N4書房日記 2022 0601-0630
0601
先日、ある人と本谷有希子の話をしていたら「親戚に◎◎モトヤという名前と、◇◇ユキコという名前がいる」と言われ、そういう偶然もあるのかと素直に驚いていたら、今日の試験会場で同席した女性二人組の名前が〇〇さくらと△△ももこという、作ったような名前なのであった。
0602
音楽関係の本は当分、急いでも出せそうにないので、別の小さい本を7月ごろに出すことにする。
N4書房を始めておよそ2年になるが、次第に小さい本を作ってみたくなっていて、どうしても「新書サイズで本文は9ポイント」で作ってみたい。
11月には文学フリマ東京に出店する。
0603
プロの書き手の方から「発言集成」の感想が届いたと教えていただく。これは編者として大変嬉しい。読む人の年齢や知識量によって見えてくる風景が異なる本なので、万華鏡のように読み飽きない、読み尽くせない本になっているのでは。
0604
発言集成の解説のVを公開する。
V02に、モノクロで始まりカラーになる映画「ジョアンナ」への言及があるが、たまたま昨夜観た秋山道男主演の「性賊 セックス・ジャック」にもモノクロからカラーに推移する場面があった。当時そういう手法が流行していたらしい。
0605
インタビューの日。梅雨になる前に初夏が来たようで、蝉が鳴いているような気がする。
FGに関する論評はこれまで(30年以上!)読んできたが、製作中に交わされていたやり取りを伺うとやはり説得力があり腑に落ちる。批評家もリスナーも知らない、気づきようもない、想像も及ばない言葉をいくつも受け取る。
夜になると涼しくなり、明日は一日中ずっと雨になるらしい。
0606
書き起こし作業をするべき録音が12時間分も溜まっているので、今月と来月はその作業に専念する。
また数字の表記で引っかかって「二人」と「2人」が自分の原稿には混在している。吉田仁さんに「2人」で統一したいと言うと「そうだね」と即答していただく。ネットで調べてみると、やはり「2人」と書くケースが多い。
0607
インタビューを読み直しながら文章を整えていると、また別の視点や考えがいくつも浮かび、掘り起こすべき部分が見つかってくる。たとえば、「アクアマリン」で歌詞が無い「ウウウ―ウー、ウーウウウー」のところ。
0608
試験に合格できて良かった。しかし、そんな試験よりもずっと重要な本をコツコツと、一文字単位の直しを入れながら作っている最中なのだ。
ちょっと手を入れる例「これ、アナログで録ってるんで」→「これはアナログで録っているので」
0609
岡野ハジメの本に「好きな曲は何百回も繰り返し聴く」というくだりがあって、他の人はそうでもないらしい、と嘆いていた。自分はまさしく特定の曲を繰り返して何度も聴くタイプなので、共感する。
最近、繰り返して聴いているのはPearl&The Oystarsの「TreasureIsland」「soft science」と、Jockstrapの「I Want Another Affair」とで、いずれも何十回となくリピートしている。
0610
インタビュー原稿がまとまってくると「もう少し良くしたい」という願望が湧いてくる。これは自分の書く原稿や「発言集成」の時とはかなり違う。
「追加でちょっと質問を重ねたい」「ここの所、もうあと15%ほど深く掘りたい」と考え始めるときりがない。今のところはまだ追記できる範囲が多いので、粘る余地がある。
0611
「発言集成」【並】の販売を開始する。
駅前を歩いていて急に「フリッパーズ・ギターをめぐる諸説のぶれ」という短文を思いつく。部品が組み合わさってそれなりのまとまりになるという感じで。様々なトピックにそれぞれの意見や見方があるので、それらを整理しながら概観するというもの。スマホにメモしておいた。
しかし「ぶれ」という言葉は通常よく使うのに、平仮名で書いてもカタカナで「ブレ」と書いても、何となく収まりが悪い。漢字で書くと「振れ」になりそうだが、ますます変になる。
「ぶれ」を避けるとするなら「フリッパーズ・ギターに関する二、三の諸説」「フリッパーズ・ギターに関する二、三の諸説を比べる」「フリッパーズ・ギターに関する二、三の諸説を整理する」など、タイトルを考えるのは楽しい。スパッと決まるのは嬉しい反面、あれこれと考えて悩む楽しみが減る。
0612
