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子ども用タイピング練習キーボード使ってみました

〜ELECOM KEY PALETTOの良かった点、残念な点〜

さっそくひとつ入手しました。子どものローマ字タイピング学習用に特化したキーボードは、これまでわたしの知る限り商品化されたことはなかったと思います。正直、こういう商品ほしかったのですね。開発されたELECOMさんには敬意を表します。

ただ、実際に教室で子どもたちと使ってみると、「もっとこうした方が良かったんじゃないか」という点が見えるのも、よくあることです。個人的な意見ではありますが、まとめてみます。

1)左右の「人差し指」が押すキーが全部同色

今回のキーボードのように指毎に色分けされたキーボードというのは、練習を始めるに当たってあった方が良いと思います。ずっと、こういうのが欲しかったんです。ところが、一番残念に感じたのがこの点です。左右の人差し指が押さえるキー16個が全部同じ色で塗られています。この16キーは、右手人差し指で押すのが8個、左手人差し指で押すのが8個と分かれるため、これを色分けして欲しかったのです。同系色で良いので、左右の違いが分かるようになった方が、より教育的に良いと思います。実際にタイピングを指導していると、指がここを越境してしまう子がかなりいるためです。

同じ色にする場合は、この写真のように仕切りを明示するべきです。
そうすれば、右手のキーと左手のキーがよくわかると思うのです。
(仕切りはテープで自作しました。雑ですw)

もう一つ、これはわたしの個人的な考えではありますが、このようにキーを指別に色分けする際、数字キーは色から外して良いと思うのです。このキーボードで練習する必要があるのは、ローマ字タイピングだけでして、数字キーは「どうでも良い」と思います。ホームポジションの延長で数字キーを律儀にタイピングしてる人っていますか? ほとんどの方が、ローマ字だけ打って、数字キーは適当にやってると思いますし、それで良いと思います。ですから、数字キーはここでは「黒」色のキーとしておいて問題ないというか、その方が良いと思います。

というのは、はじめてタイピングを教えるとき、子どもたちに「指によって押すキーが決まってる」という話をすると、たいていの子が「げっ!」って顔するんですよね。これは、「そんなこと覚えなきゃいかんのか?」ということに対する彼らなりのリアクションではないかと思うのですが、数字キーを黒くしておけば、そこは覚えなくて良いというメッセージになるので、導入部分の心理的負担軽減という意味でも、その方が良いと思うのです。


2)何故? キートップ印字のメインが「小文字」

キートップに印字されているアルファベットですが、小文字がメインで、サブに小さく大文字が印字されています。なぜこうしたのでしょうか?

アルファベットを学習する子どもは、普通まず大文字から学習します。そして、学習過程で、大文字は読めるようになっても、小文字が読めない状態の子がかなり存在するのです。そのため、はじめてタイピングを学習する子どもを対象とするのであれば、キートップの印字は大文字をメインにすべきだと思うのです。

実際教室で使ってみたところ、案の定「小文字を覚えてない」子に使わせると、全くだめでした。小さく大文字が印字されていても、そっちを見て打つことができないんですよね。ですので、デフォルトは大文字だけで、小文字はシールで付属する(もしくは交換用のキートップで用意する)ような方が良いと思います。そうしてあれば、教室などでは恐らく複数台購入するようになると思います。


3)キーストロークが深すぎる

これは、一般的なノートPCなどに比べると、という話ではあるのですが、ちょっとキーストロークが深すぎると思います。

この深いストロークを、「押しにくい」と感じる子がけっこういるようです。学校などでの使用を念頭に、かなり荒い使い方をしても耐久性を確保するというような意味があるのではないかと思いますが、ストロークはもっと世の中に普通にあるキーボードと同じくらいの方が望ましいと思います。


4)無刻印のシールをつけてほしい

付録に、キーの読み方などを書いたシールが付属していますが、正直これは無くても良いと思います。シールをつけるなら、「無刻印」、つまり文字が何も書いてないシールを追加して欲しかったです。

これは、当然タッチタイピングを意識したシールとなります。もしこれがついていたら、わたしは複数台購入します。そして1台にこのシールを貼って、「これが打てたら天才だ!」みたいに子どもを煽ります(笑) 実際にタイピングを指導していると、特に意識しなくても速くなる子は自然にタッチタイピングに移行していきます。練習を繰り返せば、だいたいそこまで行けるわけですが、途中段階において、モチベーションとなるような演出として、こういうものがあるといいなと思っています。

さらに、先に書いたように、キートップは大文字だけにして、シールとして小文字だけのものを付属しておくと、さらに複数台購入のフックとなるような気がするのですが、いかがでしょう。読みを書いたシールというのは、他にも見たことがあるのですが、正直 Caps などの読みが書いてあったとしても、子どもたちはそんなことあんまり気にしませんし、練習していれば、そのうち、Shiftの読み方くらいはすぐに覚えます。


5)子ども向けだからといって、サイズを小さくする必要はあるのか?

