2024年第49週厚労省定点分析と評価・第50週直近予測と2024-25冬季12th Surge情報
1.基本情報
今回の定点は、2024年49Wであり、
定点 2024-49W
診断日 11/25~12/1
接触日 11/20~11/27頃
報告医院数 4,937
である。49Wは、暦効果ほぼ中立である。
2.概況と2024-25冬季12th Surge
43Wから48Wを起点としてすべての都道府県で24-25冬季 12-1st Surgeが成長中である。
発現時期は、東日本から中国と四国の半分では、ほぼ23年並であるが四国の半分と九州では、半月から一ヶ月早く発現している。
12-1st Surgeの支配株は、XEC*である。XECの病態については、6週間先行する欧州を中心に臨床症例報告が発信されているので臨床先行知見は欧州、北米から得られる。
12-1st Surgeの極大期は、北海道・東北の早い地域では、12月下旬、大部分の都道府県では、年末年始から25年1月上中旬の見込みである。沖縄県では、1月中下旬となる見込みである。
12-2nd Surgeの次期支配株としては、LP.8*などが検出されており、25年2~3月に極大期をとると予測される。
外気温が下がれば暖房の為に窓を閉める。とくに公共交通、幼保学校といった日本における感染連鎖の中心では窓閉めと換気の不活発化が急速に進み、感染性エアロゾルの滞留からの感染機会が増加してゆく。
外気温と空調、換気の関係が日本における夏季、冬季季節性COVID-19 Surgeの大きな要因となっている。これは、日本において相変わらず旧態依然とした既に世界の医学・医療では否定されている飛沫感染限定説が教条となっており、空気感染対策が事実上なされていない為である。
定点1.0未満の当道府県は、下記3県と48Wと同数である。
和歌山県
鹿児島県
沖縄県
KP.3.1.1に次いで日本株KP.3.3が欧州に持ち込まれKS.1.1と組み替え体となったXEC*が日本でも支配株となっている。
春季のXDQ Surgeと同じくKP.3.1.1による明示的なSurgeは生じず、11th Surgeの減衰を妨げるという影響に留まった。
東大医科研佐藤らなどの報告では、XEC*は、KP.3免疫の回避能力がKP.3.1.1などより高いとされる。現在の日本での環境にXEC*は強く適合していると考えられる。同じく佐藤らにより、JN.1 第五世代ワクチンは、XEC*に対して実用的有効性が残る事が報告されている。
牧田は、継続して武田・ノババックスのJN.1たんぱく質抗原ワクチンを推奨するが、供給が極めて少ない為、隣県での越境自費接種例が多数報告されている。
高齢者などの高リスク群では、次善としてファイザーと第一三共のmRNA系でもやむを得ない。
なお、モデルナ、コスタイベなども希望者が接種する事は妨げない。治験を経ている薬剤であり、「しぇでぃんぐ」といった根拠のない仮説については、一切考慮する必要はない。
3.二週間気象予測(気象庁より)
47W後半から強い寒気に覆われて以降、日本は全域で冬の気候となっている。九州でも終日暖房が必要となっている。
沖縄県を除く日本全域で換気が強く抑制され12-1st Surgeの成長に好適条件となっている。
沖縄県と小笠原を除き日本全域で冬季Surgeに好適な条件となっている。この状況は、2月末まで継続する。
九州以北、北海道以南では、定点の挙動は、一週間ほどの遅行日数で先行指標である気温と極めて強い相関がある。
4.休日効果補正の導入について
厚労省定点は、一週間当たりの定点医院での集計であり、休診医院が大多数を占める祝祭日による休日の追加によって一週間の診療日が減少するため、定点数値が10~20%の過小評価となる。
これは、成長率評価・予測を大きく狂わせ且つ、影響が長期に及ぶ。
これを補正するために下記の通り休日効果補正係数を導入した。
定点値×7/(7-n)×0.9 n:祝祭日によって追加される休日日数
1)土曜日が祝祭日の場合は、影響が5%前後であるため無視している
2)0.9は、救急外来、休日外来、休日当番医院の効果を経験的に数値化したアドホックな係数である
3)数値化が困難な年末年始と盆休みについては補正をしていない
4)岸田ドクトリン本格化の23年19W以降について補正している
5)2類であった23年18W以前の定点試行期間(全数からの換算)については補正の要がない
