! 彼らのハーモニーを聴くといつも感動して涙が出ます。お聞かせできないのがとても残念です。

生活も決して楽ではないし、人種差別にあったりして辛いことも多い子ども達です。「前の学校の先生たちは、僕たちのことが嫌いだったよ」とよく私に言います。生徒がそんなこと悲しいことを感じなくて済むように、私は頑張ります。

「大丈夫、ミスナリタがついてるぞ!」


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【text&photo by Mina from Hawaii Big Island 】

成田水奈 愛知県出身。27歳の時に米国アイオワ州に留学。小学校教員免許を取得後公立小学校で教える。結婚を機に全く興味のなかったハワイ島コナに移住。しかしコナでフラダンスと出会いフラを通してハワイの歴史や文化、自然との関わり方や生き方を学びながら、日系人協会に所属し日系人移民の歴史、功績も学ぶ。離婚後もハワイ島が気に入り引き続き公立中学校で日本語とEL (English Learners)クラスを教える。通訳をきっかけにタマラエネルギーと出会う。自分らしく生きるサポートエネルギーを広めるためアクティベーターとなる。

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