お前も真の男ならばホーミングレーザーの軌跡について一家言を持て
掛けたまえ。CORONAは冷えている。
ホーミングレーザーが嫌いな人類などこの世に存在しないことは周知の通りであるが、このたび全人類が待望したとあるビデオゲームがニンテンドースイッチにて発売されるというニュースを耳にした俺は、いてもたってもいられなくなって本稿を書きなぐっている次第だ。
『パンツァードラグーン』・・・・それは遥かな太古、「土星」の名を冠するレリックが人々の魂の安息を司っていた神話の時代にこの地上に舞い降りたオラクルのひとつである。
主人公は一頭のドラゴンと、その乗り手たる青年、カイル・フリューゲである。今とっさにフルネームまで出てきてしまったことに我ながら驚きである。
おまえはドラゴンと聞いてどのような存在を想像するだろうか。なんか翼が生えたでかいトカゲで、トゲトゲしてて、鱗に覆われていて、財宝の山の上でとぐろを巻き、近づく者を炎のブレスで黒焦げにするとかなんとか、そのような存在が脳裏に現れたかもしれないが、この時点でお前は百個ぐらい間違いを犯している。
『パンツァードラグーン』はファンタジーではないし、やつらが吐くのはブレスではない。
ホーミングレーザーだ。
なんたる甘美な響きであろうか。ホーミングレーザー。もはや字面からして格調高い美意識が匂い経つかのようだ。
青い肌に白い生体装甲をまとったドラゴンが決然と口を開き、そこに激しいエネルギー光が収束した次の瞬間、青白い光線が多数、花火が弾けるように全方位に拡散。しかるのちに大きく優美な弧を描いてロックオンした敵に向けて殺到してゆく、あの神秘にして絶美の芸術を、俺は生涯忘れえぬであろう。
今回リメイクされるにあたって、いくつか気になる点はある。純血種攻性生物と変異種攻性生物のアトモスフィアの違いはきちんと再現されるのか。プロトタイプドラゴンはちゃんとカッコイイのか。画像を見た感じ、原作のどのステージとも印象が異なるような気がするが、ステージ構成はどうなるのか。いろいろ気にはなっている。
だが最も気になっているのはホーミングレーザーが描く軌跡についてである。
『パンツァードラグーン』シリーズは、初代、ツヴァイ、アゼル、オルタの四作が出ているが、この中で最も美しいと俺が感じたホーミングレーザーは初代のものであった。懐古厨か? そうではない。れっきとした根拠がある。
初代のホーミングレーザーは、弾頭と末尾の軌跡が一致していないのである。
花火のように全方位に拡散したのち、弧を描いて敵に殺到する、という基本はどのシリーズも変わらないのだが、初代のホーミングレーザーは敵に襲い掛かる際、弾頭の軌道よりも末尾の軌道のほうが外側に膨らんでいるのである。
結果、何が起こるか。
まるで巨大な菊の花が咲くかのような壮麗な光の乱舞が、我々の目の前で展開されるのだ。デス・フロム・アバブ・セキバハラである。そこには「レーザーなのに遅すぎない?」だの「なんでレーザーが曲がるの?」だのとしたり顔でほざくあほを黙らせる問答無用の説得力がある。残念ながらツヴァイ以降のシリーズでは、末尾がお上品に弾頭の軌道を寸分たがわずなぞってしまう感じになっており、「レーザーがプレイヤーに腹を見せる時間」がほとんどなくなってしまった。俺はこれが残念でならない。
今回は初代のリメイクということもあって、是非とも末尾氏には大胆に外側にぶれて弾頭氏よりも大きな弧で進んでいただきたいものである。初代にあった、この粋でいなせなホーミングしぐさを、開発陣は汲み取ってくれることを期待したい。
ホーミングレーザーは神話であり、宇宙であり、人類が永遠に探究すべきテーマである。おまえもおまえなりに理想のホーミングレーザー像を胸にもっておくのだ。豊かで満ち足りた人生を送るためには必須のスキルであると、そう断言しておく。
いじょうだ。