昼飲みのカクゴ
休日、昼間から酒を飲む。
殆ど経験がないが故に、特別なことである。
よって、ぼくはそこに強い強い覚悟を以て臨む。
その覚悟のために、準備を進めるのだ。
1.午前のうちにやることなすことを全て終わらせよ
必然である。
飲んだ後「トイレットペーパー買い忘れた!」となると
途端にGAMEOVERだ。飲酒をした身体で車には乗れないし、かといって歩いてペーパーを買いに行くというのは軽装で登山に挑むようなもの。
テンションは下がり、数分前の軽率な行動を取った自分の顔を、親でもわからなくなるほどに殴りたくなる。
掃除ヨシ、洗濯ヨシ、買い物ヨシと指差呼称をし、オールグリーンになって初めてスタートラインに立てるのだ。
2.飲む酒を選べ
昼飲みは「お大尽」と「落伍者」の紙一重だと思っている。
昼間から酒を飲める身分であるお大尽様ならよいが、昼間から飲んだくれている落伍者にもなりうる。
飲む量、酒類、ペアリングを決める。ぼくは落伍者並の給与しか得られずとも、今この瞬間だけでもお大尽になりたいのだ。
3.覚悟を決めろ
決めるのだ。何が何でも。もうここで終わってもいい。俺の休日はこの瞬間終わるのだ。
そもそも酒を飲めば思考は鈍り何をするにも強い負荷がかかる。
会社から電話が来ても知るか。もう徹底的に無視をする。寝たふりでもしておけばいい。
俗世との今しばらくの別れだ。気合いを入れ、立ち上がる。
我が家にはビアサーバーがある。8Lのタルには、シンガポールが誇るピルスナービール『タイガー』が入っている。ラガーに近いコレは、ほんのり暑さが残る今時期にちょうど良い。
黒いレバーを手前に引くと、勢いよく注がれる黄金色の冷水。
フライドコーンと一緒に頂く。
キンキンに冷えてやがるありがてぇコレは、休日をしてなお忙しなく家事をしたぼくの喉を冷たい刺激と共に潤してくれる。
あぁ……世の労働者が汗水を垂らしている中、ぼくは今酒を飲んでいる。
何ということだろう。世の理に反し、享楽を貪っている。
これは怠惰であり、中毒だ。
たまに、たまに。
これを続けていれば、自分は人でなくなり、何かになってしまう。
強烈な眠気の中、今この話を書いている。
次に目覚めたときは夕方になり、並々ならぬ後悔と共に目が覚め
なんと言うことだ、眠ってしまったと落胆するのであろう。
だからこそ、ほどほどに。
次の昼飲みは、せめて一週間後にしよう。