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占術師口上 -乱世に思う-

我、占術師にして流離人。
官学に学ぶも野に下り、名を借り名を潜めて世を渡る。幾多の世事俗事に関わる事を生業としつつ、占術師になりてのちは出世蓄財金策など外事の相談から、結婚出産跡継という内事の悩み、さらには夫婦親子嫁姑の諍いに至るまでを扱うこと多数。

なかでも色恋艶事濡事はとりわけ多くの女人にとって身を焦がし身を捩るほどの最大事なり。已むに已まれぬ事態となりて、行く場所を失い心の支えを無くして、駆込寺に飛込むが如くに占術の助けを借りんと、縋る思いで訪う人も少なからずあり。

我が占術になにほどの力あるかと時に疑心暗鬼に陥りつつも、あまた回を重ね相談に応えるうちに成程、占術是即ち仁術なりと思うに至る。

元号令和に変わりて幾年がすぎ、何時しか格差なる言葉が流布定着。暮らしに窮する人々の数存外に膨らみ、目を凝らせば世は霜枯れの気配。あまつさえ世に狼藉暴状戦火は絶えず、寧ろ伝播展延の兆しすらあり。

我、占術師にして流離人。微力にして無聊を託つ俗人なり。されど横風驕傲を排して人と交わり、見えざるものに歩み寄るを旨として稼業に携わる。見えざるものとは人の心なり。故に占術是即ち仁術と心得て日々精進す。


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海辺の散歩者
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