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【LAWドキュメント72時間】「裏声」のエロス
■裏声が綺麗な洋楽♪
切なさや優しい表現で歌える裏声(ファルセット)は、曲をより引き立たせてくれます。
裏声が印書的な2曲を聴いてみて下さい(^^♪
1曲目:Prince & The Revolution「Kiss」
1986年の代表作!というか、一般的に、プリンスと言えば、まず、この曲を思い浮かべるのでは?
普段とは違う裏声を使った独特の歌唱法もインパクト大ですが。
まず、曲自体の出来が良くて、何度聴いても飽きません。
リリース後直ぐに、Age Of Chanceにカヴァーされたり、Art Of Noiseにカヴァーされたのをはじめ、90年代には、ダフパン / Da Funkとのマッシュアップ、その後、Markus Nikolaiのミックスが話題になったりと、やたらとカヴァー、リメイクがされていた人気作なんですよね(^^♪
2曲目:The Hoosiers「Worried About Ray」
英国お笑い3人組!
いやになっちゃうほどELO&スーパートランプ風ハッピーなポップセンスと、独特の高音を転がすような裏声の一度聞いたら忘れられないヴォーカル。
英国ポップ好きには、一度聞いたら、絶対印象に残る曲ですね(^^♪
■裏声はフルートと同じ仕組み?
裏声は、喉の一番深い部分を、少し開き気味にして、発声しているそうです。
ちょうど、フルートのマウスピースの息を当てる穴(歌口)に、唇を密着させず、息をうまく当てることで、音を出すのに似ているとのこと。
裏声の時、あまり喉が振動している感触がありません。
まったく振動させていないわけではないようですが・・・
喉を振動させるというより。
それこそ、フルートのように、喉の深いところを通過する
「息」
「空気」
を
「振動」
させて音にしている感じですだそうですよ。
ここで、ニューヨークの名門レーベル〈DECCA GOLD〉から世界デビューし、国内外から注目を集めているフルート奏者であるCocomiさんの演奏を聴いてみて下さい(^^♪
Cocomi, Atsushi Yamanaka「Take Five」
Cocomi, Niu Niu「Arabesque No. 1」
Cocomi & Kaori Muraji「Sicilienne」
■裏声とは?
裏声とは、地声(表声)に対して、自然な発声では出せない高い音を技巧的に発声する声です。
声帯の筋肉がやや硬くなり振動しなくなりますが、声帯の粘膜部分は振動した状態で発声しているのが特徴です。
裏声を使うと、次のようなメリットがあります。
①普段では出せない高い音域が出せる
②透明感ややさしさ、あたたかさ、せつなさや悲しみ、哀しさなど、より良い表現が可能になる。
③地声で無理に高い曲を歌うとのどを痛める原因になりますが、裏声を使えば無理せずスムーズに歌えるようになる。
裏声の出し方としては、次のような方法があります。
①喉に力を入れずに地声で声を出します。
②徐々に音程を高くします。
③音程を上げながら息を吐き続けると、ある高さで声が自然と裏返る瞬間があります。
裏声は、日々のトレーニングが必要です。
練習方法としては、次のようなものがあります。
①鼻歌やハミングをして、地声から裏声にいく感覚を掴む。
②裏声を出しているアーティストの動画を繰り返し見て、マネをする。
③地声に息を混ぜて、声帯のヒダを少し緩ませる。
④声の出る方向を意識して、スムーズに地声から裏声に切り替える。
■「裏声」に関する読書メモ
「「裏声」のエロス」(集英社新書)高牧康(著)
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[ 内容 ]
裏声のことをイタリアではファルセットというが、これは「偽りの」とか「不正直な」という意味をもつファルソを語源としている。
そのせいか、「嘘っぽい声」とか「真実でない声」といった芳しくない印象をもたれるが、じつは裏声には実生活に役立つさまざまな効能がある。