インスタグラムに「N4 - dark under books」というアカウントがあって、略して「N4BOOKS」と書いてある。傾向が異なるので間違える人はいないと思うが、18禁デジタル写真集を売っているN4BOOKSと、音楽関係の本を出しているN4BOOKSは別物です。
0613
「文字起こしアプリって、もしかして録音した談話を十時間以上も溜め込んでいる自分のために存在するのでは?」
と思い、とりあえず「Notta」というアプリを使って無料で二時間分やってみることにした。
しかし、スマホとiPadはアップルで、デスクトップのPCはウィンドウズなので互換性がなく使いにくい。というより、本格的に使う前の段階でもうヘトヘトに疲れているのであった。
0614
坂崎幸之助のラジオ番組のゲストにフリッパーズ・ギターが出たのを聴いた記憶がある。
「君たちは何だか……、大学生みたいだよね?」
「まさに大学生なんですよ」
といったやりとりがあったような。
12月に出る予定の本の表紙デザインをここ3,4ヶ月ほど考え続けていて、試作品がおよそ30パターンある。今日はひとつ良いものができた。Wordを駆使して、文字と記号だけで作っているにしては良い。
0615
来月に出す新書サイズの本(掌編集)につける付録に、二つ折りの小冊子を考えている。しかしA5二つ折りなので、サイズがぎりぎり。印刷してみると隅に黒いインクの染みがついてしまうことがあるので、端を2ミリくらいカットすればちょうど良いかもしれない。手間がかかるけれども、染みを隠すのとサイズ調整で一石二鳥になる。
0616
タワーレコードオンラインで全品15%ポイント還元キャンペーンをやっていて、一万円分の本を買ったら1500ポイントがついてきた。普段は書店でポイント用のカードを勧められても断るのだが、50円で1ポイントのくせに「本日は2倍!」などとうるさい。15%ならこちらを優先して利用したい。
0617
「一旦これを始めたら数時間は熱中してやるだろうから、あえてしない」という理由で避けていた掌編集の編集作業がほぼ終わった。やっと解放された。これは来月に出すので、その次に出る本は年末になる。
0618
青葉市子がヨーロッパ、北米、アメリカツアーを行うというニュースをたまたま見て、興味が再燃してまとめて聴いてみた。「アダンの風」はちょっと好みに合わないと思って、それ以降はやや避けていたが、通してあれこれ聴くとやはり素晴らしい。この人に比べると他のミュージシャンが気の毒になるほど。汚れた血液が浄化されるような声とギターの音色。
それで三時間か四時間ほど聴いた後で、Spotifyがお勧めしてきたのがpomodorosaの「秋風サウダーヂ」という曲と、ルルルルズだった。どちらも聴いてみると確かに青葉市子が好きな人向けで、初めて聴いた。
青葉市子は色々な才能とコラボしているので、まとめておかないと曲名を思い出せなくなる。あのアレ、何だっけ、ラブイズ何とかっていうあの曲は……、と、しばしば戸惑う。曲名やアルバムのタイトルだけでなく、「FreeTEMPO」という単語すら出てこない。
0619
ジブリの「熱風」に載っていた独立系書店の人のインタビューを読む。大手に比べるとどうしても品揃えが乏しくなってしまうため、表紙やタイトルが見えないようにして、1231冊だけを用意しているのだという。12月31日生まれの人には1231を勧める、4月15日生まれの人は415を選ぶというように、お客さんがそれを手に取るように対応させているのだと(しかしよく考えると1231冊も必要なくて、誕生日に対応させるなら365冊で済むのでは)。
この人の考え方はいろいろと創見に満ちていて「本好き」と「本屋好き」、「音楽好き」と「フェス好き」は異なるのだという。後者は体験型とか、実際にどこかへ行きたがるタイプで、自分も実感としてそういう種類の人たちの言動に驚かされることがよくある。こういう人たちが払ってくれるお金が次の制作資金になるので、いわばパトロンのようなものか。
他にも書店員は「自分で読まない本」を売るのが上手いのだとか、なるほどと感じ入った。ガケ書房の本にも確かそんなことが書いてあった。
0620
一人で小さな本を作って売ると、場合によっては数十億円の予算で数千人が関わって制作しているメジャーな映画に、コスト面だけでなく面白さでも勝てる(注:個人の感想です)。
