【2022年10月記事】 バーチャルワールドでの美の表現について
※この記事は下記の記事の転記です。
https://global-creative-trip.hatenablog.com/entry/2022/10/24/125446
今年も残すところあと2ヶ月!
もうすっかり秋ですが今年の夏の話をすると、家族に「見過ごせないレベル・・・」と言われる程、夏休み中にこんがり日焼けをしました。
当然、今まで使っていたファンデーションだと白浮きしてしまうので、急いでオンライン上でメイクを試着できるVIRTUAL TRY ONでファンデーション探しの旅へ。
つい最近まではARレンズで楽しむバーチャルメイクは不自然で、「フェイクと分かるくらいが逆に面白い」という感覚で撮影して楽しんでいたものが、今ではとても自然で実用的に変化。
提案されるシェードもバッチリでそのままオンラインで購入も考えましたが、店員の方からアドバイスを頂きたいのもあり、店舗で最終的には購入。
オンラインで購入したいオンライン派、店舗で購入したいフィジカル(リアル)派、オンラインとオフラインを両方を組み合わせて購入したいフィジタル派など、買い物の仕方も多様化されたことを身を持って体験しました。
もう一つ最近感動したオンラインサービスはイギリス発のスキンケアブランドThe INKEY Listでのライブチャット機能です。
The INKEY LISTはオンリーショップを持たず、SephoraやBootsなどの化粧品専門店で販売がされている為、店舗に専門スタッフはいませんが質問があればライブチャット機能を活用ができます。
しかもAIではなくThe Inkey Listのスタッフが答えてくれ、レスポンスの早さにも感動しました。
日本にはThe INKEY Listの取り扱いがない為、私の場合は実際に店舗に行きライブチャットを体験したわけではないですが、日本からライブチャットを何度か利用し、その度にすぐ返答がきたので「今イギリスは深夜では・・・?」と質問したところ、ヨーロッパ、北米、オーストラリアにスタッフがいるので24時間いつでも応答が可能と話していました。
The INKEY Listは2018年に設立したばかりのブランドですが、VOGUE BUSINESSの記事によると今年は売り上げが1億ドルに達する見込みとも言われており、ライブチャット機能以外にも肌悩み別にオンラインコーチがおり、無料オンラインコンサルを申し込めるなど顧客へのサービスが充実しているので急成長にも納得です。
と、、少し自分の体験談が長くなりましたが、、今回はバーチャルでのビューティー事情について3ブランド紹介したいと思います!
① Dove "Real Virtual Beauty"・・・ゲームにおける女性像の偏見をなくす
② CLINIQUE x DAZ 3D “A METAVERSE MORE LIKE US”・・・NFTを通じてアバター女性の多様化
③ NYX Professional Makeup "GORJS"・・・3Dメイクアップアーティストを支援
① Dove "Real Virtual Beauty"
2004年から自己肯定感を上げていくDove Self Esteem Projectを続けているDoveはゲーム界にも参入し、バーチャルでの美についてもテコ入れ。
Epic GamesとWomen in Gamesと提携し、ゲームにおける女性キャラクターの多様性とバーチャルでの自己肯定感を向上していく"Real Virtual Beauty"プロジェクトを立ち上げました。
現実とは違う自分に変身できることがゲームの楽しさではありますが、未だゲームの女性キャラクターはスリムでボンキュッボンタイプが多く、74%の女の子たちがビデオゲームのキャラクターが現実世界の女性にもっと近いことを望んでいます。
Dove ではこの結果に注目し、女の子ではなくゲーム開発者に向けて教育プログラムを行いました。
より現実に存在している女性に近いグローバルなゲームキャラクターコレクションを構築されることを目指し、ゲーム開発者は無料でコレクションへアクセスする事ができます。
また、クリエイターやアーティストもオンラインコースでゲームにおける美と多様性ついて学び、アバターやキャラクターの開発段階において無意識の偏見をなくす方法などを指導しています。
このキャンペーンの重要なポイントは女の子ではなく、ゲーム開発に携わるエンジニアやデザイナーなどを対象にしたことであり素晴らしいキャンペーンだと思います。
ただ・・・公開された映像作品を見ると、登場する女性達は体や皮膚に障害があったり、体が大きめだったりマイノリティな女性達を中心にキャスティングしており、極端なキャスティングに首を傾げてしまいました。。
ゲームに登場する女性キャラクターは男性目線の見た目が多く、女性が望むような女性キャラクターが少ないという点がポイントであり、個人的な感想にはなりますが、スマホで流れるゲーム広告に登場する女性キャラクターを見た時に感じる違和感とはまた別の違和感をDoveの映像作品で感じてしまいます。
② CLINIQUE x DAZ 3D “A METAVERSE MORE LIKE US”