カラオケ上達、話術改善といったわかりやすいものもあるが、健康増進、ストレス解消、さらには恋愛、セックスまでがうまくいくようになる、という知られざる効能もある。
「幸福に効く」裏声の不思議に迫る。
[ 目次 ]
第1章 「裏声の幸福」恋愛編
第2章 「裏声の幸福」話術改善編
第3章 「裏声の幸福」ストレス解消編
第4章 「裏声の幸福」健康編
第5章 「裏声の幸福」歌唱上達編
第6章 「裏声の幸福」音育編
[ 問題提起 ]
とある外資系コンピュータ企業で部長を務める50代の男性は、夜7時ちょうどにやってきた。
「先生、こんばんは、よろしくお願いします」
外見にふさわしい、渋い低音の声で言った。
しかし、その声は、直後に、驚くべき変貌を遂げた。
ピアノ伴奏に合わせた発声レッスンで、講師が音階を
「ラ~」
「シ~」
とあげていくと、威厳に満ちた部長は、突然、素っ頓狂な裏声を張り上げたのである。
ウィーン少年合唱団のように、
あるいは、森山直太朗のように・・・
ここは、音痴矯正スクール(東京・渋谷区)。
1カ月前から週1回通うこの部長の目的は、福山雅治の「桜坂」を、社内の飲み会(2次会のカラオケ)で歌い通すこと。
「部長、1曲お願いします」という部下からの要望に応えないわけにはいかないのだ。
裏声や高音の発声レッスンによって声帯の筋肉を鍛え、バランスを整えれば音痴は直る、というのがこのスクールの考え。
駆け込み寺のような感覚で、エグゼクティブたちが殺到するため、予約も取りづらい。
この音痴矯正スクールの主宰者が本書の著者である。
音声発声学の第一人者らしく、科学的な理論に基づいて
「裏声で音痴矯正」
を行っているわけだが、本書では、裏声が仕事にも有効と主張しているのである。
[ 結論 ]
裏声が、ビジネスの何の役に立つのか?
プレゼンテーションを例にあげよう。
手塩にかけた自分のプランが通るか否か。
それは何にかかっているか、といえば、一番は、企画の中身、次いで、図版やグラフを駆使したわかりやすいプレゼン資料などがあがるだろう。
しかし、見逃されがちな最大のポイントは、声だったのである。
〈テレビショッピングや実演販売のカリスマがクローズアップされたりするのも、商品自体の良さ以上に、彼らの話術に引き込まれるところが大きいと思います。
その話術に共通することはまず、裏声にひっくり返りそうな、比較的高めの声で語っていることです。
加えて滑舌のよさにも魅力があります。
この滑舌の良さも、裏声によって生み出されるものです〉
せっかく内容が素晴らしくても、それを語る声が、よく聞き取れなければ台無し。
だから、プレゼン原稿の下読みをする際、裏声でしなさい、と著者はいう。(どこで? という問題はあるが)
プレゼンの中に、少しでも、弱点や矛盾点があると、説明を受ける側は、
「待ってました」
とばかりに、辛辣な評価を下すもの。
聞く側は、音楽コンクールの審査員のように、減点方式で、あら探しをする。
そうした敵意や意地悪な視線を和らげ、好意に変えるのも、高い声や裏声だという。
敵意を好意に変える裏声。
そんな思いがけない効果のバックボーンとして紹介しているのが、鳥類の音声研究者、E・モートンの「MSルール」(Motivation-structural rules)である。
<参考資料①>
簡単に説明すると、
「相手を威嚇するときは低く、雑音成分の多い声を出し、逆に相手に対して恐れをいだいているときには高く澄んだ声になる」
ということ。
注目すべきは、この現象が、鳥類一般だけでなく、哺乳類にもみられるということである。
著者は、人類学的なアプローチでも、裏声の効果を語っている。
「牧畜生活」
を営む人々は、長身で、咽頭の位置が低く、音声が低め。
一方、
「農耕生活」
を営む人々は、その逆で、かつ早口な傾向にあると考えられている。
牧畜生活民は、少しでも牧草の多いところへ、家族や親族だけの場所を求めて移動する。
そこは、多くの人とパートナーシップを築くより、せっかく探し当てた場所を、他者から守るほうが大事だ。
