ヨーロッパ最大テックイベント VIVA TECHNOLOGY / ロレアルAI最新活用事例
世界最大のテックイベントと言えば、ラスベガスで開催されるCESですが、もう一つ見逃せないテックイベントといえば、毎年パリで開催されているVIVA TECHNOLOGYです。
ヨーロッパ最大のテックイベントと言われており、フランス政府の強力なバックアップもあり年々来場者も増加しています。
そして今回8回目の開催では、来場者がCESの13.8万人を超え、16.5万人以上が来場!
トークイベントにはイーロン・マスク氏やP&Gのチーフブランドオフィサーであるマーク・プリチャード氏などもゲストとして登場し、昨年から更に企業の出展やゲストスピーカーもパワーアップしたように感じます。
特にロレアルは会場の外や最寄り駅構内でも広告を多く出しており、他の企業に比べて気合を感じられました。
ということで、今回のブログではロレアルがVIVA TECHNOLOGYで発表したAIを活用した最新事例やビューティーでのマーケティングの変化についてご紹介します!
Beauty for Each, Powered by Beauty Tech
VIVA TECHNOLOGYの基調講演やその他のセミナーでゲストとして登壇していたロレアルのチーフデジタル&マーケティングオフィサー、アスミタ・デュバイ氏。
デュバイ氏は、エマージング市場での中流階級の増加、Z世代の成人化、そしてベビーブーマー世代の美容への関心の高さが、ビューティの未来を形作る要因だと話し、2030年までに世界の40%が巻き毛や強いカールを持つコイルヘアーになり、2040年までには3人に2人がメラニン色素を多く持つ肌質になると予測しています。
このように美のニーズが変化し、多様化が進んでいることから、ロレアルは2010年代の「Beauty for All」から一人ひとりのための美を実現する「Beauty for Each, Powered by Beauty Tech」へシフトし、表現方法や価値観を進化させることで、2030年までに6億人の新規顧客を獲得することを目指しています。
Augmented Marketing(拡張マーケティング)
また、消費者はUVケアや汚染対策にも高い関心を持っており、身体的にも環境的にも優しく、サステイナブルな美容を求めています。体験もリアル、デジタル、バーチャルと多様化しており、これに対応するためにマーケティング手法も進化し、ロレアルは「Augmented Marketing(拡張マーケティング)」と呼んでいます。
そして、生成AIによって更に拡張されている今、ロレアルが生成AI技術をどのようにクリエイティブや体験に繋げて活用しているかご紹介させていただきます。
CREATOR PROGRAM:Meta社とのパートナーシップでクリエイターエコノミーを強化
ロレアルでは、ビューティー関連のコンテンツクリエイター、メディカルインフルエンサー、ゲームインフルエンサー、ヘアスタイリストなど、さまざまなインフルエンサーと協働してコンテンツ発信をしており、その数は6万人以上。
2023年、ビューティーインフルエンサーシェアの29%を占めるロレアルは、更なるクリエイターエコノミー強化に向け、Meta社とのパートナーシップを組み、クリエイタープログラムを発表しました。
まずはロレアル パリ、ランコム、ラ ロッシュ ポゼの3ブランドで、AR、VR、3Dツールなどの最先端のテクノロジーに長けた30人のクリエイターとのコラボレーションを行い、ビューティー体験を再定義を行います。
ラロッシュ・ポゼのインスタグラムではコンテンツクリエイターとコラボーレーションされた投稿が早速公開されていました。
ラロッシュ・ポゼ コラボレーション事例
5月にコンテンツクリエイターgennicroとのコラボレーションをインスタグラムに投稿したラロッシュ・ポゼは、Viva Technologyの会場にARデジタルサイネージを設置。
日差しを遮るように頭の上に手をかざすと、インスタグラムの投稿と同様に巨大な日焼け止めが出現し、肌を紫外線から守る擬似体験を楽しむことができます。
また、このようなコンテンツクリエイターと協働し、AR、VR、3D体験を通じて、楽しみながら知見を深める、「エデュテイメント(education+entertainment)」や「インフォテイメント(information+entertainment)」要素を含んだコンテンツ制作に今後力を入れいていくと考えられます。
CREAITECH:AIビューティーコンテンツラボ(社内AI活用事例)
今回、VIVA TECHNOLOGYで新たに発表されいていたAIビューティーコンテンツラボ「CREAITECH」。
CREAITECHはWPPとNVIDIAが共同開発したエンジンに加え、その他複数の大規模言語モデルや拡散モデルを活用しています。そして8ヶ月にわたって20種類以上のAI技術をテストし、ブランドと数多くのワークショップを行い、1,000枚以上の美容関連の画像を作成してきました。
現在はラロッシュ・ポゼとケラスターゼをはじめとする、15ブランドがコンテンツ制作にこのサービスを活用して、ロレアルはAIで作られた人工的な画像は使用せず、CREAITECHでインスピレーションを得たり、アイディアを生み出すことを目的としていることを強調していました。
Beauty Genius:生成AI搭載のパーソナルビューティーアシスタント体験
今年のCESでも紹介されていた生成AIを搭載したビューティーアドバイザーツールのBeauty Genius。
チャット形式で肌、髪、メイクの診断、アドバイスの他、一人ひとりに合わせたロレアル パリ製品の紹介を行います。
店頭と顧客との間で実際に交わされた何十万の会話の分析データや、ロレアルの持つ膨大なデータによって、本物の美容専門家と実際に会話をしているように感じられる自然なコミュニケーションを実現しユーザーエクスペリエンス向上に繋げています。
VIVA TECHNOLOGYの会場では実際に体験を行うこともできましたが、まだ一般的に使える日に関してはまだ発表されていません。
今年CESでも大きく取り上げていたので、実際に体験できる日が待ち遠しいです!
以上、VIVA TECHNOLOGYでロレアルが発表していたAIを活用した最新事例や体験について一部ご紹介させていただきました。
VIVA TECHNOLOGYでのトークセッションに関しては、以下のリンクよりご視聴いただけます。
気になった方は是非ご覧ください!
今回のブログで参考にしたロレアルセッション
-Shaping the Future of Beauty with Beauty Tech (22日 Stage 1)
-The Voice of the CMO: Blending Creativity and Technology for Impact( 24日 Stage 1)
- Decoding the Future of Creator Ecosystems: Connection, Creation and Technology (23日 Stage 2)
今年はどの企業もブランドもAIをどのようにクリエイティブやサービス(体験)に取り入れていくかがテーマとなり、今年のカンヌライオンズでも言うまでもなく、AIがビッグテーマの年でした。
カンヌライオンズに関する記事はまた次回、ご紹介させていただきます!
執筆:高嶋 くらら