デジタル世界に多様性を訴えているのはDoveだけではありません。 CLINIQUEはDAZ 3Dと提携し、多様性なNFTコレクション"A METAVERSE MORE LIKE US"を発表。 DAZ 3Dが展開するアバターNFP(Non-fungidable People)とCLINIQUEがコラボレーションし、今年7月〜9月の間に毎月1回、3名のアーティストによるNFTメイクアップルックを公開しました(メイクアップルックと一緒に使用したアイテムも紹介され購入が可能)。 DAZ 3Dが展開するアバターは8888体あり、その中から毎月1968名のNFPホルダーへメイクアップ が付与され、保持するアバターにメイクアップを施せることができました。
キャンペーンの目的は、メタバース上の自己表現の幅を広げ、メタバースをよりインクルーシブでハッピーな空間に導く事。
CLINIQUEが今回DAZ 3Dをパートナーシップとして選んだ理由としては、DAZ 3Dが展開するNFPアバターが女性やノンバイナリーであるということがポイントにあり、実際のCLNIQUEの広告と同様に様々な人種や肌タイプのアバターでNFTメイクアップルックが発表されました。
他にも今回の企画に参加した3名の女性アーティスト達が異なるフィールドで活躍しているという点も多様性でインクルーシブに満ちています。 毎月コラボレーションをしたアーティストに関する社会活動も行っており、多様性だけでなく社会貢献にも繋がったキャンペーンになったと思います。
【参加した3名のアーティスト達】
Sheika Daley:セレブリティメイクアップ アーティスト
Tess Daly:生まれつき脊髄性筋萎縮症の病気を持つビューティーインフルエンサー
Emira D’Spain:TikTokで活躍するビューティーコンテンツクリエイター
③ NYX Professional Makeup "GORJS"
CLINIQUE以外にクリエイティブな方法でweb 3.0 に突入しているのが、カラーバリエーションが豊富なアメリカの人気コスメブランドNYX Professional Makeupです(以下、NYXに省略)。
NYXはBeauty DAO GORJSというDAOコミュニティを立ち上げ、DAOとはDecentralized Autonomous Organzationの略で、分散型共同社会を意味し・・・ここまでの話だと『どういうこと???』と感じると思います(笑)
簡単に説明をすると、通常、組織の仕組みはリーダーがいるトップダウン形式ですが、DAOはブロックチェーン技術を使用した組織またはコミュニティを指し、リーダーを作り意思決定をするのではなく、平等で公平な立場で参加者のメンバーで意思決定を行います。
実際NYXが立ち上げたビューティーDAOのGORJSに関して、具体的な活動内容はまだ明らかになっていませんが、3Dクリエイターの支援やメタバースでの美の定義を目的と発表しています。
3Dクリエイターにはアニメーター、エンジニアの他にメイクアップアーティストも含まれ、NYXのウェブサイトで紹介されている3Dメイクアップアーティストの作品を見るとメイクの発色だけでなく肌のトーンや艶の出し方までディテールが細かく表現されています(メイク好きには見入ってしまうディテール・・・)。
今回高いセンスとクオリティレベルを持つ3Dメイクアップアーティストが集まったのも、インスタグラム のフォロワーが1400万人越えでアメリカとヨーロッパのZ世代から絶大な人気があるので世代的にもぴったりの施策だったと思います。
また、NYXは2018年にプロのメイクアップ アーティストや有名ビューティーブロガーを中心としたオンライン教育プログラムも行っている背景もあり、今回の3Dクリエイター支援活動はブランドDNA的にも繋がっているのも注目ポイントです。
NYXの3Dメイクアップアーティストの作品はエキセントリックな感じではありますが、等身大に近いヴァーチャルモデルも各国で人気を博しているので今後ナチュラルな3Dヘアメイクが上手な3Dメイクアップ アーティストも登場にも期待です。
以上、ビューティーでのバーチャル施策は他のブランドでもありますが、今回3つのブランドの事例紹介をさせていただきました!
CLINIQUEやNYXで紹介したように、メタバース、NFT、DAOを始める企業やブランドも増え、これまでのインターネットの仕組みが変わり、現在をweb 2.0と呼び、これからはweb 3.0 という時代に突入と言われています。
暗号資産、メタバース、NFT、DAO、ブロックチェーン、トークン・・・・などなど耳慣れないワードだけでなく、どれも仕組みも複雑で難しいと感じる人も多いのではないでしょうか。
まだ定着されていない理由としては、テクノロジーの進化の早さに比べ、デザインや企画などのクリエイティブな部分が追いついてない様に感じます。
また、ビューティー業界は特にバーチャル空間での美の表現に関して慎重になると思います。
バーチャルな空間だからこそ現実とは違う自分を演じられるのが楽しみの一つであり、アバターやゲームのキャラクターに変身するのは、私たちがメイクをして変身する感覚と似ているかもしれません。
しかし、のめり込みすぎて本来の姿に目を背け自己肯定感が低くなってしまっては現在SNSで起きている加工に頼ってメンタルヘルス悪化に繋がる問題の延長でしかなく、注意が必要です。
同じ問題が繰り返されないためにもビューティーブランドが今後どうバーチャル空間で美を定義し、消費者をリードしていくかに注目しています!
執筆:高嶋