高島屋で販売された「イスラエルワイン」は、産地偽装した入植地ワインだ。
パレスチナ各地でイスラエル人入植者の暴力が続く今年7月から9月にかけて、高島屋の新宿店、日本橋店、玉川店、横浜店、京都店において、イスラエルワインの販売会が行われた。出店業者は、ワイン輸入卸販売を行う日本企業DS-Wine社である。しかし、そこで販売されたワインには、産地偽装された占領地産ワインが含まれていた。
イスラエルワインの原材料となるブドウは、1948年にパレスチナ人を民族浄化した土地(いわゆるイスラエル領内)だけでなく、1967年以降イスラエルが占領するシリア領ゴラン高原やヨルダン川西岸地区の違法な入植地でも生産されている。DS-Wine社が高島屋で販売し、現在も自社ウェブサイトで販売を続けるレカナッティ・ワイナリーのワインも、違法入植地で生産されたブドウを原料とするワインの1つである。
DS-Wine社は、レカナッティ・ワイナリーのワイン14種類を輸入販売している。その価格設定は2200円から4180円と比較的手頃である。この安さと物珍しさから、つい手を出してしまうワイン好きもいるかもしれない(注1)。しかし、レカナッティ・ワイナリーのワインには、決して手を出してはいけない。なぜなら、レカナッティ・ワイナリーは、占領地の違法入植地でブドウ生産を行っているだけでなく、その事実を隠ぺいするために産地偽造までしているからである。
(http://ds-wine.jp/winery/recanati-winery/)
まず、レカナッティ・ワイナリーは、イスラエルのNGOであるWho Profitsのウェブサイトに、被占領地での違法入植から利益を得る企業として掲載されている(https://www.whoprofits.org/company/recanati-winery/)。Who Profitsのサイトによれば、レカナッティ・ワイナリーは、ヨルダン川西岸地区の違法入植地に建設されたイスラエルの大学(アリエル大学)の研究者が創設した企業で、「占領下のシリア領ゴラン高原のキドマット・ツヴィ入植地のワイン畑から原材料を入手」している。しかし、レカナッティ・ワイナリーの公式ウェブサイトに掲載されたブドウ産地を示す地図(以下)には、ゴラン高原が含まれていない。
(https://www.recanati-winery.com/en/)
しかし、レカナッティ・ワイナリーのFacebookページを見ると、上記地図に含まれていないブドウ畑を同社が所有し、そこで同社ワインのブドウを生産しているとの記事が投稿されている。しかも、そのブドウ畑はイスラエルが占領するシリア領ゴラン高原にある。これは、明らかな産地偽装であろう。
例えば、以下のFacebookの投稿では、観光客が同社のゴラン高原の畑を訪問したとの記述がある。
また、以下のFacebookの投稿では、同社ワインの原材料であるソービニヨン種のブドウを生産している農場は「テル・ファラス」にあると、写真付きで述べられている。テル・ファラスとは、タッル・アル・ファラス(ヘブライ語でハル・ペレス)山のことであり、ゴラン高原中央部に位置する山である(https://en.wikipedia.org/wiki/Mount_Peres)。
さらに、以下の投稿では、この農園が標高1050メートルに位置し、2017年に開設され、ソービニヨン・ブラン種やメルロー種などのブドウを生産しているとある。写真の後ろに写っている山がタッル・アル・ファラス山であることからも、この農園がゴラン高原にあることは明白である。また、この投稿では、環境に配慮した農園であることは強調されているが、ここがシリア領であることから生じる国際法上の問題については配慮していないようである。
このように、レカナッティ・ワイナリーの「イスラエルワイン」は、実態としては「産地偽造の占領地産ワイン」である。レカナッティ・ワイナリーの「産地偽造の占領地産ワイン」を日本に卸しているDS-Wine社は、ドリーム・スタジオ(Dream Studio)という輸入業(代行サービスを含む)企業の一部門である。そして、ドリーム・スタジオ社は、ウェブサイトで「輸出入業務及びその代行業務を行う。各国毎に異なる文化、法律、商習慣等から派生する信用リスク、制度リスク、為替リスク等を豊富な経験と知識でミニマイズ。」と謳っている(https://www.dreamstudio.co.jp/services.html)。
