#2 アトピーでも外食を楽しみたい
地方に来てから、アトピー再発。
東京時代よりも、健康的な食事をしていたにも関わらず、身体中の皮膚がカサカサに、我慢できない痒みと痛みに襲われました。あの忌々しい、アトピー性皮膚炎が再発したのです。
ある程度の原因と対策はわかっていたのですが、今度の場合は、複雑で根が深そうです。過去の経験や本などを参考に、自分で人体実験を繰り返し、記録を取り、原因らしきこと、対策の仕方はある程度わかってきました。
<アトピー性皮膚炎になりやすい体調>
腸内環境が良くない。精神的ストレスが溜まったり、身体が疲れていて、心の底から元気が湧いてこないとき。
<食べると良くないもの>
化学調味料(アミノ酸等)/古い・使いまわした油/砂糖・食塩や小麦粉など化学精製したもの/保存料や防腐剤など
アトピー性皮膚炎は、いわゆる食物アレルギーとは、根本的に違います。腸内の壁を通り抜けてしまった化学物質や過剰精製物が身体に蓄積しないよう、皮膚から排出しようとする自然な働きなんだと私は信じています。科学的な根拠はないので、詳細は割愛します。
身体がこんな状態になると、外食に期待することは「美味しい」ことよりも「安全」とか「健康」とか、もっとフィジカルなテーマになります。
例えば、旨味は自然の出汁を、塩は天然で精製していないものを、油は新しいものを、小麦は国産で過剰精製しないで、野菜は有機栽培で、ワインは少量の防腐剤添加のもので、醤油だってアミノ酸添加していないものを…。
こんな条件を満たした飲食店は皆無です。しかし、料理の美味しさを追求すると、結果的にここに行き着くような気もします。もちろん、原価率は高くなりますが、その分値段が高くても良いという、私のような人が世の中には沢山おります。
私たちは、外食への希望を持てなくなり、徐々に外食から足が遠のき、その代わりに、家庭での食事を楽しむ方向にシフトしていきました。こういった経験が、食べることへの興味を加速させました。
外食ではなく「ソト食」がいい。
現在、一般的に使われている「ガイショク」という響きに、私は怖い印象を持ちます。これは自分の身体の都合によって、外食を心から楽しめないという事情があるからでしょう。
戦後、日本がまだ貧しかった時代、家の食事が貧しいことを前提に、外食が贅沢なことでワクワクする体験だった、そこに原点があるような外食文化を私は好きになれません。
とにかく生きるために食べる、そんな時代の国民の食事を支えるために、農産物を早く大きく育てる手段として、化学肥料や農薬が沢山使われました。それはその時代で必要な手段だったと思います。
しかし今は、単に効率化と経済優先、ビジネス的に強い農業をつくる手段に置き換わっています。化学調味料も、ほぼ同じような時代背景に生産・消費拡大していきました。
経済大国になった日本は、外食を謳歌しました。今や世界屈指のグルメ王国です。多くの人は「外食は当然のようにそこにある」と思っているはずです。ありがたくもなんともない。金を払えば食事が出る。昨日まであった店が潰れても、また次の店がオープンする。
なんとなくですが、「飲食店を自分より下に見る」という雰囲気が、社会に蔓延しているように感じます。よほどの高級店ではない限り、客が店員を雑に扱う、客として偉そうに振舞う人は少なくありません。
あぁ、キリがありません。この辺りにしておきます。
以上のような思いがあって、今まで積み上げてきた日本の外食文化をあまり好きになれません。「ガイショク」と聞くと、未来に、希望の光を見出すことができません。
ですから私は、あえて「ソト食」という言い方をしたいです。こっちのほうが、しっくりきますし、愛着を持てます。豊かな文化を育む余白のある響きです。
妻よ、ありがとう。
移住する前は、富山で外食三昧している絵を想像していましたが、今は、家での食事が大半を占めています。
たまには外食の会合もあり、妻と一緒に外食することもあります。しかし、気軽に利用できる場所に、健康志向で天然素材にこだわるような飲食店は、ほとんどありません。
不本意ながら、外食が続いてしまった時期は、身体がダメージを受けた分の回復が必要です。アトピーの方ならわかると思いますが、一度スイッチが入ったら、数か月のリハビリが必要ですし、集中力も下がります。
そんなときは、妻がいつにも増して、生命力溢れる食材を駆使し、パワフルな安全で美味しい料理をつくってくれます。同じように働いているのに、この面倒なヤツのための食事をつくってくれる妻には、いつも感謝をしています。妻は、命の恩人です。
たまにしか料理をしない私が、外食だの、料理だのと言っているのを見ると、妻は間違いなく笑うでしょう。しかし、食べるプロという立場の人も必要です。きっと、社会の役に立つはずです。
ちなみに、食材に関する我家の基本方針は、こんな感じです。
野菜:すべて国産かつ可能な限り富山県産、旬を大事にする
有機・自然栽培を探すが、全部は不可能なので妥協する
魚介:ほぼ富山の漁港で揚がったもの
時間があるときは地元の魚屋で買う(家は漁師町にあるので)
肉類:牛肉は食べない、国産の特定の鶏肉を中心に、たまに県産の豚肉
加工肉は添加物が多いので極力食べない
発酵:特定の味噌、醤油、塩こうじ
麺類:国産小麦(あれば有機栽培)、極力食べないようにする
お米:県産の有機か特別栽培米のもの(農家で選ぶことも)、沢山食べない
出汁:こんぶ、かつおぶし、にぼし、他、料理に応じてしっかりと
調味:自然精製の天然塩、酒、有機レモン、など
油類:有機オリーブオイル
酒類:特定のビール、オーガニックかビオワインで防腐剤少ないもの
その他:とにかく季節のもの、味噌や納豆を毎日食べるように
もともとだったのか、仕方なくそうなったのか、経緯もよく覚えていませんが、今では、妻のほうが積極的に安全・健康志向の食材にこだわっています。というよりも、美味しい料理をつくろうとすると、結果的にそうなるんだと思います。
例えば、塩です。塩はしょっぱい味付けのために必要な調味料ではありません。化学精製していない自然製塩は、食材と交流して、足し算、引き算しながら美味しい料理になるよう貢献してくれます。
自然製塩を入れるタイミングによって、野菜だけの料理に、動物性たんぱく質のような旨味を感じることがあります。つくるほうのコメントではなく、食べるほうのプロは、そう感じます。
旨味は、コンブやかつお節から出汁を取るだけではなく、色々なものから引き出せます。ただし、商業的に天然の旨味をつくるのは手間です。それで考えられたのが、昭和の大発明、旨味調味料「アミノ酸等」です。
ファミレスでハンバーグを食べても、弁当屋でから揚げを食べても、ポテトチップスを買って食べても、同じような味がするのは、多くの食品に旨味調味料「アミノ酸等」というものが入っているからです。
私の場合は、アトピーという症状が出てしまったことで、強制的に脱化学調味料にシフトせざるを得なかったのですが、もし毎日のように受け入れてしまうと、味覚がバカになってしまいます。
本当に美味しい天然の旨味のバリエーションを舌が感じなくなるんじゃないかと危惧しています。