カンヌライオンズ 2023受賞作品紹介(ビューティー&SNS編)
カンヌライオンズ2023の受賞作品をお届けしてきましたが、最後はDoveの受賞作品の他にPinterestのセミナーをご紹介いたします!
Dove
Doveは50の賞が最終選考に残り、結果15の賞を受賞。
(グランプリ:1、ゴールド:3、シルバー:4、ブロンズ:7)
欧米のみならず、インド、タイ、ブラジルのDoveも受賞し、各国の社会問題を取り上げた作品が多くクリエイティブな方法で解決に取り組んでいます。
今回はその中からSNSをテーマにした作品をご紹介します。
Media部門 グランプリとゴールドを受賞
Social & Influence部門 ブロンズを受賞
Dove '#TURNYOURBACK'
SNSでの加工に頼る少女や若い世代に警鐘を鳴らした Doveの#TURNYOURBACKキャンペーン
このキャンペーンが生まれたきっかけは今年の3月にTikTokに登場し、話題を呼んだAR加工フィルターBold Glamourになります。
Bold Glamourは顔を動かしたり触ったりしても、フィルターが乱れないことから「加工がバレにくい」として瞬く間に人気を呼びました。
しかし同時に若者の自己肯定感低下に繋がると報道するメディアも多く、DoveもまたBold Glamourへの反対姿勢として、Bold Glamourが登場してからわずか72時間以内にTikTokでアクションを行いました。
Doveが投稿した動画の中では、Bold Glamourへの反対アクションとして女性たちが背中を向け、
「背中を向けてください。
フィルターはあなたをどう見せるか伝えるべきではないのだからBold Galomurに#TURNYOURBACK 」
というメッセージが流れ、54%の女の子たちが加工された時の写真を好むという調査データも紹介し、若い世代の加工への依存について危惧しています。
また、AdAgeによるとDoveのインフルエンサーコミュニティを活用し、70名ものTikTokクリエイターと提携。
その結果、#TURNYOURBACKのハッシュタグを使用したキャンペーンを開始してから7日間で3.6億回以上閲覧されました。
他にもHealth and Wellness部門でブロンズを受賞したDoveの'Cost of Beauty'は、幼少期から10代に成長する過程でSNSがどう女の子たちのメンタルヘルス影響するか記録しています。
Health & Welness部門 ブロンズ受賞
Dove 'Cost of Beauty'(US)
10代に入りスマホを手に入れてから変化していく女の子の顔つきや仕草、そして外見や美に対しても関心を持つようになり、スマホで何気なくスクロールしてる映像が若い世代に誤った美の情報や定義を与えていることに気付かされる作品です。
Pinterest トークセミナー
'The Internet Is Broken. Let’s Fix It. ’
(インターネットは崩壊している、立て直そう)
最後にご紹介したいのがPinteresntのトークセミナーになります。
PinterestはSNSにおけるメンタルヘルスをテーマに登壇し、SNSがもたらすメンタルヘルス問題は外からの声だけでは解決が難しく、SNSの運営側やスポンサーが根本的に変えていく必要があると話していました。
Pinetesetと言えばインテリア、料理、ファッション、ビューティーなどのアイディア探しに役立つSNSで、周囲のいいねではなく自分が好きなものを探すことが軸になっています。
セミナーでは、カリフォルニア大学と協働してZ世代を対象にPinterestのコンテンツを10分間閲覧することが精神的にどんな結果をもたらすか計測し、エモーショナルウェルビーイング(心の健康や幸せ)に繋がるよう広告の見直しや検索方法をどのように改善したか紹介していました。
例えば、検索方法に関しては黒人、褐色系、ラテン系のユーザー向けに肌や髪質別に検索フィルターをかけられることができ、よりインクルーシブでパーソナライズドされた検索を可能にしています*。
*日本のPinterestではこの機能はまだ取り入れられていません。
そしてAIについても言及。
Pinterestは検索のトップに上がる結果を閲覧時間の長さによってではなく、ユーザーが保存した行動を基にユーザーの好きを測るようにし、AIが選ぶ中毒的(Addictive)なSNSから自ら選択した生活に取り入れたくなるような(Additive)SNSに変えていきました。
ここでお伝えしたいのがAIが悪という話ではなく、AIへの学習方法によって善にすることができるということです。
他のセミナーでもAIについて私たちの生活や仕事にどう取り入れ、活用していくかが鍵となると話しており、Pinterest もまたAIは使い方によってSNSをポジティブにも出来ると話しています。
SNSが誕生した当初は、古い友人や家族や親戚などと繋がるツールとして親しまれ、時系列に投稿が表示されていましたが、AIによるアルゴリズムでいつしか広告やフォローしていないアカウントの投稿が時系列とは関係なくフィードに上がってくるようになりました。
他にもショッピング機能が加わるなどSNSから入ってくる情報量が増え、いつしか心の健康を脅かすものとして問題視されるようになり、Pinterestだけでなく他のSNSもどこまでメンタルヘルスを意識してプラットフォームを変えていくのか気になるところです。
執筆:高嶋 くらら
前回までのカンヌライオンズの記事に関してはこちら↓