空耳のタイムリミット。 〜 Unlimitable angel's call. 〜
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//TimeLine:20180522
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TITLE:
空耳のタイムリミット
SUBTITLE:
~ Unlimitable angel's call. ~
Written by 黒猫
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//[Body]
止まっていると止まっているなと言う。
それで右に行くと右に行くなと言う。
今度は左に行くと左に行くなと言う。
そういう人間はどこにでもいるし、その気になればそれに成ることも、慣れることもできる。
彼らは自分の望みをきちんと口にすることを知らないから、望みを手に入れることができない。
今いる会社の社長のことである。
諸般の事情により、社員は僕しかいない。
10年以上も前、別の会社(やはり零細企業)にいるときから、この社長と取引をしている。
けっして悪い人ではない。簡単にいえば、いい人だ。
頭は切れるし、情に厚いし、びっくりするくらい真面目で、恐れおののくくらい堅実な人だ。
ただ、有能な人に特有の現象で、他者に対する優しさには少し乏しい。
(少し控えめに表現してみました)
だから「うち(の社員)に来てくれないか」と誘われるたび、僕は断っていた。
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有能な人の背中を追いかけるのは、本当に楽しい。
彼らは、僕のようなドジな人間を叱りながら、ときに冷たくあしらいながら、それでも追いかけてくる人間を最後は可愛がってくれる。
どんな窮地に立っても、どんな失敗があっても、一緒に考えていいアイディアをそれとなく教えてくれる。
一人前になったと見なされると、今度は一転して、放り出される。
「自分で考えろ」
「自分で何とかしろ」
と。
「わざわざ頼らなくても、オマエにはもうできるだろう」と言わんばかりに。
ムスッとした顔で吐き捨てるように。
僕はそういう情の厚い上司に恵まれた。
たまたま他に転職することになって、大きな(あるいは有名な)会社に行ってびっくりした。
薄情もいれば無能もいる。
あるいはかすかな能力を鼻に掛けたり、自分の足場を確保するのにやっきになっていたり。
こんな奴の背中を追いかけるのか? ムリだろ? と思った。
だからといって、先に立つと、こういう連中は後ろから蹴飛ばしてきたりする。
経営者とマネージャ風情は、背負っているものがこんなにも違うのかと、つくづく思った。
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今の社長は、もう、最初から、僕の横にさえ立ってくれない。
高齢で、5年も闘病で会社を空けて、ようやく戻っても社員はいなくなっていて。
肉体的な機能も、知的な能力も、精神的な気力も、彼は衰えてしまった。
そんな社長の経営している会社に勤めるのは、危険なことだとは分かっているのだけれど、まぁちょっとした雪山に軽装で乗り込むような冒険心が僕にはあったし、案外捨て身だし、いきあたりばったりだし、両親も含めて家族はいないので、今回は社長の頼みの手を取ったのだ。
だから僕が優しいとか、偉いとか、そういうことをいいたいのではない。
どちらかといえば愚図だと思うし、ろくでなしだと思う。
堅実な人間は、普通、こういう選択をしない。
ゆえに僕は、堅実ではなく、浮ついているのだろうと思うし、基本的になげやりだし、いい加減な人間ではある。
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彼は機械アレルギーで、他人がコンピュータを使っていることにさえ、ちょっとした嫌悪感を示す。
(ちなみにガラケーひとつ持っていない、王様のような人である)
顧客データが現状、すべて紙ベースであり、どういうわけかこの業界はシステムのオンライン化がそれほど進んでいない。
(今までこの会社にいた社員も、ワードで表を作ったり、エクセルで案内文を書いたりと、まぁ自由奔放な様子がPCのデータを探るうちに分かった)
見るに見かねて(というよりも、何枚もの書類に何度も同じことを書くのが、めんどうくさがりな僕には苦痛なのだ)データベースの構築を始めようとしている。
見つけたら「くだらないことをしている」と認識するであろう社長に隠れて、こっそり。
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社長は最初から、僕の前に立たない。立ってくれない。
陣頭指揮ではなく、後ろから、ただただ文句を付けるだけだ。
でも僕は逆らえない。いや逆らうことはいくらだってできると思うのだけれど、したくないのだ。
彼は何を望んでいるんだろう。
一人前にもなっていないのに(なにせ初めての業界だ)毎日少しだけ、焦る。
自分で考えて、自分で何とかしろと、誰かの声が聞こえる気がして。
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[NEXUS]
~ Junction Box ~
[ Traffics ]
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[Engineer]
-黒猫-/-BlueCat-
[InterMethod]
-Blood-Derailleur-Diary-Interface-Life-Link-Love-Recollect-Style-Technology-
[Module]
-Connector-Convertor-Resistor-
[Object]
-Camouflage-Tool-
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[Cat-Ego-Lies]
-いのちあるものたち-:-ひとになったゆめをみる-
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猫に小判と申しまして、巨額の借金の返済に充てても焼け石に水になってしまうので、パイプ煙草の葉っぱを買おうと思います。 それかマタタビ、あるいはキャットフード。