相場のサイクルを読み解く - エリオット波動理論の活用術


エリオット波動理論とは何か

相場の値動きには一定のパターンがあり、それが周期的に繰り返されるという考え方が「エリオット波動理論」です。この理論は、20世紀初頭にアメリカの経済アナリスト、ラルフ・ネルソン・エリオットが提唱したものです。

エリオット波動理論の根幹をなすのは、相場の上昇局面を「推進5波」、下降局面を「修正3波」で説明するというものです。つまり、相場は「上昇→下降→上昇」というジグザグの動きを繰り返すというわけです。この波動の構造は、さらに細かな単位の波動で構成されており、まさに入れ子のような複雑な様相を呈しています。

エリオット波動理論は、株式市場だけでなく、外国為替市場(FX)やその他の金融商品の分析にも広く応用されています。相場の大局観を把握するのに有効な手法だと評価されているのです。本稿では、FXにおけるエリオット波動の活用法について詳しく解説していきましょう。

FXにおけるエリオット波動の特徴

FXの場合、株式と異なり一方の通貨が上がれば、必ず他方の通貨が下がるという性質があります。そのため、株式のように一方向の上昇相場だけでなく、下降相場においてもエリオット波動が観察されます。

FXの下降局面におけるエリオット波動は、「推進5波・修正3波」の構造を持ちます。つまり、相場は5つの波動を描いて下降し、その後3つの波動を描いて反発するというパターンなのです。

また、エリオット波動にはいくつかの原則が存在します。代表的なものは以下の3点です。

  1. 推進波における3波は1波、3波、5波の中で最も短くはならない

  2. 推進波の中で2波が1波の始点を超えて修正することはない

  3. 推進波の中で4波が1波の高値を割り込むことはない

これらの原則に従っていれば、相場がエリオット波動のサイクルに沿って動いているとみなすことができます。ただし、実際の相場では必ずしもこの通りにはならず、原則が満たされないこともあるため、注意が必要です。

推進5波の特徴

エリオット波動の中で最も重要な推進5波には以下のような特徴があります。

  • 1波:じわじわと徐々に方向性が明確になる

  • 2波:1波の大部分を相殺する強い反対方向の動き

  • 3波:通常最も強く長い動き

  • 4波:乱高下が続く複雑な動き

  • 5波:相場の高値/安値への不安から値動きが緩やかになる

修正3波の特徴

一方の修正3波には以下のような特徴があります。

  • A波:4波の底がサポート/レジスタンスラインになりやすい

  • B波:一時的な戻しの動きが多い

  • C波:A波の底を抜けると値動きが加速する

このように、エリオット波動には推進波と修正波それぞれに特徴的な動きがあり、これらを理解することで相場の変化を事前に予測することが可能になります。

エリオット波動の見つけ方

エリオット波動を活用するには、まずチャート上でその波動を正確に見つける必要があります。しかし、実際の相場では理論通りにはいかず、波動の形が崩れていることも少なくありません。そこで、以下のような手法を活用すると、エリオット波動をより確実に見つけられるでしょう。

変化型エクステンション

エリオット波動は、時に理論から外れた形で現れることがあります。その代表例が「エクステンション」と呼ばれる現象です。

エクステンションとは、推進波の中の1波、3波、5波のいずれかが通常よりも長く伸びることをいいます。この場合、エリオットの原則のうち「3波は1波・3波・5波の中で最も短くはならない」というものが満たされなくなります。

しかし、エクステンションが発生しても、エリオット波動のサイクルは継続していると考えられます。相場の急変などによってパターンが崩れているだけなのです。そのため、エクステンションが確認できれば、それに注目してトレードを行うことができます。