そのために必要だったのが、
「敵意のある低い声」
だったと著者はいう。
農業は、作付面積の広狭によって、収穫量や富の度合いが大きく左右される。
より広い土地を開墾するためには、共同作業が、不可欠なものとなる。
つまり彼らは、
〈生活環境によってもたらされた体格に起因しながらも、結果として“敵意のない高めの声”で会話することによって、パートナーシップを構築してきた〉
というわけだ。
無論、ヒステリックな声では、不快だが、その一言一言で勝負が決まる高度なコミュニケーションの場であるプレゼンは、高音・裏声がライバルを出し抜く必殺の技なのである。
裏声と微笑みの関係性についても、著者は示唆している。
霊長類の研究で、
「サルは微笑む」
という報告がある。
サル自身が、命のやり取りにまで発展しかねない争いを避けるために、相手の視覚や聴覚に訴えるコミュニケーション方法のひとつが、
「口角を上げて口を開き、歯を見せて微笑む」
こと。
言うまでもなく、ヒトも霊長類。
微笑みは、営業など通常のビジネスに生かせるだけでなく、ヒトを裏声化する作用をもたらしてくれるというのである。
〈微笑みの表情では、自ずと声質も明るく変化します。
これは、微笑む口の形をつくると、反射として、甲状舌骨筋の働きで舌の位置が変わり、咽頭の位置も引き上げられるためです。
少しばかり口角を上げるだけで、発声される声は明るく、前に響く比較的高い音声となります。
よって、視覚的には敵意のない微笑みの顔、聴覚においては敵意を感じさせない高めの声になり、好意を獲得する機会を得ることもできるのです〉
ちなみに、本タイトルの
「エロス」
は、裏声とどう関係するのか。
疑問に思う向きも多いだろう。
著者は、本書
「サルのことば 比較行動学からみた言語の進化」(生態学ライブラリ-)小田亮(著)
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から、こんな一文を引用している。
「(交尾をするニホンザルの)メスは発情音を発することで他個体の注意をひき、妨害行為を誘発することでオスをふるいにかけていると考えられる」
つまり、メスは、交尾しているのにも関わらず、高い声を出して、他のオスを呼び込み、複数のオスの精子を、子宮内でシャッフルしようとしている。
その中で受精にいたった最も優秀な精子による子孫繁栄が狙いなのだ。
裏声によって、精子競争させる。
専門家は、これを、
「乱交の生物学」
と見ている。
こうした事実を下敷きとして、性交時に、ヒトの女性が発する
「あえぎ声」
にも、そうした意図があるのかもしれないと推察する。
〈女性にとっては高い声がもともとの声、地声〉
だと。
ところが、下記資料の通り、男声は高く、女声は低く、といった、粗く言えば
「声のユニセックス化」
といった現象が進行しているのが現代であるが、
<参考資料②>
人間は、聞こえてくる声の性別を判別をする際に、その声の高さだけでなく、その声の抑揚も判断基準の1つにしているだろうと考えられており、また、その聞く人自身のイメージや基準も、男女の判別をする大きな要因になっているそうだ。
そういう意味も含め、男女に関係なく、
「裏声力」
をつけようと、著者は力説する。
[ コメント ]
この裏声力が、プライベートでも、幸せをつかむ早道になるとは考えにくい。
だが、ストレス対策にも、裏声がいいらしい。
例えば、愚痴を吐き出すなら、
「バーーーカーーーヤーーーローーー」
「フーーーザーーーケーーールーーーナーーー」
自ら発した裏声で、赤ちゃんだったときのようにストレスを瀉出できるというのだが・・・
〈男性は日常的に話す声と(裏声が)大きく異なるので、違和感を強く感じると思いますが、トレーニングを続けていると話し声の音の高さも変わってきます。
とくに音痴の男性の話し声は、もともと音程が低いことが多いので、裏声の訓練によって話し声自体にも音程がつき始め、抑揚が大きくなるのです〉
まずは、のんびり風呂に浸かりながら、こっそり裏声レッスンとまいりましょうか。