6)地域による補正係数の違いは無視しているが、概ねあっている
現時点では、年末年始とお盆休みについては、変数の定量がが困難であるため休日効果補正を行っていない。これは、休日診療当番医院の代休が前後に週間に分散する為もあり複雑すぎるためである。
土曜日休日については、土曜日午前中診療としている個人開業医が休診となるが、定点への影響は軽微であるために現在は補正していない。
5.倍加・半減期の導入について
当初より懸案事項であった定点の倍加・半減期を導入した。
直近値、二週間移動平均値、4週間移動平均値で倍加・半減期を評価しているが通常は、休日効果補正後の定点二週間移動平均からの倍加・半減期を用いている。
定率変化を継続するとして倍加・半減期の3.3倍が、10倍または1/10になる所要期間である。
日本においてSurgeの収束期間は3ヶ月前後であり、半減期が3.5Wより長ければ一桁減衰できず、収束不全となる。減衰期間全体での平均半減期が3Wより短ければ4半減期で1/16の減衰となる。平均半減期2.5Wならば12週間が4.8半減期で1/28となる。
収束不全の場合、Baselineは、Surgeが繰り返されるたびに上昇してゆくこととなる。
牧田は、研究者の思考が入ることにより恣意的変数となっている実効再生産数を21年後半から22年初頭以降、使用していない。これは、牧田の評価・予測手法の原型であるロスアラモス国立研究所による成長率評価・予測法と同じである。
自然現象としての感染者数の評価・予測には、単純に倍加・半減期を用いる事を科学的・数理的評価には、強く推奨する。実効再生産数を用いる事はむしろ有害である。
なお、病院内の事象評価として実効再生産数は、便利な変数である。また、政策的効果を視覚化する為にも便利な変数である。
実効再生産数は、あくまでポリシーの視覚化と評価の為の医学変数であり、科学とは無関係である。
この点で実効再生産数とは、基本再生産数とは本質的に異なる変数である。実効再生産数を科学的議論に用いるべきではない。
6.厚労省定点検出下限値
医療機関あたり定点値の検出下限は、報告医院数の逆数である。
検出下限 0.002~0.040
但し、検出下限値に近づくと精度が非常に低下する為、実用検出下限値は、目安として検出下限の10倍である。
実用検出下限(目安) 0.02~0.4
多くの都道府県で検出下限は、0.015~0.025に集中しており、実用検出下限は、東京・大阪などの例外を除き0.3程度と考えれば良い。
このため人口の少ない県では、定点0.8を割り込むと急減してゆくように見えるが、実際には定点観測の定点過少からの感度不足である。同様の効果は、2021年秋季の全数把握において全国で見られた。
7.厚労省定点の注意事項
厚労省定点は、発表日前の月曜日から日曜日までの1週間集計である。
故に発表日時点で5~11日遅延している。
さらに接触日を基準とすると発表日時点で9~16日遅延している遅行指数であることを念頭に置く必要がある。
加えて23年5月、23年10月、24年4月にCOVID-19医療制度が診療抑制へと大きく変更され、とくに24年4月変更では極めて苛烈な診療抑制制度が導入されている為、厚労省定点自体が連続性のない指数であることを前提におく必要がある。
現在、診療抑制政策による統計のゆがみを補正する係数を検討中であるが、現時点では、厚労省定点値をそのまま用いている。
現時点で換算係数は、2倍から5倍と見込んでいる。地方・都道府県ごとに医療体制がことなり、地域ごとに換算係数は異なる。
定点飽和点から評価したCOVID-19医療体制は、明確に西高東低であり、九州が最も頑強である。最弱は、東京都・周辺県である。
定点医院数について2023年からの評価を行ったところ、24-33Wなど盆休み等では定点の減少が著しく、2024年32Wと33Wでは-8%と同等の減少であった。
定点は、事後遡及してかなり大きな修正が入っており、速報値のみでは正確性を欠く。感染研発表のやや遅れた週報が暫定確定値となるが、これも確定値は言い切れない。
なお、人口あたりの定点医院数には大きな揺らぎがあり、西高東低である。
例として東京都では、大阪府や福岡市など西日本の大都市と比較して人口あたりの定点医院数が大幅に少ない。これによる厚労省定点への影響を評価する必要がある。