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人生は探求。子どもたちの世界を広げたい|しもかわ人名鑑
こんにちは!今回は下川でのリアルな暮らしぶりを町内の方にお話ししていただく、しもかわ人名鑑。今月は作曲の仕事や、教育委員会で子どもの新しい活動を応援する平間美海さんです。
(取材日:2022年5月)
下川町教育委員会の取り組みについてはこちらのマガジンもご覧ください。キッズスクール関係など、平間さんが執筆する記事もありますよ。
移住がきっかけで、地域と関わる仕事に挑戦
下川町で暮らし始めてから、教育委員会でキッズスクールの仕事をしています。
キッズスクールとは、主に小学生1年生から6年生を対象に放課後に行っている体験スクール。
文部科学省の定義で言えば「放課後子供教室」が正式名称。
「子どもたちの居場所」として始まったキッズスクールも今は「子どもたちへの新たな経験・体験」を得る場所へと変化してきた。
下川町では主旨を「つくる(工作・料理)」「アウトドア」「スポーツ」「地域福祉交流」「プロ企画・最先端・合同開催」「考える」「文化」に振り分け、昨年度は毎月3〜4回を目処に開催。
やったことがない職種でしたが、せっかくなら地域と関わる仕事をやってみたいと思ったんです。
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下川でも作曲の仕事は続けています
2021年度、1年間キッズスクールに関わって思った一番の課題は、
高学年が「おもしろい!やりがいがある!」と感じるものは、
低学年には「難しすぎる」
低学年が「たのしい!できた!」と感じるものは、
高学年には「つまらない」
ということでした。
たしかに、小学校1年生がおもしろいことと中学生が楽しいことって全然違うじゃないですか。
小学1年生でも危なくないノリとハサミで完結するクラフトや折り紙、子ども向けピクニックなどは、高学年になると面白くないですよね。
この幅はどうしようもないので、いくつかのコースに分けることを提案して、2022年4月から新しい形でスタートしました。
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基礎力アップのベーシック
低学年はこれまでのプログラムも楽しんでくれていたので、低学年向けとして残すことにしました。
まっすぐ切る、整理しながら道具を使うなど、知識や経験の基礎力がアップするようなプログラムですね。
応用力を育てるアドバンス
小4〜小6向けには伸ばした基礎で応用発展する力を育てるワークショップ型プログラム予定しています。
低学年向けではできない難易度を上げた工作や、平和や人生について考えるような答えのないことにも挑戦してもらえたらいいなと思っています。
中学生向けクエストラボ
また、今年度からは中学生向けにも「クエストラボ」として「スキ」を増進させる力を育てるプログラムを開催します。
クエストラボでは2種類のプログラムがあるんです。
1つ目は最先端の技術や職業などに触れ「スキ」と出会うワークショップ形式のプログラム。
子どもたちの自発性も大切にしたいと思っていて「やってみたいことはあるけど始め方がわからない」「はじめの一歩は誰かと一緒にやってみたいかも」という声を聞きながら、プログラム内容を練っていきます。
2つ目は3〜6ヶ月かけてじっくり1つのことに挑戦する自己探求型のプログラムです。
完成までに時間のかかるものに粘り強く取り組んだり、過程での様々な人との折衝を経験する経験は大切ですからね。
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学校では出来ないことや、都会では当たり前にできることってあるじゃないですか。
キッズスクールでは、職業体験の幅を広げたり、習い事の一つとなるような取組みにできればいいなと、習い事の一つになれたらいいなと思っています。
自分の世界を広げると、人生って楽しくなりますからね。
自由に生きるために考えて実現した
下川には2年前、家族で移住しました。
ちょっと変わっているんですが、専門学校時代、学生結婚・出産しているんです。
夫とは専門学校で同級生として出会いました。
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作曲をメインに学んでいたのですが、芸術系の仕事って最初は収入が不安定になりやすいんですよ。
ちょうど脂がのってくる30〜40代は、仕事も生活も自由にできたらいいじゃないですか。
だから「20代のうちに子どもを育て始めて、40代からはこんなキャリアの形成をしたい」と夫にプレゼンしたんですよ。
夫にも了承してもらえたので、大学にも相談して学生のうちに結婚・出産しました。
学生結婚というと無計画に思われがちですが、学業に差し支えないように春休み中に妊娠・つわりを終わらせ、夏休みに出産と、かなり計画的でしたね。
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知らない町に住むのはワクワクする
専門学校卒業後は、中国に本社がある会社で音楽制作・脚本・企画などの仕事をしていましたが、中国独特の子育てに対する考え方が合わず、キャリアが積みづらかったんです。
その会社を辞めた時、ちょうどコロナが流行り出した頃で、誰とも繋がれずに家の中で引きこもる期間が2年続きました。
「このままではいかん!」と思い、自然の中で子育てできる環境や、養生のため東京から下川に来ました。
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夫の出身地ということがきっかけで移住しましたが、北海道は観光地だと思っていたので、そうではない下川町のことは全く知らなかったですね。
でも、自分の知らない町に住むのはワクワクするので、あまり深く考えずに移住しました。
収入は多くないですが、どこでもできる作曲の仕事もあったし、コロナでどうせ家から出れないんだったら、もう少しのびのび暮らしたかったんです。
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暮らし始めて2回目の冬が終わりましたが、かまくら作りをしたり、スノーシューで雪の上を歩いたり、子どもと同じくらい雪を楽しんでいます。
雪がある暮らしは初体験なので、どんなことも楽しいですね。
人生=探求
キッズスクールを通じて自分の世界を広げてほしいという話をしましたが、私も幕末オタクをやってるうちにいろんなことに挑戦しましたね。
新撰組の土方歳三さんが推しなのですが、歩いたであろう場所に行ってみたり、遺した書簡を読み解いたり、子孫の方と次代交渉したりと、研究者に片足突っ込んでいるくらい推しています。
中学生は修学旅行で函館に行くんですが、函館は新撰組にとても関係のある土地なんですよ。
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「修学旅行十倍面白くする講座」みたいなものを開催できないかと思っています。笑
幕末を好きになる人を増やして後継を育てたいですね。後続になりたい方がいましたらぜひ。みんなで墓守ろうぜってね。
それはともかく、子どもたちを沼(趣味)に引きずり落としたいんですよ。
歴史にしろ昆虫にしろ川にしろ、何でもいいから沼に引きずり落として、趣味を探求していくっていう、オタクを育てたいんですよね。
人生イコール探求ですから。
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別にプロ級じゃなくてもいいんですよね。何かに狂ったようにハマって、地域のアマプロみたいになればいいかなって。
子どもたちは人生経験が浅いので、キッズスクールでやりたいことを聞いても出てこないんです。
広く浅くでも、新しいことをたくさん経験してもらって、世界を広げてもらうことが大事なんじゃないかと思います。
人生や趣味のお話も、下川の子どもたちにしたいことも、目をキラキラさせて語ってくれた平間さん。
取材後、改めてお話を聞いたところ、修学旅行×幕末の講座を実際に行ったそうです。( https://shimokawa-town.note.jp/n/n8ee8d8c0c8b2 )
行動力にも驚きましたが、それ以上に、自分の考えを持って挑戦することや人生を切り開くことは容易いことではないはず。
それに加えてキッズスクールに関わる子どもたちや、作曲のプロジェクト関係者たちなど、”誰かのため”に力を注ぐ姿には頭が上がりません。
私もキッズスクールで何かできることがあるといいなと、話を聞きながら想像してしまいました。
これからの下川が一層楽しみです。
text:megumi kojima