一太郎について少し語ってきたという話
去る2024年10月2日、インターネットテレビ局「ABEMA」で平日夜に生放送されているニュース番組「ABEMA Prime」に出演してきました。
テーマはずばり「一太郎」。
YouTubeにもアーカイブが残っているため、お時間あるかたはぜひどうぞ。
さて、番組で一太郎を取り上げるきっかけとなったのが、番組放送の数日前に日経新聞で報じられていたこちらの記事のようです。
昔は各省庁も裁判所も多くの人が一太郎を使っていましたが、時代の流れとともに日常の文書作成はMicrosoft Wordに変わってきている中で、ただ法案作成に限っては代替がきかずに若手官僚を中心に職人芸の継承について工夫を重ねているようです。
そんな中で2021年には国会に提出された法案資料に多数の誤りがあり、同時期に農水省では”一太郎禁止令”まで出されて話題になりました。
”一太郎禁止令”の理由は外部との互換性が理由のようですが、法案資料ミスはそもそも人為的ミスが原因であり、これらの法案資料作成に用いられていた一太郎が悪いというものではありません。
細かな調整が必要な法案資料作成には、一太郎は欠かせないはずです。
このテーマを軸としていろいろお話しようと思っていたのですが、さすがにそこはテレビ番組。
台本もありましたがあまりそれには縛られずトークの自然な流れに沿って進行していった感じで、テレビ慣れしていない私としては十分に口を挟めず、不完全燃焼となったことは大いに反省です。
それもあって、言いたかったことの一部を、改めてこのnoteに書いてみたいと思います。
ちなみに、冒頭の写真は、私が所有する中で最も古い一太郎(ver.6.3/1995年8月発売)と最新版(2024)のインストールディスクです。
ver.6.3はプリインストールモデルだったため開封していません。
これ以前はFM-TOWNS版(ver.4か5。うろ覚え)を使っていました。
歴史が証明する
先述のとおり、今回一太郎が話題になったのは、代々続く職人芸的なところです。
ただ、一太郎を利用する目的はこのような職人芸に限られるものではなく、私の考えを一言でまとめるなら
「日本人が、日本語の文章を書くのであれば、一太郎以外あり得ない。」
ということになります。
一太郎といいますと、SNSでは必ず「懐かしい」という感想に匹敵するほどの「まだあったの?」系投稿を目にします。
一太郎は2001年以降は毎年2月にバージョンアップされており、このタイミングでニュースが報じられるため、上記のような投稿も毎年代わり映えせず繰り返されています。
ただ、このような投稿が繰り返される背景にあるのは、初代一太郎が発売された1985年以降、40年近くも開発終了すること無くずっと開発・販売され続けているということです。
他にこのようなソフトウェアは存在するでしょうか?
このような歴史の長いソフトウェアであるということも、一太郎の素晴らしさの一端であると言えます。
Wordは?Google ドキュメントは?
ただ、歴史が長いといっても、利用者数では圧倒的にWordに軍配が上がります。
一太郎の利用者数やシェア率などは公表されていないため、正確な数値はわかりませんが、肌感覚としてこれは間違いないと感じます。
では、Word利用者が多い理由は、一太郎よりも優れているからでしょうか?
…もちろんそんなことはありません。
あくまで私の感想なのですが、過去のパソコンとの抱き合わせ販売(プリインストール)だったり、安価(特に認定教育機関の学生や教育者は無償で使える)だったことが原因で、単なる”所有者”の数が増えていき、複数人でファイルのやりとりをするには所有者が多いアプリのほうが都合が良いことから、広く普及していったものと考えられます。
また、後述するように、他人との編集のやりやすさという点もあるかもしれません。
同様に、Googleドキュメントも共有には強いですし、ネット環境さえあればいつでもどこでも編集できるのは強みであるため、利用している人も多いと思います。
ただこれもアプリの性能というよりは、利用者の多いGoogleのサービスであることも要因であると考えられます。
なお、一太郎が優秀かつ便利であることは確信していますが、だからといって一太郎だけ利用し続けているわけではありません。私はWordもGoogleドキュメントも利用しています。
ただ着目してほしいのはその理由で、WordやGoogleドキュメントが高性能だから、使いやすいから使っているのではなく、あくまで他人との共有のために選択しているという点です。
そもそもの設計思想の違いも影響していると思いますが、他人との共有と編集(Wordの変更履歴やコメント機能など)という点ではWordやGoogleドキュメントに劣っていると感じるのは事実です。
それが昨今のビジネスシーンでは不利に働く可能性も十分にあります。
少なくとも私は不利だと感じており、この点に対処するために不本意ながらWordやGoogleドキュメントを使わざるを得ないと思っています。
未来は明るいのか?
また、一太郎は毎年バージョンアップしていますが、それによって大きく機能向上しているのかといいますと、必ずしもそうとは言えない印象はあります。
これは、もはや(変換を司るATOKを除いて)日本語ワープロとして完成の域に達しているため、付加価値に重きを置くようになっているということもあるかもしれません。
しかし、一太郎は日本語文章作成では間違いなくトップであり、これ以上の日本語ワープロは存在しません。
英文タイプライターの概念をずっと引きずっているWordには到底及ばない領域です。
番組後半で私は「これ以上シェアが伸びるきっかけがない」と言いましたが、これはあくまで「現状では」です。
今はまだ現れていない何かがきっかけとなり、ブレイクスルーが起こるかもしれません。
一太郎は日本語のためのワープロソフトです。
Wordから移行するには学習コストが気になるかもしれませんが、ただ学習が必要な項目は決して多くなく、要所でしっかりヘルプも表示されますので、Wordで作成できるような文章であれば、一太郎なら簡単です。
繰り返しになりますが、日本人が、日本語の文章を書くのであれば、一太郎以外あり得ない。
使えば、わかる。
少しでも多くの人に、一太郎の魅力が伝わりますように。