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AFURI商標問題を弁理士が考察する
「AFURI」の名称をめぐって商標に関するトラブルが発生している模様。
今回は、この商標問題について弁理士が考察してみます。
なお、
※1 私なりに極力フラットな視線で考察しています
※2 個人的感想を含んでいます
についてはご容赦ください
概要は以下引用ニュース記事からご確認ください
(引用:J-CASTニュース様より)
この記事を読んだ率直な感想としては、
吉川醸造株式会社に酷であり、AFURI株式会社側の主張が認められるべきではないと考えました。
どうやら「アフリ」と読める商標の攻防は今にはじまったわけではないようです。
そもそも、今年の3月頃にはお酒関連の「アフリ」商標について、吉川醸造株式会社とAFURI株式会社で出願合戦のようなものが繰り広げられておりました。
混迷が窺えますね。
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吉川醸造株式会社のHPには、本件のことが記載されておりました。
(引用:吉川醸造株式会社HPより)
以下には、吉川醸造株式会社の方が正当性があると個人的に感じる事項を挙げていきます。
1、吉川醸造株式会社は商標登録をしていた
吉川醸造株式会社は、毛筆体の「雨降」からなる商標をすでに商標登録しています。
この「雨降」については、少なくとも特許庁への登録の時点では、先に登録されていたAFURI株式会社「AFURI」と似ていないと判断されたわけです。
よって、吉川醸造株式会社としては今更蒸し返されても。。。という話。
私の考えでは、ローマ字の「AFURI」と漢字の「雨降」では受けうる印象が全く異なるます(特定の意味が発生しにくいAFURIと雨が降るという明確な意味合いが生じる雨降)。
つまり、称呼(読み方)が同一でも、そもそも混同するか疑問です。
AFURI株式会社は『雨降(あふり)』のふりがな部分の使用が気に入らないという可能性もあるけれども、商品の販売者として混同はなさそうに思います。
2、「AFURI」は商品の垣根を超えて有名か?
AFURI株式会社側はさらに「AFURI」商標の周知著名性を主張しているとのこと。
要は、「私の商標はとっても有名なので、たとえラーメン以外に他社が使用したら混同が生じるんです」と言いたいようです。
ただ、そこは私は疑問が生じます。
唐突に私の話になりますが、私はラーメンは食べるが、お酒は飲みません。
「AFURI」については確かそんなラーメンあったな程度で、有名かというとかなり疑問です。
ラーメンを食べる人とお酒を飲む人は、需要者層として異なります。
もちろんどっちもいける人もいると思いますが、私のようにお酒は飲まないという人もいるです。
つまり、需要者層が全く共通するというわけではありません。
AFURI株式会社が発売している商品なの?と感じてしまうのであれば、商標権の侵害を認めても良いと考えます。
ただ、有名ラーメン店の「日高屋」「二郎」レベルかそれ以上に有名だろうか?ここは私個人としては疑問です。
3、「自分は有名である」は言ったもの勝ちになってしまうから
これは商標制度自体の話からのアプローチ。
上述のように吉川醸造株式会社は漢字の「雨降」で登録をしています。
。
この点、吉川醸造株式会社が仮に商標登録をしていなければ、権利侵害になる可能性を加味し引き下がる必要があるかもしれません。
しかし、吉川醸造株式会社は自社の使用を欲するワードをちゃんと商標登録しているという正当ポイントがあります。
ここに商標制度に沿った保護を求めていた点が伺い知れます。
そして、今回は『雨降(あふり)』のふりがな部分が気に入らなかったのかもしれないですが、商品のふりがなをふることがよくあることです。
それを禁止してしまうと、それこそ商標使用の柔軟性が掛けてしまうように思います。
要は、吉川醸造株式会社は法律に則って保護を求め使用をしているのであるから、その点を評価してほしいと考えるのです。
また、周知著名性のハードルもあまり上げるべきではありません。
なぜなら、周知著名性の主張というのは、「言ったもの勝ち」の要素が孕むためです。
近年、SNSでバズるという現象があるものの、例えば、人によっては一度バズっただけでも有名になったと感じる人もいると思います。
もちろん訴訟の際はそんな単純なものではなく、店舗数や売上高、広告費など詳細な資料を提出するものの、よほど有名になってない限り「有名認定」は控えるべきというのが私の考えです。
特に、今回のように、ラーメンという本業での主張ではなく、お酒という多分野で周知著名性を主張しているというのはいかがなものだろう。
子どもはラーメンと食べるが酒は飲まない。
私のような下戸はラーメンは食べるが酒は飲まない。
このような人が、酒の『雨降(あふり)』をみて、ラーメン屋の「AFURI」を想像するか、またはそれくらい「AFURI」は有名か。
ちょっとじっくり考えてみよう。
(8月24日 20:00頃記載)