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「雨の日の美術館」/「雨の日の拾い者」

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雨降る日曜日、俺は上野の森美術館の展覧会を見に出かけた。 俺は展覧会の目玉の作品の前で独り言で絵の評論をつぶやいていた。それを耳にした女性がいた。彼女に「私にいろいろと教えてい…
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#処女

雨の日の美術館、第3、4話(Novel Days版)

雨の日の美術館(Novel Days版)雨の日の美術館、第3話(Novel Days版)2017年11月12日(日)、北千住の分銅屋  俺が美香さんを連れて行った居酒屋は、北千住の古い市街にある間口が三間ほどの小さな店だ。葦簀の簾が窓を隠し、食事処の提灯が下がり、居酒屋「分銅屋」の紺の暖簾がかかっている。俺は暖簾をくぐって木の引き戸を開けた。 「いらっしゃいませ」という女将さんの声が聞こえた。薄水色のセーターにエプロンをした、三十代前半の女性がカウンターの向こうの板場に立

雨の日の拾い者、第3、4話(Novel Days版)

雨の日の拾い者(Novel Days版)雨の日の拾い者、第3話(Novel Days版)2017年11月18日(土)、ミノルの部屋 Ⅲ  早紀江がスマホを操作して「ほら、私のプロフがあるからそれを送る。ミノルのLINEのID教えて」とぼくのスマホを差し出した。 「あ~、ぼくはLINEをしてはいけない職業なんだよ」 「え?なにそれ?」 「機密保持、機密漏洩防止でLINEの使用は禁止されている。ぼくは国家公務員だ」 「ええ?まさか警察とか?」 「警察官がいくら18歳とはいえ、

「雨の日の拾い者」第1話

2017年11月17日(金)、夜の公園にて 連日の残業でぼくのマンションの最寄り駅の改札をくぐった時には時刻は十一時半を回っていた。今日は終電2本前。まだ早い方だった。外は霧雨。傘を持っていなかったが、霧雨程度なら徒歩十五分だしそれほど濡れないだろう。  いつもは大通りを抜けていくが、近道の裏道を通っていくことにした。ぼくの住まいは東京の下町。風紀がいいとは言えない。襟を立てて足早に急いだ。  この道の途中には寂れた公園もある。その公園の前を通り過ぎようとした時、公園の中

「雨の日の拾い者」第2話

2017年11月18日(土)、ミノルの部屋 Ⅱ 彼女は薄目を開けてチラチラぼくの下半身を見ている。「キミだって覗き見してるじゃないか?」「だって、男の人の裸を見るのは初めてですから」「基本的には体の基本構造は変わらないよ。進化の分化で男性のあそこが女性のあそこになったりとか」 「ミノルさん!これをですね、突っ込まれる私の身にもなってください。こ、こんなのが!」とぼくのあそこを指差す。 「こんなのってさあ、失礼だろ?」 「だって、そうじゃないですか?何これ?ミノルさん、これ臨

「雨の日の拾い者」第3話

2017年11月18日(土)、ミノルの部屋 Ⅲ 早紀江がスマホを操作して「ほら、私のプロフがあるからそれを送る。ミノルのLINOのID教えて」とぼくのスマホを差し出した。 「あ~、ぼくはLINOをしてはいけない職業なんだよ」 「え?なにそれ?」 「機密保持、機密漏洩防止でLINOの使用は禁止されている。ぼくは国家公務員だ」 「ええ?まさか警察とか?」 「警察官がいくら18歳とはいえ、昨日の真夜中、初めて出会った女子高校生を抱いて処女まで奪いません。研究所勤務なんだ。やってい