アナウンサーに求められるもの
アナウンサーの仕事の本質、それは前項「アナウンサーの仕事」で書いたように「伝える仕事」です。
「伝える」といっても、ただ伝えるだけではだめです。いかに効果的にわかりやすく伝えるか、相手のことを考えて伝えているか、ときに使命感を持って伝えるときもあります。人の心をひきつけ感動を伝えることもあるでしょう。それを十分に理解できると、自ずとアナウンサーに求められるものがわかってくるはずです。
アナウンサーになるために必要なこと
アナウンサーというと、まず第一に容姿、次にアナウンス技術的な部分に目が行きがちです。確かにそれらを高めることも必要です。ただ、どんなに美しく、格好よく、さらに滑舌が良くても、うまく原稿を読めても、リポートをきれいにまとめても、そこに「心」が伴っていなければ、"AI"アナウンサーです。
アナウンサーには、タレントほどではないにせよ、人をひきつける力も必要です。これまでの人生の中でどんな経験をしてきたのか。それが人柄となり、顔にも表れ、言動となり、「あなたの魅力」「個性」になります。
あなたがしてきたさまざまな経験は、ニュースを伝えるときにも、司会をするときにも、生中継のリポートをするときにも、実況にも必ず生きます。同時に、視聴者に信頼感と説得力を持って伝わります。
実際にテレビやラジオで活躍しているアナウンサーの仕事ぶりを見ていると、確固たる存在感が感じられます。そういう人たちにはこの後に挙げる「アナウンサーの資質」の多くが備わっているように感じます。もちろんすべてを兼ね備えている人はませんが、7,8割は備えていないと、存在感の確かな信頼されるアナウンサーにはなれません。
アナウンサーに求められる資質を意識しながら、自分を高めていきましょう。
アナウンサーの資質とは
アナウンサーの仕事をたどっていけば、アナウンサーはどんなことを意識して仕事をしているかがわかります。そしてアナウンサーになるために必要なことが見えてきます。
①幅広い知識と向上心
情報を伝えるためには、広範囲な分野において正しい知識をもっていないといけません。また常にアップデートされる情報への研究熱心さも必要ですし、経験の豊かさも影響してきます。
当然、就職活動の段階でも、一般常識とよばれるものやある程度の漢字の読み、言葉の意味などは知っておかないといけません。学歴は問わない職業ですが、やはり一流大学の人とそうでない人では、この時点で差がついていることが多いです。
➁相手の立場に立った言葉選び
アナウンサーは、視聴者にわかりやすく伝わるように、常に言葉を選んで、その場に最適な表現を工夫しています。仲間内だけで使う言葉や省略した言葉、若者の間では頻繁に使われているけれども年代によっては通じないかもしれない言葉は使わない。日常からそういった意識をもって生活をしておきたいものです。
③健康第一・体力第一
定時番組や帯番組の担当アナウンサーは特に、体調不良で休むということは極力避けないといけません。不規則でハードなスケジュールをこなしながらも健康管理には人一倍注意を払っています。喉の管理も重要です。健康と体力に自信がないと務まらない仕事なので、アナウンサーを目指す人は、もとから健康な身体を作っておくことは最重要です。
④対人の妙
人に対する気配りがスムーズです。相手を立て、対話の呼吸や目線にも工夫を凝らしています。番組進行ではそれが生きます。また、取材などで初対面の人と話をすることもあるので、すぐ友達をつくれる人は素質があるかもしれません。ただ、馴れ馴れしすぎても視聴者の反感を買うケースがあります。
⑤高度なサービス精神
サービス精神が旺盛で、見せ所や聞かせ所を心得ています。ただし、押しつけがましくなく、引きどころもわきまえています。ユーモアを含んだり明るく機知に富んだ会話で番組を進行できるかどうかもアナウンサーとしては欲しい能力です。
⑥正確性
ニュースなど正確性が求められるものの場合は特に、アナウンサーは最終発信者としての責任をしっかりと持ちながら伝えないといけません。漢字や地名、人名の誤読などはあってはいけません。それはアナウンサー自身に任されている部分でもあります。少しでもあやふやだなと自分が思ったら必ず調べる習慣をつけましょう。
