両側乳がんラプソディ#4 カテゴリー
検査翌日からゴールデンウィークの長期休暇が始まった。
配偶者のYと二匹の愛犬との家族旅行、友人との食事会や飲み会、研究会、たまった仕事など、ボチボチこなすうちに九日間の楽しい休暇は過ぎた。
休み気分も抜け切らない月曜日、検査結果を聞きに病院へ行った。
二度目の顔合わせとなる医師は、検査結果をパソコンの画面に映しながら、両胸ともに疑い(がんとはあえて口にしなかったと思う)があるので詳しく調べたほうが良いと話し、
「左側はおそらく大丈夫だと思いますが、右側はカテゴリーが4なので。」
と付け加えた。
「カテゴリーってステージのことですか。」
無知だと笑うなかれ。
カテゴリーとステージに区別があるなんて考えたこともないのだ。
きっとよくある質問なのだろう。
医師は静かな声でその違いを教えてくれた。
私は、カテゴリーというのは疑いであって、数字が高いほど可能性が上がること、詳しい検査をしてみなければ確実なことは言えないこと、そして、この病院では乳腺専門の常勤医師がいないため、他の病院で検査を受けた方が良いことを理解した。
どこの病院が良いか聞かれたので、勤務先の徒歩圏内にある総合病院を調べてもらい、そこの紹介状を書いてもらった。
私の頭の中には、以前の良性腫瘍の経験がこびりついていて、通ったり手術したりするにしても、できる限り無理をしないですむ予定を組みたかった。
そのためには、地理的条件は絶対であると思い込んでいた。
看護師さんが私の希望する総合病院に連絡を取ってくれ、無事、予約を取ることができた。
「女性の先生でしたよ。」
と嬉しそうに伝えてくれた看護師さんの声を聞いて、胸という患部の特性上、乳がんだと担当医師の性別を気にする患者さんもいるのだと気づいた。
看護師さんは、病院名と予約時間が書かれたメモを私に渡し、最後に声を落とし囁くように耳元で告げた。
「診察はワンピースではなくて、セパレートになっている服の方がいいですよ。恥ずかしい思いをしなくていいから。」
診察のことを考えて、本当はロングワンピースの下にもう一枚スカートを履いていたけれど、看護師さんの気遣いがありがたくて、黙って頷いた。
看護とは患部や治療だけではなく患者の全体に気を配ることなのだと改めて感じた。
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