「こだわり:生活のしやすさ=9:1」 “聖域”の自室で過ごす店舗開発者
「仕事終わりに、ガラスの冷蔵庫から瓶のコーラを取りだしてカッと飲む。そんな“ちょっといい暮らし”をしたいですね。」
おうちの様子を語ってくれたのは根来正樹(ねごろ まさき)さん(以下まさきさん)。まさきさんは普段、コンセプトづくりや内装など、店舗の開発に関わる全てをサポートするお仕事をしています。
視界に入った家を一軒一軒訪ねて「おうちの中見せてください!」と突撃したい欲求がある筆者は、そんなまさきさんに話を聞いてみることにしました。
こだわり空間を作るお仕事の人は、おうちもこだわっているのか?
話を聞いてみると、意外な一面が見えてきました。
自室は聖域 共有スペースは親しみ
——自室にはどんなこだわりを持っていますか?
自室は神聖な場所、サンクチュアリだと思っていて、かなり作り込んでいます。
テレビが部屋にあるだけで、生活感が出て「もう終わりだ……」ってなっちゃうくらい(笑)
雰囲気で言えば、レトロ空間に統一しています。
古めの家具、黄色っぽい照明、庭から切ってきた植物が置いてある感じです。特に照明が好きで、間接照明やフロアランプを部屋中に散りばめています。
今は一軒家で妻と2人暮らしをしているのですが、こだわりが強い空間は自室だけです。2人で住む空間は妻との折衷案で作っていきたいので。極端に言うと、自分のこだわり空間が3畳だけでもあれば、あまりストレスを抱えずに過ごせます。
——自室と共有スペースのこだわりに、そんなに差があるんですね……。
自室と共有スペースでのこだわりの差がありすぎて、たまに妻と喧嘩になることがあります(笑)
「寒いからこたつ作って」って言われて作ったりして、古民家をDIYしながら暮らしているのですが、まだまだ共有スペースのリノベーションが終わらないんですよね。妻は便利な家電などを使って快適に過ごしたいみたいなんですが、私としては少し不便でも「暮らせたらいい」ぐらいにしか思っていないので、その点で喧嘩になります。
こだわりと生活のしやすさを割合で表すとしたら、自室は9:1くらいなのに対し、共有スペースは2:8くらいですね。2人でつくる空間には、まだあまり興味が湧かなくて。
本当は共有スペースのこだわりを0にして、妻の意見を全面的に反映したいと思っているんですが、2のこだわりは捨てられないんですよね。そんな感じなので、よく喧嘩してます。
——これからはどんな家を作っていきたいですか?
共有スペースのDIYを進めていきたいです。特に水回りはもっとよくしていきたいですね。
例えばもし今1人暮らしをするなら、雰囲気は今ある自室と変わらないと思います。あとはそこにひじかけ付きのどっしりしたソファや、ラグを置きたいです。家電は部屋の雰囲気に合わないので、なるべくその空間内には置かないようにするか、隠すかしたいですね。
そういう部屋で「ガラスの冷蔵庫からコーラを取りだして、仕事終わりに飲む」とか「ちょっとティータイムを過ごす」とかしたいです。カップ&ソーサーや栓抜きが好きで集めているので、コレクションしたものを使うシチュエーションに憧れます。
自分の暮らし方全般へのこだわりを持っているので、決まった生活リズムで動きたい欲はあります。今は2人暮らしで妻の意見をまだまだ取り入れ切れていないですし、これからDIY予定のところもあるので、共有スペースを整えることにも時間と手間を使っていきたいです。
編集後記
店舗開発者の自宅は仕事同様こだわっているか、仕事とは逆に全く頓着しないかの2択だと勝手に思っていました。しかしまさきさんは「こだわり空間を持ちつつ、一緒に生活する人と折り合いをつけて暮らす」という私にとって新しい暮らし方をしていました。まさきさんのように、私の知らない暮らし方をしているであろう店舗に関わる方の自宅がさらに気になってきました。
本文に載せきれなかった「動く家が合ったらいいんじゃない?と思ったからモバイルハウスをつくった」という興味深いお話もあったので、またぜひお話をうかがって記事にしたいと思っています。