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個別株投資の始め方〜業績予想のススメ〜



1. 人はなぜ個別株投資をするのか?


個別株投資とは、株式市場で個別の銘柄に投資する方法です。なぜ人は数ある投資商品の中から個別株に投資するのでしょうか。それはハイリターンだからです。皆さんはニュースなどで日々、日経平均やTOPIXなどいわゆる株式指数というものを目にしているかと思います。投資家はこのような指数に投資することが可能で、これをいわゆるインデックス投資と呼びます。インデックス投資は、ポートフォリオに数百銘柄入っているため、分散効果が働いており、株式投資の中では最もリスクが少ない投資手法です。一方で、個別株投資やインデックス以外の投資信託をアクティブ投資と呼びます。アクティブ投資は、アクティブという名の通り、ハイリスクハイリターンの投資です。言い方を変えると、個別株投資は市場平均よりも高いリターンを目指す投資であります。この市場平均を超過するリターンをアルファと呼び、井村さんがよく言ってる言葉の意味です。アルファの獲得は、ハイリターンなだけあって非常に難しく、ハードワークとリスクを伴うことを覚えてください。本書ではアルファの源泉やそれを獲得するための基礎をお伝えできればと思っています。読者は初心者をターゲットとしていますが、幅広い読者の方に読んでいただける内容になっています。

2. 個別株選びのポイントとは?


個別株選びは投資初心者にとっても重要な要素ですが、そのポイントを把握することはなかなか難しいものです。本記事では、個別株選びにおける基本的なポイントを解説します。

個別投資する上で絶対にやらなきゃいけないのは、業績予想をすることです。

業績予想はなぜ必要でしょうか。これから生まれる株価リターンは、会社の将来収益から生まれるからです。基本的に今世の中にでている情報(例えば、市場トップシェアだとか、経営クオリティが高いとか)は、全て株価に織り込まれていると思った方がいいです。株式投資は、市場期待とのギャップを探すゲームです。既存の情報をもとに業績予想をし、それと市場期待との比較を行うこと、これが株式投資の基本です。ということで、まずは業績予想について少し深堀してみたいと思います。

業績予想講座

業績予想でやることはシンプルに、トップラインの予想と営業利益の予想です。営業利益が出せれば、それに0.7掛けしてざっくり純利益(正式にはNOPATという)が出せます。

トップライン予想

売上高の予想の仕方は、千差万別ではありますが、フェルミ推定の考え方に似ています。トップラインをいくつかのKPIに分解し、それぞれを予想して、最終的に売上高を導出します。私は、各業界で一定のフレームワークを決めており、それをもとにモデル作りを行なっています。以下に一例を載せます。

小売 - 既存店+新店/店舗数*店舗あたり売上
派遣 - エンジニア数*エンジニア単価
化学 - 数量*市況価格
ソフトウェア - 顧客数*ARPU(単価)
不動産 - 賃貸(物件数*賃料*空室率)+売却
電子部品/電子材料 - 最終顧客or顧客の出荷量
石油 - 原油生産量*市況価格
航空/鉄道 - 旅客キロ*イールド、旅客数*単価

例:派遣会社。エンジニア数やエンジニア単価の予想はガイダンスやヒアリングをベースに。

ヒアリング

機関投資家であれば、基本的に取材を行うことができますが、個人投資家の場合はそうもいかないでしょう。ですが、基本的にメールか電話で問い合わせができるはずなので、そこでヒアリングしましょう。保有を検討している個人投資家ですと名乗れば、ほとんどのケースで問い合わせに応じてくれるはずです。ただ、IR担当者も暇ではないので、5-10分でポイントをついた質問をするようにしましょう。IR担当者との関係構築も非常に重要です。

利益の予想

利益の予想には以下の2つの方法があります。
1. オーソドックスに粗利と販管費を予想する。
2. 予想したトップラインから増収額を推定し、限界利益率をかけることによって増益額を算出する。
1の場合は、会社ガイダンスとヒアリングが非常に重要になります。粗利率・販管費の会社前提の深掘りが必要で、それに対してどれくらい上振れるか下振れるかがポイントになります。2の場合、ヒアリングなしである程度推定可能です。今回は2のケースを簡単に解説したいと思います。

限界利益率を推定したい

限界利益とは、『固定費+営業利益』のことで、限界利益率に増収額をかけると増益額が分かります(つまり営業利益がわかります)。限界利益率を知る方法はいくつかありますが、主に回帰分析を使用します。

回帰分析で限界利益率を知るために、営業利益売上高がわかればOKです。期間に関しては、8四半期分を使うことが多いです。ExcelのSlope関数を使用し、y軸に営業利益、x軸に売上高をとり、算出した数値が限界利益率になる。これを増収額にかけると増益額が算出できる。

例:今期100億円の増収で限界利益率が60%の場合、増益額は60億円

また、以下のように1次関数を導出し、営業利益を算出することも可能。この場合、y=ax+bでaはSlope関数、bはIntercept関数で導出する。注意点は、Rスクエアが高いか確認すること。以下のように相関が認められる場合は、使用してOK。

y軸が営業利益、x軸が売上高

バリュエーションを確認する

営業利益を導出できれば、これに0.7をかけてざっくり純利益が予想できます(NOPAT)。時価総額でNOPATをわると、あなたが予想した利益に対してPERを弾くことができます。

時価総額に対して予想したNOPATで割ると、あなたの予想ベースのPERが算出される

ちなみに、バリュエーションはEV/EBITDAやらPBRやらPSRやらDCFやらSOTPやら色々あるのですが、基本的にPERを使うでいいと思います。株価はマジョリティの動きで決まります。みんなが見ている指標を使えばいいと私は思います。

投資判断:そのバリュエーションは安いのか高いのか

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