【漫筆】その道を知れる者
現代は、人の能力が最も貴重なリソースです。
「徒然草」には、しばしば「その道を知れる者」として、身分にかかわりなく専門の職業・技能に通じた人々が登場します。
現在から見ても、そのひとつひとつが、納得のいく知恵を提供してくれます。
例えば、あえて切れすぎる刀を使わず、少し鈍い刀を選んだ工匠。
登った木から降りる時、高所よりもむしろ軒ほどの高さの方が油断して事故が起こりやすいとした植木職人。
さらには、勝負の秘訣として勝つよりもまず、負けないことを念頭に次の一手を考えた「双六の上手」。
「万に、その道を知れる者は、やんごとなきものなり」の言葉が示す通り、「徒然草」の魅力のひとつは、自分の力で身につけた技能こそ、後々まで伝えられて行く価値があることが明快に説かれているところにあります。
これら達人の群像は、遁世したものの世間の動向が気になって仕方がなかった兼好にとって、自分の洞察力を磨く時、絶えず手許にあったはずです。
このことから、達人と素人の違いは、特定の専門分野で一生上達するために、考えぬいた努力をどれだけ行ったかの違いなのではないかと考えられます。
そして、それは、習うより慣れろという練習すればうまくなるという考え方ではなく、むしろ高度に具体化された究極の鍛錬という以下の考え方に基づいていると思われます。
①実績向上のために、特別に考案されている。
②何度も繰り返すことができる
③結果へのフィードバックが継続的にある
④精神的にはとてもつらい
⑤あまりおもしろくない
地味な作業や繰り返しを疎うことなく。
楽しみや成長を見い出せる謙虚さを持ち続けること。
但し、日々の鍛錬の中では、自分が一番下手だと思い、精進をやめないこと。
しかし、いざ舞台に上がる時は、自分が一番だと思い、堂々とやり抜くことができるようになれればいいよね。
これは、プレゼンテーションや日々のルーティンワーク、接客や身近な人に接する時など、仕事やプライベートの場でも実践することが可能です。
そう、人前に立つ時。
自信と驕りの線引きは難しいけど、謙虚さや身の周りへの感謝の気持ち(喜びを与えられるよう勤める)を、常に振り返ることで気が付けると思います。
毎日、何かの舞台にたっていると思い。
人としての「たしなみ」を持って臨みたいですね(^^)
前日のドレス・リハーサル(振り返り等)を忘れないようにしないと^^;
「この世は舞台、人はみな役者だ」
All the world's a stage,
And all the men and women merely players.
出典:シェイクスピア
【BGM】
Carolyn Dawn Johnson「Dress Rehearsal」