”著作権の存在証明”っていったい・・・という話

著作権には法律(著作権法75条~78条の2)により「登録制度」が定められていて、文化庁(プログラムの著作物については一般財団法人ソフトウェア情報センター、通称「SOFTIC」)に対して所定の申請を行うことで、
・実名
・第一発行(または公表)年月日
・創作年月日 ※プログラムの著作物のみ
・移転や質権の設定など
これらを登録することができます。

これらの登録については筆者の別ブログの記事をご参照ください。

https://copyright-topics.jp/topics/copyright-registration/

登録では証明されないこと

この著作権登録制度は、先述のような内容を登録することで、著作権保護期間への影響や、権利の多重譲渡に対しての対抗権を得ることが基本的な目的です。

これはつまり、次のような内容を証明するものではない、ということになります。

・登録したものが著作物であること
申請書には登録する物の詳細を記載しますが、その物自体を添付するわけではないため、著作物であるかどうかの判断が為されません。
そもそも、創作物が著作物であるかどうかは最終的には裁判で決まるものですので、文化庁の担当者の一存で決められるものでもありません。

・申請者が著作者または著作権者であること
先述のとおり、登録する内容はあくまで「実名」や「第一発行年月日」などであって、「著作者の登録」や「著作権者の登録」ではありません。
また、実名、第一発行(公表)年月日、創作年月日の登録については、その登録によって実名であったり申請された年月日に発行などがおこなわれたものと「推定する」とされています。
「推定」である以上、それを覆す事実が提示されればこの推定も覆ります。

だから、存在証明が有効らしい・・・??

このような欠点(?)を補うためという名目で、一部の民間事業者が「著作物の存在事実証明」のようなサービスを提供しているようです。
その民間事業者の中には同業者(行政書士)もいるようですが。。。

そのため希に弊所にも問い合わせがきます。。。

詳細は事業者によって異なりますが、おおまかに言うと、提示されたものが著作物であるかどうかの判断をして、著作物であると認めたときは、それを電子データにしてタイムスタンプ(電子サインなど)を付与したり、文書にして公証役場で確定日付を付与したりするようです。

これにより、創作した年月日を立証したり、未公表の創作物の保護したりといった、著作権法に基づく登録制度に足りないところを補うことができる、らしいです。まじですか。

※著作権法に基づく登録は、プログラムの著作物の創作年月日登録を除き、公表されているものに限定されます

効果はかなり限定的(というかほぼ無い)では

私個人としては、そのような存在証明は意味がないと考えています。

そもそも著作物かどうか判断する、という時点で問題アリなのですが、著作物かどうかを最終的に判断するのは裁判所であり、サービス事業者ではありません。
”最終的”でなければ判断しても良いだろ!ということなのかもしれませんが、「著作物かもしれませんね~」と言うだけでお金をとるのはどうでしょうか

創作年月日の立証についてはどうでしょうか。
著作権の超基本的な考えとして、「著作物を創作した者すべてに著作権が生じる」ということを忘れてはなりません。
言い換えると、特許や商標、意匠とは異なり、著作権は早い者勝ちではない、ということです。
著作権侵害となるのは、「著作物性」「類似性」「依拠性」が揃ったときだけであり、偶然に同じようなものを創作した場合は「依拠性」が欠けることから著作権侵害にはならないのが基本です。
だから「私の方が早く作ったぞ!」とどんなに言い張っても、あなたの作品を知らずに作ったものは法的に問題ないのです。

逆に、依拠性が認められるような場合であれば、創作日が早いことは当然に導き出されますので、わざわざ存在証明を行う理由がありません。

なお、創作日を明確にする必要があるとすれば、「団体名義の著作物」は考えられなくもないです(※創作後70年以内に公表されなかった場合は創作後70年で著作権が消滅するため)が、”存在証明”を申請するくらいその団体との関係が深い人であるのなら、その創作物に創作日を記すだけで良いと思うのですが…。
そもそも、申請者からの申告に頼るだけですから、本当に指定された日に創作されたのかも不明確ですし、さらに言えば申請者が著作者なのかも不明確ですよね。そんなものを”事実証明だ”と称するのは甚だ疑問です。

ましてや、未公表の創作物を保護したいのですよね?
未公表であるのなら、そもそもマネされる心配は無いですよね?
類似の作品が発表されたとしても、作品が公表されていない以上それがマネされる可能性は限りなくゼロに近いですよね?

ということで、「存在事実の証明」に何らかの効力があるとは到底考えられないのではないでしょうか。

少なくとも、法律上保護が規定されているわけでもなく、公的に保護されるものでもないため、著作権法に基づく登録を補うことができるようなものではないと考えています。

依頼するかどうかはよく考えて

以上のように、存在事実証明と呼ばれるものを行ったとしても、

「ふーん、○年○月○日に、この創作物が存在したのね。で?それがどうした??」

という程度の話で終わると思います。
その創作物が著作物であることも、依頼した人が著作者(著作権者)であることも、証明できるのものではありません。

「自分が著作者だ!!」ということを立証できるようにしたい場合は、もっと他の手段を検討すべきと考えます

それでも、創作物の存在を証明したいということであれば、お近くの公証役場に確定日付の付与(※下記参照)を依頼すれば良いです。
1件たったの700円ですし。私の好きなつけ麺より安いです。


最後に改めて。

”著作物の存在事実証明”を依頼しても、それであなたの権利が保護されるとは限りません!お金払って依頼する前によーーーく考えて!!

参考

・日本弁理士会
民間業者の「知的財産権(著作権)登録」の勧誘にご注意!!

・日本公証人連合会
確定日付

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