「キャッホー!」スキーヤーは銀世界を制す
滑る基本は”爆弾”直滑降
スラロームとGSで世界に君臨したスキーヤー、アルベルト・トンバ。爆発的なパワーでガンガン攻める滑りを、ボンバー(爆弾)・トンバと称されたスーパースターです。
W杯の選手のように技術が上がればスピードをあげられます。と言うより、減速させる要素を省くことができるから、速く滑ることができるのです。
スピードを出す方法は簡単です。スキーを落下方向に向けるだけ。スキーは重力を使った落下運動です。直滑降で滑る時間が長ければ、その分、スピードも上がるわけですね。
方向を変えるためにスキーを必要以上に横にすると、ブレーキがかかりすぎて滑りにくくなります。
そこを調節していく技術、つまり、ターンをスムーズにできるようになれば、快適性が上がり、楽しくなってくるのです。
何より、下向きにスーッとスキーが滑り出して、スピードが上がり、風を切っていく感覚は、心をおおらかにしてくれます。
つまり、「キャッホー!」と声を出したくなる高揚感がスキーの楽しさ。これを知るからスキーが好きになると思います。
ところが、こうした声が聞こえなくなっているなと、思うのです。
自己肯定感を向上させるスキー学校改革
時折、スキー嫌いにする指導を見かけます。あまり滑らせずに寒い思いをさせて、説明を長く聞かせる。転んだら助けずに、自分で起きるようにやり方だけを伝えている。指導者の熱心さのあまり、楽しいスキーを体験する時間が減ってしまうのは残念です。
プルークでブレーキをかける練習ばかりでは、スキーを嫌いになってしまいます。
斜面をまっすぐ滑り降りる感覚を何度も体験させることで、爽快感が体に入り、スピードにも慣れていきます。
まっすぐ滑るチャレンジをして、転ばずにゴールする体験を積み重ねると、「できる感」を味わい、何度もやりたくなります。つまり、自己肯定感が向上するのです。
「なんのためにスキーをするのか。」を問いかけてみてほしいのです。
スキーを通して、自分が好きになる。新しい挑戦をしたくなる。
何か目的意識を持たせることで、今までのスキー学校・スキー教室がガラッと楽しいものに変化していきます。
スキー指導の基本は「キャッホー!」
子供はキャーキャー言いながら、滑るのが大好きです。
「スピードが出てきて、気持ちよくなったら、声だしていくと楽しくなるよ!」
「さあ、いくよー!」
「キャッホー!」
転んだら、さっと手を差し伸べて、起こしてあげましょう。
何度も何度も、何度でも助けてあげましょう。
そのほうが滑る時間が長くなります。
そのうち、自分で起きようとするようになります。
そしたら、手を離してあげる。
「おお、自分で起きられたね。」と一緒に喜んであげる。
そして、また、「さあ、いくよ!キャッホー!」と、子供より先に滑って行ってしまう。
雪山の斜面を登っていく熊の親子がごとく、
「待ってよー」
と後を追っかけてついてくる中で、子供は自然と上達していくのです。
教える時間より、一緒に楽しく滑る時間を長くとったほうが、結果的に早くうまくなります。
体の動かし方を触れて伝える
後ろ向きに滑ることができるなら、両手で子供の腰を触って、左右に体を動かすやり方を伝えましょう。ローテーションという技術です。腰の動きが、脚部に伝わり、スキーのエッジに伝わって、回転がしやすくなります。
後方で滑ることが難しければ、ストックを使って「電車ごっこ」のように、後ろから子供の手を回すようにする方法があります。
子供の体が小さければ、後ろから腰を支えるようにして、左右の動きを伝えます。
腰の動きができれば、次は上半身を使ってターンの練習をさせてみます。片手をパンチするように前方に出すとターンが始まることがつかめてきます。
こうして、バランス感覚や下半身への力をスムーズに伝える様々なエッジングを体感させていきます。
慣れてきて、自分で制御できるになったら、子供の少し前を滑って、目からインプットさせます。
子供は説明よりも、視覚情報で覚えるほうが得意です。
体の使い方を覚えさせる方法として、まず一緒にやってみる、やってみせることが大切です。
そして、できるようになったら、一緒に喜ぶ。
そう、合言葉は、「キャッホー!」です。楽しいスキーを!