しかし「本文の文字が半角ずれている」なんていう小さなミスを自分で発見して、自分で修正するのは神経が参る。しかも、小さなミスを丁寧に除いたつもりでいるのに、本が完成すると大きなミスが見つかる。
しんどいので、息抜きに「この系列でもう一冊作るとしたら……」と考え始めて、タイトルや構成まで考える。そうするとストレス解消になり、同時にまた次のストレスの種が生まれている。
0621
意を決して書き起こしアプリを本格的に設定して、試しにやってみると……、
何だこのシュールな文章群は……。
プロデューサーのお二人との会話がこれです……。
これでは補助的な役割すら期待できない。結局、談話を5秒ほど再生しては書く、原始的な方法の繰り返しに戻る。15分でも結構な文字数になるので、完成した本を一気に読む人はかなり読み甲斐があるはず。
おおむね録音20分ほどを目安にして区切ると、書き起こし作業をしやすい。よいペースを把握できたので、あとは淡々と作業をするだけだが、聴いていてつい興奮してしまう。心を「無」にはできないし、内容を知っていても引き込まれる。
文字起こし完成量はやっと全体の15-25%ほど。
0623
インスタグラムは自分が行った場所、食べたもの、聴いたもの(ジャケットなど)買ったものなどを撮って出す人が多い。自分は何か写真に撮って、しかも人に喜ばれるようなものはないよな~と思っていたのだが「図書館で借りた本」という縛りで記録すればそこそこ続けられるかもしれない。
0624
掌編集は馬鹿々々しい話がほとんどなので、宣伝文句をどうしようか悩む。
「馬鹿では書けない、利口でも書けない、中途半端ではなお書けない作品群!」
というのはどうか。
割と素直に、ストレートにアピールしたいことを書いたつもりだが……。
「それなら実際に買って読んでみるか……」と思われたい。
高望みはしないので、通勤電車とか、新幹線や飛行機での時間つぶし用にとか、雨の日の休日用とか、そんな感じで読まれたい。
掌編集やショートショート集を販売しているのを見ると「ほっこり」「ほのぼの」「感動」といったフレーズを好む傾向もある。そっち路線に関係がないことだけは確かなので、誤解されないようにしたい。
0625
タワレコからユーモアスケッチ大全の4冊と、イーノの本が届いた。何でも値上がりばかりするので、積んである本を読むとか、再読、再々読を習慣にしたい。ユーモア・スケッチは未収録作品が多いものの、およそ半分は再読になる。
「発言集成」の出典解説のS、ピエール・バルーの回を公開する。
0626
急にヘンリー・スレッサーを読みたくなり何作か読み返す。かつて心底から驚いた結末をいま読むと「偶然に頼りすぎているのでは?」と思えてしまう。しかし不満に思う訳ではなくて、登場人物の心理の動きや古き良きアメリカの雰囲気をしみじみと味わえるようになった。
0627
三浦光紀についてウィキペディアで調べていたら、牧村憲一の項目もあったので読んでみると、下の方に「牧村憲一発言集成」「N4書房」と書かれていた。書き足されるべき情報として、どこかの誰かが認識してくれたのだと思うと嬉しい。
0628
空いた時間はひたすら書き起こし作業をする。有名無名を問わず、人名が多いので、注釈をつけるべきかどうか悩む。
0629
きちんと保存したはずなのに数時間分の書き起こし原稿が消えてしまい、顔から音を立てて血の気が引いた。
これは復元できるはずと考えて、あれこれ試して何とか成功したものの、今年で一番焦った。
「あれ? さっき、どうやって復元したんだっけ?」
また同じことが起きるかもしれないので、またやってみるができない。
「ファイルの復元」を使った気がするのだが、検索してもわからない。確かそれでうまいこと「12:05」とか「12:16」とか、時間別に数種類が出てきて一つを選べたのであった。しかし似たような画面にすらできず、あれは夢か幻だったのか。
まあ、いざとなれば復元用の無料ソフトがあるようなので、気にするほどのことではない(多分……)。
0630
連日、最高気温が39度で外出を控えるべきレベルになっている。6月でこれは珍しいけど、あと4,5年もしたら40度を越えるのが普通になっているような気がする。来月は地味に、真面目に、静かに過ごしたい。
少し早めだが、出典解説のRを公開する。
(この日記は半月~一ヶ月くらいのペースで公開しています)