他方、国際法違反であるイスラエル入植地関連ビジネスからの利益取得を終結させる必要について、国連人権理事会決議で2013年以降、何度も確認されており、日本政府も賛成票を投じてきた。今年7月には国連人権報告者がイスラエルの入植活動は戦争犯罪に匹敵すると述べた(http://pinfo.html.xdomain.jp/news/201610250225.htm; https://jp.reuters.com/article/israel-palestinians-un-rights-idJPKCN2EF21W)。
外務省のウェブサイトにも、入植地ビジネスは「金融上、風評上及び法的なリスクがあり得る他、そうした活動への関与が、人権侵害とされる可能性があり得る」と明記されている。(注2)(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/israel/data.html)
しかし、様々なリスクを考慮してアドバイスをくれるはずの「輸入コンサルタント」会社のドリーム・スタジオ社は、リスクをミニマイズするどころか、違法入植地のワインを輸入販売することで、自ら国際法違反と戦争犯罪に加担するという極めて高いリスクを追ってビジネスをしている。これはいかがなものか。
レカナッティ・ワイナリーの職員が、西岸地区のパレスチナ人からも原材料のブドウを購入していることを理由に、「私たちよりも生産者たちを傷つけるのに、(レカナッティ・ワイナリーのワインを)ボイコットするのは馬鹿げている」(http://www.recanati-winery.com/en/צליל-ים־תיכוני/)と述べているように、レカナッティ・ワイナリーによる産地偽装は、占領地産イスラエル製品に対するボイコット運動の世界的広がりを意識した、意図的で悪質なものである可能性がある。
以上に鑑み、DS-Wine社は、戦争犯罪に加担するレカナッティ・ワイナリーの占領地産ワインを輸入して販売するのを直ちにやめるべきである。また、高島屋は、二度とこのようなワインを販売する場を提供すべきではない。あわせて、オンラインストアでの入植地ワイン「ヤルデン」の販売も直ちに中止すべきである。そして、「中東和平」に関与してきた日本政府は、イスラエル入植地製品の産地偽装問題を看過せず、入植地製品の禁輸措置に向けた本格的な検討を直ちに開始すべきである。
(注1)DS-Wine社は、レカナッティ・ワイナリーを次のように説明している。「ほぼ全土が地中海性気候であるイスラエルは昼夜の寒暖差が大きく、ワイン用のブドウの成育に恵まれた気候と土壌を持ちます。レカナッティ・ワイナリーは、この聖なる地に、最新の灌漑設備を含めた近代的な設備と、人間の手作業にこだわることにより、見事にイスラエルワインを蘇らせました。」(http://ds-wine.jp/winery/recanati-winery/)
(注2)ここでの議論はヨルダン川西岸地区の入植地に関するものだが、シリア領ゴラン高原の入植地も法的地位は全く同様である。
【参考】戦争犯罪加担との批判を受け、イスラエルの入植地ワインが販売中止となったケース
(1)オオゼキ下北沢店(2021年6月)
https://note.com/bdsjapan/n/n1aedd591c9a1
(2)大丸東京店(2018年5月)
https://sustainablejapan.jp/2018/05/24/daimaru-israeli-settlements/32219
https://www.business-humanrights.org/en/latest-news/japan-palestine-department-store-remove[…]lement-wines-from-wine-fair-after-ngo-raises-concerns/
(3)銀座三越(2017年10月)
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2018/03/01/antena-185/
https://bdsmovement.net/news/upscale-tokyo-department-store-withdraws-products-illegal-israeli-settlements
(4)JETORO大阪(2016年11月)
http://palestine-forum.org/doc/2016/1130.html
https://bdsmovement.net/news/japan-external-trade-organization-jetro-withdraws-event-promoting-israeli-settlement-wine
(活動家T)