Sun bear 建(ken)
こんにちは。テディベアデザイナーの宮尾です。
5体のテディベアのうち、3体目をご紹介します!
生息場所:Len kyoto kawaramachi (HP)さん
1階にオープンなカフェバーを併設する宿泊施設には、アットホームという言葉がぴったりな雰囲気が漂います。
住み込みのスタッフさん、バーカウンターでお酒を楽しむ仕事終わりのスタッフさん、そこに集まる元スタッフさん、常連さん。夕暮れ時には”ポテトの日”を楽しむ親子がご飯を食べに来ていたりご近所の方が毎日のようにお酒を飲みに来ていたり。
宿泊ゲストのみならず地域の方にも愛されている場所です。
そして何と言ってもLenさんといえばインテリアがとても素敵です。
北海道の大木を丸々一本使われているカウンターや、廃材の組み合わせで作られたテーブルや椅子など。トイレのドアには重りのついた紐がついていて、滑車にかけられたそれは自動でドアが閉まる仕組みになっています。
細かいところまでデザインされた空間の家具はこだわりの大工さんチームが施工されているそうです。
他にも見ていて楽しい施工が全体に散りばめられています。手工芸好きはきっと隅々まで室内を見たくなること間違いなしでしょう。
「Sun bear 建(Ken)」
アットホーム空間は人が作る、家具は大工さんが作る
今回の大きなコンセプトは「大工さん」と「ファミリー感」です。
スタッフさんとお話をさせていただいた際に、必ずと言っていいくらい内装のエピソードを聞けたので、とてもこだわられているんだなと感じました。
そして大工さんベアを考えていた時に手先が器用な”マレーグマ”が思い浮かんだので、インテリアに合うマレーグマを作ろう、とまず型紙を作成しました。
デザインを考えながらLenさんに通ううちに、大工さん要素だけでなくもう少し深い意味をこのベアに持たせたくなりました。
カフェバーに訪れる人々のなかには、常連さん、家族連れ、若者、コロナ禍でほぼ見かけなくなった外国人の方(恐らく日本在留の方)や、元スタッフさん、様々な方がいらっしゃって、みんなリラックスしていて、誰でも不思議と落ち着く空間がLenさんにはあります。
「本当の家族ではないけど家族っぽい」、スタッフさん同士やお客さんの距離感が絶妙なんだと思います。なので「ファミリー感」。
この「ファミリー感」が、胸元の模様に採用した親子ベアのシルエットに繋がっています。
手先の器用なマレーグマは、こだわりの詰まったインテリアに魅せられて入ったら落ち着いちゃって。思わず居座ってしまったようです。
広々としたソファにはレザーとデニムの見るからに柔らかそうなクッションがずらりと並べられており、ここに座っているのを見ることが多いかもしれません。
制作について
シルエットはマレーグマをリアルめに再現し、生地は合皮をメインで使っています。綿は柔らかめに詰めて、インテリアに合うようクッションの触り心地に寄せています。
頭と耳にはストレートショートモヘアを使用し、センター分けの毛の流れを再現しつつも、ついつい撫でたくなる質感となっています。
子供が訪れることもある場所なので、触り心地が楽しいマシュマロ(シリコン)ペレットを足先に入れ、綿よりも弾力のあるモチモチとした感触に仕上げました。
今回の一番のこだわりは胸元の模様です。
これはクマが向かい合っているシルエットになっており、左が親熊、右が子熊です。
”ポテトの日”のエピソードや、スタッフさんが家族で晩御飯を食べたりする様子を知って、アットホーム感は欠かせない要素だと思いました。
生地を裁断してからUVプリンタで左右それぞれを印刷してから縫い合わせています。UVプリントの特性上、印刷部分を縫い合わせると割れてきてしまうので、まだ改善できる余地があります。
(ちなみに縫い合わせてからだと、高低差がある面には上手く印刷できませんでした)
顔は可愛くなりすぎないように、でもリアルすぎないように、マレーグマの持つ ”じわじわ湧いてくる愛嬌” を感じてもらえる絶妙なお顔にしています。
余談
Lenさんのオシャレな空間は家具や小物が作り出していて、それとは別のアットホーム感はそこにいる人達が作り出していて、テディベアは空間を作るインテリアとしても人と同じ表情のあるものとして空気感を作るものとしてもあり得るのだな改めて思いました。
家の中にいてパーソナルな感情を受け止めるテディベア、お店のような不特定多数があつまる場所にいるテディベア。
場所が違えばデザインも変わる。当たり前なんですけど、テディベアはそこに実用性もアート性も取り入れられて、見る人にストーリーを想像させることもできるんですね。
ああ、楽しいー。