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#雑記

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雑多なこと、雑多なもの
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#読書感想文

私のうすいうすい辻村深月遍歴

2024年に『かがみの孤城』『闇祓』『傲慢と善良』の3つの辻村深月作品に初めて触れました 初めに読んだのは『かがみの孤城』です 2018年(第15回)の本屋大賞受賞のとても有名な作品です 本を読む習慣のなかった中1の息子に、何冊かの本をまとめて贈ったときにこの本も含めたのだが、結果的に贈った本の中で唯一息子が読み終えた本となりました あとから分かったことなのですが、この本は家にもう1冊ありました 上の息子が小学生のころに自分のお小遣いで買っていたようです 一度図書館で借

鳥のように飛び立ちたいと願う自由もあれば、巢ごもって誰からも邪魔されまいと願う自由もある 年越し安部公房の消化

2024年は安部公房の生誕100周年の年で、遺作となった『飛ぶ男』のオリジナル原稿が文庫化されたり 『箱男』が映画化されたり 神奈川近代文学館にて安部公房展が開催されたりしました また、私にとって『砂の女』は特別に好きな本の一つです 昨年の11月頃、安部公房展への訪問を前に、予習だが復習だかを兼ねて、もう一度『砂の女』を読み返したいと思い書棚から文庫本を手に取りました 通読するのは3度目です しかし、結局展示期間の都合により、読み終わる前に安部公房展を訪れることにな

Audibleでデビューした東野圭吾は定評通りの面白さだった

現在、Audibleのサブスク契約中なので、ここのところながら聴きが習慣となっています Audibleだと、自分がいつも読んでいる本とはちょっと異なった指向の本も気楽に聴けるのがいいです 少し前の話ですが、小春日和の暖かな日に妻を散歩に誘ってみたのですが、家から出たくないとことで断られてしまったので、買い物がてら一人で近所の公園に散歩をしに行こうと、3時間程度で聴ける読み物(聴き物)を探しているときに目についたのがこちら ミステリー作品はあまり読んだことがなく、シャーロッ

読まずじまいだった『二十四の瞳』はみんなが読むべき良書だった

私と同世代の40代の皆さんは、当たり前に「二十四の瞳」に触れて育ったのでしょうか? なにかの推薦図書の一覧で何度も見てきたと思うのですが、それほど読書好きではなかった私は、この年になるまで読んだことがありませんでした 普遍的なテーマを扱った物語のためか、何度もテレビドラマや映画にもなったようですが、それらの映像作品も一度も見たことがありませでした なんとなく戦後の貧しい時代を背景とした物語のイメージはあったのですが、火垂るの墓とか、白い町ヒロシマのような物語は、ある程度

生きることから何を期待するかではなく、むしろひたすら、生きることが私たちから何を期待しているかが問題なのだ

『夜と霧』を初めて読みました 読んでいる方がとても多い本で、自分への戒め(?)として、定期的に読んでいるなんて人も多い本のようです 私も自分なりの解釈で腹落ちをさせ、生きる糧にしたいなと思ったのですが、なかなか素直に受け取り切れない部分もあったりして、解釈に迷いました そんな私の読書感想文です 印象的な文書はいくつもあったのですが、象徴的なのはやはり、生きるということに対する、以下のコペルニクス的転回(言い方がかっこいい)の部分だと思ったのですが.… いやいやいやいや

30年ぶりの角川スニーカー文庫『誰が勇者を殺したか』を読んで、あいつの事を思い出す

この本の存在はこちらの記事で知りました なんと想像力を掻き立てる魅力的なタイトルでしょう、読む前からすでに著者に一本取られた気分です  ロトの称号を与えられるのも、お姫様と結婚をするのも、国民からの誉を一手に受けるのもすべて勇者であり、他のメンバーは引き立て役に過ぎません、そこに妬みの感情が芽生えたとしても不思議ではありません また王家の側にしても、気前のいい約束をしてしまったものの、どこの馬の骨かもわからない戦士に、姫や王位を譲ることに躊躇し、魔が差したとしても不思議

少年カフカに胸焼けして、村上春樹と新海誠とフェミニズムについて感じたこと

前回に続き、Audibleで村上春樹の海辺のカフカを聴きました こちらもおよそ四半世紀ぶりの再会です 四半世紀ぶりに読んだノルウェイの森は随分と印象が違ったのだけれど、海辺のカフカに関しては、さほど印象の違いはありませんでした ただし、ノルウェイの森が思っていたよりも淫靡ではなかった一方で、海辺のカフカは思っていたよりも淫靡でした それから、初めて読んだときには、現実社会の物語の中に、突如として現れる超非現実的なシュールな展開(魚が空から振ってきたり、猫とおしゃべりをした

成瀬あかりのお仲間たち

数年ぶりに会う中学生になった甥っ子への手土産の本を選んだ時の話。 自分の息子にも誕生日のたびに何冊かの本を選び、これまでに20冊ほどは贈ってきたが、私が知っている限り本人が読んだのは2冊だけ。 夏目漱石や芥川龍之介やレイチェルカーソンなど、新潮文庫の100冊から選んだり、星を継ぐものや電気羊などの定番のSFだったり、哲学や経済学や地政学や建築学やアートや法律や気候などに関する年相応の推薦図書だったり、自己啓発っぽい論理的思考とかレポート作成術みたいな実用書だったり、その時そ