オープン・シェア革命についての私見

先日、NHKの人気番組「クローズアップ現代+」にてオープン・シェア革命なる、新しい情報共有の形を特集していました。

番組にはメジャーリーガーであるダルビッシュ有選手、駅伝で有名な青山学院大学陸上競技部の方々が出演されていました。

内容は自身で生み出した練習方法や球種を全て隠さずオープンにして積極的に全世界でシェアすることで業界全体のレベルアップにつながり、お互いが切磋琢磨することで更なる自己のレベルアップをすることができる、というものでした。

オープンシェアをした結果、青山学院大学陸上競技部は勝ちづらくなったが、陸上競技全体でタイム記録は縮んでいるし、それが回りまわって優秀な人材が入部してくれたことを考えると無駄では無かったと語っています。

ダルビッシュ有選手も、技術共有をすることで若い選手の芽を摘み取られることも無くなる、自身も投手として勝ちたいだけでなく、変化球という一つのアートが好きなので皆に見てもらいたいというのもあるとのこと。

他にもメジャーリーガーでサイヤング賞を受賞した、トレバー・バウアー選手は「ピッチ・デザイン」という手法を確立し、所属球団のエースの変化球を握りや手首の角度をハイスピードカメラを用いて解析し三か月ほどでコピーしてみせました。それをオープンシェアをすることでフィードバックを貰うことができ、指摘や提案を受けることができ、それが学びのスピードに繋がり自身の成長に繋がると考えました。

他にも140km/hのボールを投げるにはこのトレーニングを達成したら可能だと明確に数値化することもしているそうです。そうすることで選手もコーチ側も安心して練習、指導をすることができますし、目的地が分からないより、分かっている方がモチベーションも出るのだと思います。はメンバーの選考を決める過程もSNSで共有する等、昔では考えられないようなこともしているそうです。

ここまでで筆者は「天上人」の考え方だなーなんて思いました。

基本的に人より野球が上手くなりたい、プロ野球で活躍したい、メジャーで活躍したいと考えたら自分の武器である球種や練習方法は安易に明かさないと思いますし、陸上でもタイムを縮める練習があるなら一人で行いレコード記録を出したいと考えるのは極自然な考え方だなと思います。

業界全体がレベルアップすることは大変意義がありますが、こと個人レベルで考えた時に周りも一緒にレベルアップすれば自分が埋もれてしまう可能性もありますし、仕事や立場が無くなることも考えられます。

なのでオープンシェアをする場合は、その手法で自分が高みに至った時にそれをシェアすることで安心して業界のレベルアップに貢献できますし、長い目で観れば自分の為にもなると考えられます。

成功途中でシェアしたいなんて思いますかね?

それと敢えて警鐘を鳴らすなら、他人から与えられたものばかりを享受していると考える力が損なわれるのではないかと考えています。

先人が残した手法を取り入れることは非常に有意義ですし行うべきですが、それを選別することも他人に委ねてしまうことはそれはただの操り人形なのではないでしょうか。確かに明確に目的があることは良いことですが、それは考えることの放棄です。ボトムアップとしては良い手法ですが、類まれなる才能を持つ若者にとってはどうなのでしょうか。その練習方法が一般化することは、選手によって練習メニューを考えることでなく画一的に行ってしまい、才能を持つ若者を育てられないのでは?と思ってしまいます。

時代に名を遺すレジェンドたちのそのほとんどが才能に恵まれた上で、自分で考えて努力した結果栄冠を掴み取りました。そして埋もれていったそのほとんどが能力はあるがやり方を教えないといけないような選手ばかりです。中には指導によってその才覚を発揮した選手もいますがそれもきっかけに過ぎず、後は勝手に上手くなっていったのです。

誰でも140km/hを投げられることは素晴らしいトレーニングですが、その先には必ず才能の壁に当たります。

どれだけトレーニングをしても圧倒的な才能には敵いません。生まれ持った能力が原チャリなら、国産車、外国車にはどうしたって勝つことは無理です。原チャリでもチューン次第で能力を上げることはできますが、限界があります。もしトレーニングでダルビッシュ有選手を作ることができるなら、とっくに野球界はダルビッシュ有選手だらけです。近づくことはできるかもしれませんが才能がないなら不可能です。

大谷選手が登場した時、その多くのプロ野球OBや現役選手は2刀流は無理だと発言していましたが、メジャーで2刀流として評価されている姿を見て考えを改めた人がほとんどです。圧倒的な才能を持ちさらに努力をする者には凡人はどう足掻いても勝てません。

最後に著名な格闘家範馬勇次郎の言葉を引用しましょう。

脱力だの消力だの・・・・・そんなモノはお前達で共有していればいい」
「お前達・・・とは?」

「俺を除く総て!弱者同士で工夫したらいい。極意だの・・・奥義だの秘伝だの
ウエイトだのスタミナだの・・・・と。それらの創意工夫は・・・・
闘争という物質にある不純物だ!」

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