違法なイスラエル入植地ビジネスを推奨する朝日新聞GLOBEの記事に対して抗議・要請書を送付しました。
朝日新聞が毎月第1日曜日に発行する特別紙面「GLOBE」とそのウェブ版「GLOBE+」に掲載された高野遼記者の被占領ゴラン高原に関する記事が、衝撃的に国際法無視・親イスラエルの内容になっています。
・「地雷の看板が今も残る、イスラエル人定番の旅行先 ゴラン高原の二つの顔を見てきた」(紙版「GLOBE」のタイトルは「『危険地帯』か『観光地』か ゴラン高原」)
1967年の第三次中東戦争でイスラエルに占領されたシリア領であるゴラン高原がイスラエル領であるかのような記述もさることながら、同地のスキー場やゴラン高原ワインなどの「入植地ビジネス」を無邪気に宣伝する内容は、日本軍性奴隷制問題に関する右翼の「朝日叩き」への屈服以降、同紙に垣間見られる権力への迎合傾向を想起させるものです。とはいえ、朝日新聞内部に、こうした動向を憂慮する良心的な記者の方々がおられることも間違いないでしょう。4月からワシントン特派員となった高野記者もひょっとすると、種々の圧力の下で不本意ながら同記事を書かされたのかもしれません(それはないと思うのですが)。
BDS Japan Bulletinは、BDS関西と連名で、朝日新聞内にまだ残っておられるはずの良心的記者が、イスラエルロビーや排外主義勢力に忖度することなく、批判精神を宿した公正な記事を書いてくれることを応援するという意味も込め、以下の抗議・要請書を送りました。
なお、この文書を送った時点では、「GLOBE」と「GLOBE+」が別の編集体制になっていることに気づかず、後者の編集長である堀内隆氏が宛先に入っていませんが、同氏も、この記事の掲載に関する責任者としてこの抗議・要請書に応答する責任を共有されているものと私たちは考えています。
朝日新聞社 代表取締役社長 中村史郎 様
朝日新聞社 GLOBE編集長 稲田信司 様
朝日新聞社 米国ワシントン特派員 高野遼 様
被占領ゴラン高原についての高野遼氏の記事に関する抗議と要請
貴職におかれましては日々ご清祥のことと存じ申し上げます。私たちは、パレスチナ人に対する人権侵害・人種隔離政策を終わらせるための一つの手段として、イスラエルに対するBDS(ボイコット・資本引揚げ・制裁)運動に取り組む市民グループです。イスラエル建国以降73年間におよぶ権利はく奪状況に苦しみ抗うパレスチナ人、そして彼らに連帯し状況を変えようとするイスラエル人/ユダヤ人たちの公正な平和に向けた絶え間ない努力を知る者として私たちは、貴紙が4月4日(日)に発行された「グローブ」に掲載された高野遼記者によるゴラン高原に関する記事に大きな衝撃を受けました。というのも、高野記者は、あたかも1981年のイスラエルによるゴラン高原併合宣言および2019年の米国による併合承認を追認するかのような記述を繰り返していたからです。
まず記事では、「ゴラン高原はシリア領だったが」と過去形で記述し、そこがシリア領ではなく「係争地」だとしています。さらに、「イスラエルで唯一スキーを楽しめる場所がヘルモン山スキーリゾートだ」「イスラエルでいいお酒を飲みたいなら、ゴラン高原のワインを挙げる人が多い。知る人ぞ知る、高級ワインの産地だ」というように、ゴラン高原がイスラエルの一部であるかのような記述を繰り返すだけでなく、入植地ビジネスの宣伝までしています。アラブ人住民の声は一か所で紹介されているだけで、彼らが被っている差別・抑圧への視点はありません。
貴紙が報じてきた通り、イスラエルおよび2019年3月以降の米国を除き、日本政府も含めた国際社会はイスラエルのゴラン高原併合を認めていません。国際法上、被占領ゴラン高原はシリア領であり、「係争地」という表現も極めて不適当です。そして、ゴラン高原におけるイスラエルの入植活動はパレスチナ西岸地区におけるそれと同様、明確なジュネーブ条約違反です。西岸地区での入植地ビジネスに伴う法的・倫理的な問題については、日本の外務省も、2017年以降ホームページ上(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/israel/data.html)で注意を促していますが、ゴラン高原の入植地ビジネスに対しても全く同じことが言えます。
貴紙は、一体いつから、国連憲章に背き、軍事力による領土の獲得を容認するようになられたのでしょうか? 高野記者は2年間エルサレム支局で勤務されているのですから、被占領ゴラン高原の法的地位についての基本知識を欠いていたとは到底考えられません。つまり、この記事は、併合の既成事実化というイスラエル側の政治的意図を追認していると言わざるを得ないものです。
以上の認識から、以下の3点を要請いたします。
1. なぜこのような国際法違反をあからさまに容認する記事が掲載されることになったのかについて文書にて経緯を説明すること。
2. シリア領ゴラン高原をイスラエル領であるかのように記述した箇所について誤りを認め、訂正記事を出すこと。
3. 上記訂正記事においては、西岸地区であれゴラン高原であれ、軍事占領地における入植行為は国際法違反であり、ヘルモン山のスキー観光やゴラン高原ワインといった入植地ビジネスに関わることは倫理的・法的に問題があることを明記すること。
2021年4月18日
BDS Japan Bulletin
BDS 関西
【参考】イスラエル議会のゴラン高原併合法案可決に関する外務大臣談話
(1981年12月15日)
1. イスラエル議会は,14日ゴラン高原を併合する法案を可決したが,昨年7月の東ジェルサレム併合に引続き,占領地の法的地位の一方的変更を行うこのような行為は,国際法及び国連安保理決議242及び338に違反するものであり,我が国としては容認することができない。
2. 日本国政府は,このような措置が話し合いによる中東和平問題解決の雰囲気を悪化させ,域内の緊張を更に高めることを深く憂慮する。
3. この際日本国政府は,イスラエルが一日も早く,67年戦争の全占領地から撤退することを改めて強く要請する。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/1982/s57-shiryou-214.htm
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