トレンド転換1波の特定

エリオット波動の中で最も見つけにくいのが推進1波です。1波は全ての始まりとなる重要な波動ですが、その特定は容易ではありません。

そこで有効なのが、トレンド転換の地点に注目する方法です。相場が上昇から下降、あるいは下降から上昇に転じた地点を、推進1波の始まりと捉えるのです。

これにより、その後の波動サイクルをより正確に把握することができます。トレンド転換点を押さえることが、エリオット波動の分析において鍵となるのです。

ダウ理論の活用

ダウ理論は、相場分析の代表的な手法の一つです。ダウ理論では、高値・安値の切り上げが続く状況を上昇トレンド、切り下げが続く状況を下降トレンドと定義しています。

このトレンドの定義は、エリオット波動の原則「推進波の中で2波が1波の始点を超えて修正することはない」とも関連しています。したがって、ダウ理論を参考にすれば、特に推進3波の特定が容易になります。

移動平均線の活用

チャートに移動平均線を表示させることで、エリオット波動をより視覚的に捉えやすくなります。特に、推進3波を見つけるのに有効です。

一般的に20日移動平均線が使われますが、これを参考にすれば、エリオット波動の大きな山や谷がはっきりと確認できるでしょう。移動平均線を活用することで、エリオット波動の特定精度が高まります。

インジケーターの活用

MT4やMT5などのプラットフォームには、「ジグザグ」というインジケーターが標準で搭載されています。このインジケーターを使えば、チャートの値動きを直線的に表示してくれるため、エリオット波動を見つけやすくなります。

また、「FXエリオット波動インジケーター」といったカスタムインジケーターも、無料で利用できるものが多数存在します。これらのツールを活用すれば、エリオット波動の特定がより簡単になるでしょう。

エリオット波動を活用したトレード手法

エリオット波動は、単なる相場分析ツールだけでなく、実際のトレードにも応用できます。ここでは、エリオット波動を活用したトレード手法について見ていきましょう。

エントリーポイントは「推進3波」

FXトレードでエリオット波動を活用する際、最も有効なエントリーポイントは推進3波です。なぜなら、エリオットの原則により3波は1波・3波・5波の中で最も長くなる可能性が高いからです。

具体的なエントリータイミングは、1波の高値をブレイクした時、または1波高値からの戻りです。つまり、3波の動きを見極めることがエントリーのカギとなるのです。

フィボナッチを活用した予想

エリオット波動の推進2波や3波を予想する際、フィボナッチ・リトレースメントが有効です。

フィボナッチ・リトレースメントでは、23.6%、38.2%、61.8%といった水準が注目されます。相場がこれらのラインを意識しながら動くことが多いため、エリオット波動のサイクルを予想するのに役立ちます。

例えば、上昇トレンドの中で、61.8%ラインの手前から3波が始まり、その後大きく上昇するといったパターンが確認できます。このようにフィボナッチ分析とエリオット波動を組み合わせれば、より精度の高いトレードが可能になります。

「修正C波」狙いの逆張りトレード

エリオット波動の中でも特に注目されるのが、修正C波を狙った逆張りトレードです。

FXでは頻繁にトレンドが転換するため、このような修正C波を捉えるチャンスが多く訪れます。場合によっては、1波や3波を狙う形になることもあるでしょう。

エントリーポイントは、上昇/下降が一旦止まった地点です。そこから再び方向性が明確になれば、利確を狙うことができます。損切りも比較的小さく設定できるため、「損小利大」のトレードが期待できます。

ただし、エリオット波動のサイクルを的確に見極められるよう、事前の検証は欠かせません。相場の変化に柔軟に対応できる力が必要不可欠です。

まとめ

エリオット波動理論は、相場の値動きに一定のパターンがあるという考え方に基づいています。FXにおいても、この理論は広く活用されており、相場の大局観を把握するのに有効な手法として評価されています。

エリオット波動を活用するには、まずチャート上でその波動を正確に特定する必要があります。変化型エクステンション、トレンド転換点、ダウ理論、移動平均線、各種インジケーターなどを活用すれば、エリオット波動をより確実に見つけられるでしょう。

さらに、エントリーポイントの特定やフィボナッチ分析との組み合わせ、修正C波を狙った逆張りトレードなど、エリオット波動を実際のトレードに活かす手法も紹介しました。

相場の変化に柔軟に対応できるよう、エリオット波動の理解を深めていくことが重要です。相場分析の有力なツールとして、ぜひ活用してみてください。

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