ちなみに、教室の子どもたち(主に小3以上)に使ってもらった感想は、残念ながらほとんどが「打ちにくい」というものでした。というのも、うちの教室の子どもたちはすでにかなりタイピングに習熟している生徒が多く、普通のノートPCでずっと練習をつんできた子どもたちだからなのです。この子たちには、「子ども向けに敢えて小さめに設計された」キーボードは、もはや「小さくて打ちにくい」という状態になってしまっているということでした。(この感想にはもうひとつ、先のキーストロークの問題もあったと思いますが)

教室の「普通のノートPC」とKEY PALETTO。写真だとあんまり違いがわかりませんが、実際に測ってみると、左のCapsキー左端から右のEnterの右端までの長さが10mmちょっと違います。

一方、このキーボードを使っても良いと答えた子どもは、一様に練習をはじめてまだ日の浅い子でした。つまりまだキーの位置と打つ指の関係がそれほど頭に染みこんでない最初の頃にこれを使うというのは、やはり教育効果は少なくないと思うのです。

ただし実際は、2〜3年生くらいでも普通の大人向けのPCで練習して、きちんと上達することが出来ているわけです。子どもたちはこの先もPCを使うときは、常に大人向けのPCを使うわけですから、なにもわざわざ小さなキーボードで練習を続けなくても良いわけです。

サイズの小さなキーボードというのは、1〜2年生などの、もう少し低年齢をターゲットにした場合必要かもしれません。この年代の子どもは、確かにまだ手が小さいです。ところが、1〜2年生の場合は、手の大きさとは別の問題で、まだタイピングが始められないケースが多いんです。もちろん、この年代だとアルファベット、ローマ字を全く知らない子が多いということもありますが、それを知っていたとしても、まだ手の器用さ(巧緻性)が未発達なことが多く、ホームポジションがとれないという子も結構いるのです。わたしは、その状態の子どもに無理にタイピングを教える必要はないと思ってますので、そういう意味からも、敢えて小さなキーボードを用意することも無いと思うのです。

結局、アルファベットが読めて、ローマ字も何となくわかるようになって、手の巧緻性もある程度発達してきて、タイピング練習を始めるのに適している年代というのは、個人差はありますが、2年生の後半〜3年生くらいではないかというのが、これまで子どもたちに指導してきた個人的な感想です。であるなら、練習用キーボードは、敢えて小型にせずに、大人と同じサイズ、普通のノートPCのキーボードと同じもので問題ないのだと思うのです。

ということで、まとめると、わたしの理想とする子ども向けタイピング練習用キーボードとは、こんな感じになりますね。

  • サイズは通常のノートPCと同じ

  • キーストロークを深くし過ぎない(大人向けの打ちやすいキーボードと同じで特に問題ない)

  • 色分けされたキーボード(数字キーは色分け不要、人差し指担当キーは、左右の仕切りを入れるか色を変える)

  • キートップは大文字で印字(小文字はシールか交換用キートップを付属)

  • 無刻印キーボードにするためのシール(もしくは交換用キートップ)が付属している

文句ばかり書いてしまったようではあるのですが、正直今回のKEY PALETTOが商品化されなければ、ここまではっきりと理想のキーボードは見えなかったと思います。ぜひ、次の商品の参考にしていただければと思います。結局わたしの理想の学習用キーボードを求める旅はまだ続きます(笑)


【蛇足】ちなみに、わたし個人の理想のキーボードはこれですね。
大昔のAppleキーボードから始まって、これにたどり着いてからはや10数年。底に貼るサードパーティ製ゴムシートを装着してから、もうこれ以外考えられないようになりました(^^)

ご存じHHKBですね。使い込んでまして、ちょっと薄汚れているのはご容赦w