⑦冷静な対処
突発的な災害や生放送でのハプニングがあっても、即座に何を伝えらたらいいのかを判断し行動できるかどうかが求められます。また自分自身がミスをしても引きずらない切り替えの早さも必要です。何があっても動じない心の持ち主、または人から動揺しているように見えないと言われる人は向いているかもしれません。
⑧庶民性、生活感
アナウンサーは視聴者の目線に立って物事を考えられるかが大事です。ごく普通の人が共感できる庶民性を持っているかどうか。人気アナウンサーに偉ぶっている人はいません。華やかな生活を送ってもかまいませんが、考え方の原点に、現代に生きる等身大の人間としての生活感を持っています。
⑨感情のコントロール
アナウンサーが伝えるものには、自身の感情も動かされる喜怒哀楽の出来事があります。しかし伝え手として、あまりにその感情に流されすぎてはいけません。もちろん感動したときは泣いてもいいですし、面白いときは大笑いしてもいいですが、自分の立場ややるべき仕事を忘れてはいけません。視聴者がそれを見て共感してくれる時ばかりではありません。**
⑩謙虚さ・嫌みのなさ
自分がすべて正しいと思わず常に疑いながら、しかし正しいと認識していることは堂々と放送で発する。また間違ったことを伝えた時も、心から詫びることで、視聴者からの信頼が得られます。
また番組制作はチームワークです。アナウンサーは一番目立つポジションにいますが、偉いわけではありません(むしろ一番立場は下です)。視聴者から人気者だったとしても、スタッフに横柄な態度を取ったり、上から目線でものを言ったりという態度をとっていいというわけではありません。翻って、普段から目下に対してそういった態度をとってしまっている人は改めておく必要があると思います。
⑪明確な主張
アナウンサーは自分の意見をことさら主張するものではありませんが、伝えるべきことをきちんと把握して、その場合は自信をもって主張する必要があります。
⑫親しみやすさ
アナウンサーは確かに美男美女が多いとみられがちですが、測る物差しとしてはちょっと違います。比べるべきは、親しみが持てる人かどうか。その尺度では、間違いなく好感度の高い人が多いです。普段の髪型から服装、物腰に至るまで、視聴者が見て嫌味がないことが求められます。
⑬バランス感覚
アナウンサーの仕事は、バランス感覚がとても求められます。
例えば、使う言葉の選択も、この番組では若者言葉を多用してもいいかなとか、この言葉は言い換えが必要かなとか、状況に合わせて変えられる判断ができるかどうか、これもバランス感覚です。 また大勢の人と話をするときに、盛り上がりに水を差さずに黙っているのか、話に加わっていない人に話を振ったりして気を配るのか、状況に応じてふるまえるかどうかもバランス感覚です。
単にテレビに出たい!目立ちたい!とだけ考えている人は、バランス感覚は持てません。日常から人にも気を配りながら行動する、ニュートラルに物事を見る、こうやって養われていくのがバランス感覚です。
アナウンサーになるために意識しておきたいこと
アナウンサーになりたいと思ったときに、ミスコンなどに応募して箔をつけないととかアナウンススクールに通わなきゃ、という人は大勢いますが、これは大きな勘違いです。
アナウンサーを目指すみなさんにまず意識してほしいのは、見かけのことにとらわれず、あなた自身の「内面」を磨いていくことです。
内面を磨くために、広く様々な分野に興味を持ち、色々なことを学び経験しましょう。このように書くと非常に堅苦しいですが、映画でも音楽でも、お笑いでも、旅行でも、サブカルチャーでも何でもいいのです。広く知識を持つことは、人間の幅にもつながりますし、判断力の素地にもなります。
就職活動が始まるまでに、色んな経験をして、同時に何かひとつのことに没頭し、自分が成長した と思えることをやっておきましょう。それが最終的にあなたの魅力につながり、アナウンサー試験の場であなたをきっと光らせます
まず自分を磨くこと、それがアナウンサーへの第一歩です。