EXIT NORTH@BILLBOARD LIVE TOKYO
ギタリスト土屋昌巳氏を調べていて辿り着いた「JAPAN」というバンド。そのバンドのドラマーであるスティーヴ・ジャンセンが新しく結成したバンドが「EXIT NORTH」。JAPANをまだあまり聴けていないのだけれど、メンバーの最新の活動を観ることができる!という勢いだけで行こうと決意。事前に音源を調べる時間もほとんどなかったので、ライブで感じることに自分を委ねようという思いでビルボードに足を運んだ。
照明が暗くなり、開演。最初に奏でられたピアノの、なんと美しかった事だろう。エリック・サティを想起する、少し枯れた、悲しい…でもとても豊かな音色。知らない人の知らない音楽を聴く時は、それを楽しめるのか不安で心の扉を閉めている事が多いのだが、その美しいピアノは一瞬でその扉をすり抜けて私を優しく満たしていった。この瞬間だけでこのライブに来てよかったと心から思った。
ステージに設置されたスクリーンにモノクロの風景が投影されながら、その映像の為の音楽であるかのように演奏が続く。神の啓示のように厳かな、ボーカルのトーマス・フェイナーの歌声。奏者全員がこの音楽の為に身を捧げている演奏。曲調は暗く寂しげだが、ピンと張り詰めた鋭い空気が確かに存在していてステージから目が離せない。スティーブ・ジャンセンのドラムはまさに今、私が観るべきドラムだった。控えめながらも出される音の全てが熱を帯びていて、静けさの中でこんなにも激しさを表現できるのかと…それを知らなかった自分を恥じるような気持ちになった。
気付けばスクリーンに映し出されている風景-当然、行った事があるはずもない―に、ハッキリと”この景色を私は知っている”と感じた。寂しいという感情はネガティブなだけではない、ある種の崇高さを孕んでいると常々思っている。そして崇高な寂しさは美しい。EXIT NORTHは私のそんな感情に語り掛けたのだと感じた。初見で観たバンドを好きになる感覚が好きだ。まだ聴けていないJAPANへの期待も高まった一日だった。
EXIT NORTH
https://open.spotify.com/artist/0UaSIbNayMHjYkavJTqkVJ