時のパワーズ•オブ•テン11
第十一章:火の発見と人類の進化
(100 万年 = 1 年の 10の6 乗倍)
約 100 万年前、ホモ・エレクトスは火を制御し、利用する技術を手に入れました。これは、
人類の進化における最も重要な出来事の一つと言えるでしょう。 人類が火をコントロールできるようになったきっかけについては、いくつかの説があります。自然発生的な山火事や落雷による火災を目撃し、その恩恵を理解したという説、火打ち石など の道具を使って意図的に火を起こせるようになったという説など、様々な可能性が考えられま す。ただし、直立二足歩行により自由になった手でなければ、火を安全に扱えるようにはなら なかったということは断言できます。火は、暖を取り、食物を調理し、捕食者から身を守るこ とだけでなく、人類の社会構造や文化、そして生物学的な進化にも大きな影響を与えました。
火を使うことで、人類は肉や植物を調理し、消化しやすく、栄養価の高い食事を摂ることが できるようになりました。これにより、脳の発達に必要なエネルギーが供給され、人類の知能 は飛躍的に向上しました。調理された食物は、消化に必要なエネルギーを減らし、腸の⻑さを 短くする進化を促したと考えられています。また、火を囲んで集まることで、コミュニケーシ ョンが促進され、複雑な言語の発達にも繋がったと考えられています。火を囲んで物語を共有 したり、情報を交換したりする中で、より豊かな表現力や抽象的な概念を扱う能力が育まれて いったのかもしれません。
さらに、火を使うことで、食物に潜む有害な寄生虫や細菌を殺すことができ、食中毒のリス クを減らすことができました。これは、人類の健康状態を改善し、寿命を延ばすことにも貢献 したと考えられます。
しかし、火の使用が始まった後も、人類は依然として自然界の中では脆弱な存在でした。厳 しい気候、獰猛な動物、疫病など、多くの脅威にさらされていました。人類が真に自然を「征 服」し始めるのは、さらに後の時代、他の旧人類を滅ぼし、ホモ・サピエンスが唯一の人類種 として地球上に君臨するようになってからのことです。
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