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10. 放電特性カーブの見方

リチウムイオン電池の放電特性は諸条件で大きく変化します。

主な条件としては電流値、環境温度、充放電サイクルを経過したことによる電池の劣化があります。

 電池メーカーはこれを示すために、以下のような評価を行っています。

放電レート特性

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横軸は放電容量もしくは放電時間(定電流放電ですから、結局放電容量を示しています。)、縦軸はセル電圧とし、放電温度は一定で、放電電流をパラメータとしたグラフになります。

 通常示されるグラフは、放電温度20℃において、放電レートが0.2Cと1Cです。

 1Cとは公称容量値の容量を有するセルを定電流放電して、ちょうど1時間で放電終了となる電流値のことで、たとえば2.2Ahの公称容量値のセルでは 1C=2.2Aとなります。

 0.2Cは公称容量値の容量を有するセルが5時間で放電終了となる電流値で、上述の2.2Ahの公称容量値のセルでは0.44Aになっています。

 0.2Cは電池メーカーが電池容量を規定するのに一般的に使う電流値です。

 電池は大きさによって容量値が決まり、電池特性は電流の絶対値ではなく、容量値に対する相対的な大きさで決まります。 

したがって、電池特性を示すにはC値(放電レートを示します。)を用いた相対表示が便利で、使われています。

放電レートが大きくなると電池の電圧が低下していきます。これは基本的にはセルの内部抵抗による電圧のドロップです。


放電温度特性


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横軸は放電容量もしくは放電時間、縦軸はセル電圧とし、放電電流は一定で、放電中の環境温度をパラメータとしたグラフです。

放電温度によらず、充電は20℃で満充電を行っています。


通常は、放電レートが0.2Cで、温度が20℃と、仕様書で規定している放電温度範囲の上限と下限値でのデータを示すのが一般的です。

 温度が低温になると、セル電圧は低下していきます。

高温側は20℃のデータとほとんど同じです。


低温側で電圧が低下していく原因を簡単に言うと、放電中のリチウムイオンの移動が低温では動きにくくなり、 これはセルの内部抵抗が上昇したことになります。

このため、電圧ドロップが増加して電圧が低下するものです。

放電レートでの説明もあわせて考えると、リチウムイオン電池は、低温でハイレート(大電流)放電のときに電圧ドロップが大きくなります。 

通常、セル単体では放電終止電圧を2.5Vとすることが多いのですが、 しかし、2.5Vから電池パックが放電を禁止して放電を止めてしまう2.3Vまではほとんど容量がなく、 大電流で使用していれば非常に短時間で電池パックが放電を止めてしまいます。

このため、 リチウムイオン電池を使用するセットでは、セット側で電池パックの電圧が3V程度になったときに電池残量が0であると判断するのが一般的です。 (携帯電話では3.2Vを放電終止電圧と見ることが多いようです。) 

したがって、低温側でセル電圧が全体に低下していくと使える電池容量は大きく減少していきます。


このため、セルの選定に当たってはセットが使用される最低電圧で、かつセットが必要とする最大電流で、電池容量がどうなるかを見なければなりません。

 しかし、ここでマージンを大きく見ると、電池が大きくなり、コストも、サイズも、重量も増大していきますので、慎重な検討が必要です。

一般的にはセル特性はあまり詳細なデータまでは公表されていませんが、 必要であれば、特別な環境温度や放電電流のデータを取得することになります。

 特に、電流に関しては通常、一定電流で放電させることはなく、時間とともに変化する電流パターンを有しています。

その電流パターンをシミュレートして、電池の使用可能時間を見積もることもできます。

上図において、-20℃の放電パターンの放電開始直後に、電圧が急激に低下し、その後しばらく持ち直す挙動を示しています。

これは温度が低いほど、また、電流が大きいほど顕著に現れる現象です。

電圧低下が止まる原因は、放電電流によって、セル内部で抵抗損による自己発熱があり、これによりセル温度が上昇することによって、電圧値が上昇するためです。

したがって、これは連続放電を行っている場合の特性を示しています。

間欠的な放電では挙動が変わってきます。

-20℃で放電をさせることは、一般的には多くある状況ではありません。

特にわが国における都市圏においては-20℃という環境温度はまずありえません。

何故、低温特性が着目されるかという理由は、筆者としては次のように考えています。

低温特性は特にいろいろな電池メーカーで特性が異なるものです。

一般的には低温特性がよいほど、セルの特性がよいといわれています。

すなわち、低温での放電の際の電圧ドロップが小さいということは、セルの抵抗値が小さく、大電流放電させた際のセルの温度上昇が小さく、長時間連続的に大電流放電を行えるセルであることを示しています。


サイクル特性


電池は充放電を繰り返せば、当然劣化していきます。

通常はその程度を示すために、 サイクル特性として、室温で1C充電と1C放電を繰り返したときの容量値の推移を見ます。

 充放電サイクルにより、セルの内部抵抗も増大していくため、単純に容量が低下するだけでなく、 放電レート特性や放電温度特性についても変化していくことが推定されますが、それはサイクル後のサンプルを実測するしか方法はないようです。

セルのメーカーがカタログなどで公表しているデータは多くの場合、室温で1C充電、1C放電のサイクルを繰り返したときの容量を示しています。


メーカーは通常0.2C放電のときの容量で仕様書上の容量を規定していることにより、1C放電の容量値では0.2C放電に対して、容量値を少なく見積もっていることになります。

 しかし、0.2C放電でサイクル試験を行うと、放電時間が5倍になってしまい、データ取得に非常に長い時間がかかってしまいます。


このため、サイクルは1C放電で行い、0.2C放電を定期的に(通常50サイクルごと)行う方法がとられております。

 サイクル試験結果をプロットした図を見ると、50サイクルごとに容量値の大きなデータが繰り返しており、 そのデータをつないで見ることにより、0.2C放電のサイクルを行った場合のデータが得られます。


実際には、0.2C放電サイクルより1C放電サイクルのほうがセルの劣化率が大きいので、 厳密には寿命特性を厳し目に見ていることになりますが、それ程の差はありません。

電池が有するべき性能に関して


電池に関しては、一般的には電池メーカーから非常に限定された条件のデータしか公表されていません。

しかし内容がわかった上で、いろいろなメーカーのデータを比較すると、いろいろなことがわかるものです。

追加のデータ取得は大きなコストがかかります。

セルに対して要求する性能は、コストがいくらでもかけられるならば、難しい要求をすることはできます。

しかし、低温で大電流放電させるためには非常に大きな電池を、低電流で使うことになり、コストも、サイズも、重量も実用的ではなくなります。

セットが有するべき仕様、性能を見直すと、電池に対する要求を緩和できることがあります。例えば、セットとして性能を保証する環境温度範囲は実際問題としてどこまで必要なのでしょうか。

寒冷地の屋外で使うものでない限り、低温側はたかだか0℃で動けば問題が無いケースが多いはずです。

最大電流はどれだけの時間継続するのでしょうか。

例えばモータを駆動する場合には起動時に大電流が流れます。

しかしその大電流は回転が立ち上がれば小さくなってゆきます。

ピークの最大電流値は電池パックの設計には必要ですが(保護回路が有する過電流保護の設計に最大電流値が必要です。)、電池が有するべき容量値の検討にはほとんど必要ではありません。


弊社はお客様と一緒になって、低コストで実用的な電池パックを検討、設計することをお約束いたします。


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*2006年当時のお話をもとにしております。

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