加藤財務相の円安牽制発言を受けて円が急騰、一方ドルは主要通貨に対しまちまち FX・デイリーレポート2024.11.18(2024.11.15)
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15日の外国為替市場では円が主要通貨に対し上昇した。ドル円(USD/JPY)は日本時間帯序盤には7月23日以来となる156.76円まで上昇した。前日のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言(FRBは利下げを急ぐ必要はない)を受けたドル高や内閣府が発表した2024年第3四半期の実質国内総生産(GDP)速報値が前期比で2カ月連続プラス成長となったものの、前期からの伸びが減速したほか第2四半期の伸びが下方修正されたことを受け円売りが優勢の展開となった。ただ、その後は加藤財務相の円安牽制発言をきっかけに介入への警戒感が強まると円が買い戻される展開となり、米国時間帯には一時153.87円まで急速に円高が進んだ。NYクローズにかけては円の買い戻しが一服し154円台を回復したものの、円は大幅に水準を切り下げた。また、円はユーロやポンドに対しても介入への警戒感から買い戻しが進み上昇した。ユーロ円(EUR/JPY)は日本時間午後から急速に円高が進み、米国時間帯終盤には152円台中盤まで下落した。ポンド円(GBP/JPY)は円高進行に加え対ドルでの下落も圧迫要因となり、日本時間帯の198.40円から米国時間帯終盤には一時194.30円付近まで下落した。
この日、内閣府が発表した2024年第3四半期の実質GDP速報値は季節調整済みで前期比0.2%増となり、市場予想の0.2%増と一致し、2期連続のプラス成長となった。ただ、第2四半期は前期比0.7%増から0.5%増へ下方修正された。また、前期比年率換算では0.9%増となり、市場予想の0.7%増を上回ったものの、前期の2.2%増(2.9%からの下方修正)から伸びが鈍化した。一方で加藤財務相は午前中の閣議後の会見で現在の為替について「動向を極めて高い緊張感を持って注視するとともに、行き過ぎた動きには適切な対応を取る」と述べ、円安への警戒感を示した。
また、米商品先物取引委員会(CFTC)がNYクローズ後に発表したCommitments of Traders (COT) Reportsによると、11月12日時点の非商業筋(ファンド、機関投資家など投機筋)のCME円先物のネットポジションは64,902枚の売り越しとなり、前週から20,735枚売り越し幅が拡大した。10月29日にネットポジションが再逆転して以降、3週連続で売り越し幅が拡大しており、投機筋は再び円売りポジションを積み上げてきている。
ドルは主要通貨に対しまちまちの動きとなった。ドルインデックス(DXY)は小反落。前日までの5連騰を受け過熱感が強まるなか、週末を控え利益確定などポジション調整の売りに押される展開となり、日本時間帯から軟調に推移すると、米国時間帯序盤には一時106.33まで下落した。また、対ドルでの円安進行を受け当局による円買い介入への警戒感から、円が上昇したこともドルを圧迫する要因になった。一方、対円では大きく下落したものの、その他主要通貨に対しては下落局面でもトレンドが崩れるような動きは見られず、下値の堅さが印象付けられる展開となった。引き続きトランプ次期大統領が掲げる政策による先行きのドル高への警戒感や米経済の底堅さを背景に当初の想定よりも米国の利下げペースが鈍化するとの観測がドル買い要因として意識されている。また、前日にはパウエルFRB議長が「利下げを急ぐ必要はない」との認識を示したこともドルの下値を支える要因となり、米国時間帯には上値を試す動きも見られた。この日発表された複数の経済指標が比較的良好な内容となり、米経済の底堅さが改めて示されたことを受けドルが買い戻され一時は106.90まで上昇した。ただ、週末を控え見送りムードも強く、NYクローズにかけてやや方向感を欠く展開となり、この日のレンジ中央付近の106.68で取引を終えた。尚、シカゴマーカンタイル取引所(CME)が30日物(フェデラル・ファンド・レート)FF金利先物から算出する金利見通し(FedWatch )によると、15日のNYクローズ時点では12月のFOMCで25bpの利下げが決定される確率は前日の72.2%から61.8%へ低下した。一方で現状維持の確率は27.7%から38.1%へ上昇した。
また、米商務省が15日発表した10月の小売売上高は季節調整済みで前月比0.4%増となり、市場予想の0.3%増を上回った。また、9月の伸びは前月比0.4%増から0.8%増へ上方修正された。これにより前月からの伸びは鈍化したものの、2カ月連続で前月比プラスとり、米国の消費が堅調であることが示された。前年同月比では2.8増%となり、前月の2.0%増から伸びが加速した。
ニューヨーク連邦準備連銀が発表した11月のエンパイアステート製造業調査によると同州の製造業景況指数(NY連銀製造業景況指数)は31.20となり、前月のマイナス11.90から改善し3年ぶりの高水準となったほか、市場予想のマイナス0.7を大幅に上回った。また、調査報告書では対象企業の大半が今後数カ月にわたって状況が改善し続けるとの楽観的な見通しが示された。
FRBが15日発表した10月の鉱工業生産指数は季節調整済みで前月比マイナス0.3%となり、前月のマイナス0.5%(マイナス0.3%から下方修正)から幾分改善したものの、2カ月連続でマイナスとなった。市場予想はマイナス0.3%だった。ボーイングの大型ストライキや米南部を襲ったハリケーン「ヘレン」と「ミルトン」が影響した。一方で、ハリケーンの影響が薄れる11月の鉱工業生産は改善すると予想されている。
ユーロドル(EURUSD)は小反発。ドル高一服を受け日本時間帯序盤からユーロの買い戻しが優勢となり、米国時間帯序盤には1.0592ドルまで上昇した。ただ、その後はこの日発表された米経済指標で米国経済の底堅さが改めて示されると、欧米の金利差拡大が意識される展開となり急速に失速し、一時1.0517ドルまで下落した。NYクローズにかけては前日比でプラス圏を回復したものの、戻りは鈍く上値は限定された。
ボンドドル(GBPUSD)は続落。ドル高主導でポンド売りが継続した。また、英国の9月の月次GDPが前月比でマイナス成長に転落したことや、同時に発表された第3四半期GDPの伸びが前月から鈍化したことを受けポンド売りが優勢となり、米国時間帯終盤には一時1.2597ドル付近まで下落した。
英国立統計局(ONS)が15日発表した9月の国内総生産(GDP)は前月比0.1%減となり、前月の0.2%増からマイナス成長へと転じた。市場では0.2%増が見込まれていた。また、第3四半期のGDP速報値は前期比0.1%増となり、前期の0.5%増から伸びが鈍化したほか、市場予想の0.2%を下回った。前年同期比は1%増で前期の0.7%増からの伸びが加速し、市場予想の1%と一致した。
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