知られざる台湾の軍用鉄道路線とは?①
こんにちは、黒熊です。
台湾は九州程度の大きさながらも、全島にわたり多様な鉄道網が構築されています。在来線運行を担う台湾鉄路管理局(臺鐵)をはじめ、新幹線を運営する台湾高速鉄道(臺湾高鐵)の他、台北・新北・桃園・台中・高雄の各主要都市には捷運/MRTが運行されています。台湾の鉄道は日本の鉄道愛好家にも慣れ親しまれており、鉄道旅行を題材にした書籍やガイドブックが日本国内でも数多く出版されています。
その台湾の鉄道路線の中には少数の特殊な路線が存在します。中でも稀有な存在が「軍用鉄道線」(※台湾では特種支線と呼称)です。現在、台湾軍が運用している路線には「中興一号特種支線」「中興二号特種支線」の2路線があります。
今回は台湾鉄道路線の概要、および2回に分けて中興特種支線を紹介していきます。
台湾鉄道路線の概要
台湾の鉄道路線についてざっくり説明します。まず、台湾鉄路管理局が運営する幹線・支線(在来線)は以下の通りです。
西部幹線
北段縦貫線(基隆~新竹)
台中線/海岸線(新竹~彰化)※海側・山側二路線に分岐
南段縦貫線(彰化~高雄)
屛東線(高雄~枋寮)
南廻線
南廻線(枋寮~台東)
東部幹線
台東線(台東~花蓮)
北廻線(花蓮~蘇澳新)
宜蘭線(蘇澳~八堵)
支線
平渓線/深澳線(八斗子~瑞芳~菁桐)
内湾線/六家線(新竹~内湾~六家)
集集線(二水~車埕)
この他、台湾新幹線を運行する「台湾高速鉄道(臺湾高鐵)」と、登山鉄道として世界的に有名な「阿里山森林鉄路」があります。
台湾高速鉄道(高鐵南港~高鐵左営)
阿里山森林鉄路(嘉儀~沼平)※阿里山林業鉄路及文化資産管理処(林鉄処)が運行
なお、台湾鉄道路線図についてはひまわりデザイン研究所さんが制作・運営する国内・海外各地の鉄道路線図サイト「47RAIL JP」に非常に見やすく直感的にわかる路線図が掲載されていますので、ぜひご参照ください。
中興一号特種支線
台湾鉄道・西部幹線北段縦貫線の鶯歌駅(陶器産業が盛んな街で鶯歌陶瓷老街が有名)南西約2km地点で分岐するこの支線は、陸軍後勤指揮部陸軍汽車基地勤務廠に引き込まれている路線です。
この営区(=軍基地・駐屯地)は、陸軍の兵站部門を統括する「後勤指揮部」の管轄下にあり、台湾軍の保有するHMMWY多用途車やトラック等各種車輛の整備・メンテナンスを担っています。そのため、整備車輛や使用する各種資材の搬出入にこの支線が使用されています。機関車の運転とび貨車運行については、台湾鉄道が担当しています。
支線へのアクセス
鶯歌駅南口を出て右手へ曲がり、一般道路である「114号線」(中正二路~八徳路)沿いを西へ直進。駅から凡そ2km・徒歩約25分前後で西部縦貫線本線からの分岐点に到着します。支線は114号線と斜めに交差しており、半自動方式の踏切が設置されています。
GoogleMap 位置表示
特種支線の引込口は普段鉄柵で閉鎖・施錠されており、「軍事営区」を示す警告標識と監視カメラが設置されています。
貨車出入の際は、営区内から受入担当の兵員が線路を点検しながら現れ、鉄柵を開放します。引込線は一般車両道路と交差しているため、貨車は道路の手前で一時停止。兵員および台湾鉄道の要員が車両通行を止めて安全確保後、引込線への進入を機関車に合図します。貨車通過後は車両通行を再開させ、再び引込線の鉄柵を閉鎖施錠する、という手順です。
(2023.12.22 // 中興一號特種支線 // 中華民國國防部聯合勤務總司令部汽車基地勤務廠 小根根さん -YouTube)
なお、特種支線引込口から先、営区(基地・駐屯地)内での軍用車両積み下ろし・積み出し作業の様子は、以下の映像で詳しく見る事ができます。
(影/《軍情站》解密軍用運輸鐵道 中興一號 udn video -YouTube)
(軍車開到火車上! 開箱「中興一線」軍車上鐵皮 自由時報電子版 -YouTube)
鶯歌駅へは、台北駅から区間車(各駅停車)で約30程で到着できるため、集集線の「中興二号特種支線」よりも簡単に訪れる事が可能です。撮影の際は周囲の道路交通状況に注意すると共に、軍事管制区への接近・立ち入りはしないようご留意ください。
次回は「中興二号特種支線」を紹介します。
それじゃ、今日はこの辺で。RTB.(②へ続く)
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