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オランダ備忘録(13)うっかり即ジ・エンド
たぶん、外国人がオランダに行って、一番やってしまいがちなミス、しかもうっかりした瞬間の見落としが重大な結果につながってしまうもの・・・といえば、
sleutel!! 鍵!! である。
ホテルのオートロックで締め出されてしまった経験は、誰しも一度くらいはあるかな。
オランダは、ほとんどの家の鍵が、こうゆう仕組みなのだ。
オートロック。
うっかり鍵を持って出るのを忘れると大変なことになる。
なんでこんな危険な仕組みにしてあるのだろうと思うのだけど・・・。オランダ人には、うっかり者が少ないのだろうか・・。
私も一度やってしまった・・・。
しかも、ルームメイトがいる日なら、彼女が帰ってくるのを待ってればいいのだけど、その日に限って、私一人。
しかも祝日だったか何かで、学生宿舎の管理事務所も閉まってた。
扉がゆっくりと閉まる数秒のうちに、「うわあ!」と思い出してドアノブを引けばいいのだけど。
運命が決まるのはわずか数秒。
そして一回閉まってしまった扉は開かないのだよ・・・。過酷。
まずFacebookで助けを呼びかけると、オリエンテーションウィークで一緒だった、紳士的な中国人男子と、ほっぺたふくふくのドイツ人男子が、「え、大丈夫??」とか色々動いてくれそうな気配。
「うちに臨時でベッド一つ運び込もうか??」とか。
いい人たちだ・・・。
けっきょく、同じ団地に住んでた、日本からの留学生Mちゃんのとこに泊めてもらうことになった。しかしベッドは一つしかない。
ので、どうしたものかと、今度はその年度の、学生宿舎のFacebookグループに投稿して助けを求める。
すると、エアーベッドをかしてくれるという男子二人組が。
さっそく、ベッドとポンプを取りに行く。
くるくるふわふわした茶色い髪の毛を頭の上にのせた男の子を覚えている。ライムグリーンのハーフパンツを履いてたか。
なんだけど、どうもうまくふくらまなかった。
季節は秋。
オランダの秋はすでに日本の初冬の気温。
フロアーは、木でも畳でもなく、冷たいリノリウム。
現地で買ったもこもこのジャケットを着込んで寝るも、どうにも寒かった。
どうにかこうにか少しは寝た気がするけれど、次の朝おきて鏡をみると、すっかり、おもたくまぶたが垂れ下がった輪郭のはっきりしない目鼻になっていた。
金魚を入れるビニール袋のように、ぶにゃぶにゃしている。
エアーベッドをかしてくれた二人組には、市場でオレンジ色のネットに入った蜜柑を一袋買ってきたのを、お礼に添えた。
鍵をうっかり忘れる問題は、それなりに共有されてたらしく。
Mちゃんも、玄関ドアの内側に「sleutel!」(鍵)と書いた紙を張り付けていたくらいだ。
しかし偶然といえば偶然で、この前日くらいに
Facebookで
「コンフォートゾーンを飛び出そう!冒険しよう!そう、時にはフロアーで寝て・・・」などという自己啓発的な投稿に「いいね」してたのだった。
そのすぐあとに、本当に床で寝るはめになろうとは思っていなかった。
そしてこの数年後、オランダ旅行にいったとき、この「鍵」問題で、はるかに重大なことをやらかしたのだが、それはまたいつか・・・。