
【文学のちょい読み】荒河踊|銀河マリーゴールドシネマ

「つかまえたら はなすんじゃないぞ
みつけたら なくすんじゃないぞ
それは 欲望うごめく
いのちの暗闇なのだから」
映画も映画館もない世界。
旅をしていた青年は、森の中
で「映画館」
と呼ばれる謎めいた洋館と、そこで働く初老の男に出会います。
真っ白なスクリーン、宇宙のような暗闇、誰も知らない100本の奇妙な映画たち。
男が、毎日、地下のフィルム倉庫から選び、上映する映画を観ながら、青年は、映画や映画館というものを、少しずつ体験していきます。
映画を観るという行為のなかで、培われる豊かさと、稀有な時間の経過、すべてを包みこんでくれる、特別な暗闇のこと。
25年に渡り、都内の名画座で、支配人を務めてきた著者の、映画と映画館に対する恩返しがしたいという想いでつくられた物語。
映画館という、ロマンティックで、心踊る空間の記憶が、大切につづられています。
私たちが、主人公の青年といっしょに観る映画は、7本ですが、巻末には、100本の架空の映画のデータが掲載されています。
■教訓
主人公は、孤独に、映画館を守る老館長との交流を通じて、いくつかの重要な教訓を得ます。
この物語は、映画が存在しない世界での少年の成長を描いており、以下のような教訓が、浮かび上がります。
1.映画の力と存在意義
主人公は、老館長との対話を通じて、映画の魅力を知り、映画が持つ力を理解します。
映画は、単なる娯楽ではなく、人々の心を動かし、人生の意味を考えさせる重要な要素であることを学びます。
老館長が選んだ100本の映画を観ることで、主人公は、それぞれの作品が持つメッセージや感情に触れ、自身の存在意義を見出していきます。
2.孤独と共感の重要性
老館長は、孤独に映画館を守り続けていますが、その中で、主人公との交流を通じて、孤独を感じることが、必ずしも、悪いことではないと、気づきます。
孤独は、時に、自己を見つめ直す機会を与え、他者との共感を深めるための土台となることを理解します。
この教訓は、孤独を抱える人々にとっても、大切なメッセージです。
3.夢を追い続けることの大切さ
主人公は、老館長の情熱や映画に対する愛情を通じて、自分自身の夢を、追い続けることの重要性を、学びます。
老館長が、映画館を守り続ける姿勢は、夢を持ち続けることが、どれほど価値のあることかを、示しています。
主人公は、映画館との出会いを通じて、自分の夢を見つけ、それに向かって、進む勇気を得るのです。
これらの教訓は、物語全体を通じて主人公の成長を促し、読者にも、深い感動を与える要素となっています。
映画や映画館が持つ力を再認識させるこの作品は、映画愛好者にとって、特に、心に響く内容です。
■孤独
孤独は、しばしば、ネガティブな感情と結びつけられますが、実際には、自己を見つめ直す、重要な機会を提供することがあります。
以下に、その理由を、いくつか挙げておきます。
1.内面的な反省の時間
孤独な時間は、他者の影響を受けずに、自分自身と向き合う機会を提供します。
この時間を利用して、自分の感情や思考を整理し、過去の経験を振り返ることができます。
自己反省は、自己理解を深め、成長するための、重要なステップです。
2.自己認識の向上
孤独は、自己認識を、高める助けとなります。
周囲の人々からのフィードバックがない状態では、自分の価値観や信念、目標について、深く考えることができます。
このプロセスを通じて、自分が、本当に望んでいることや、どのような人間になりたいのかを、明確にすることができます。
3.創造性の促進
孤独な時間は、創造的な思考を、促進することがあります。
多くのアーティストや作家が、孤独を好むのは、静かな環境が、新しいアイデアや視点を生む、助けになるからです。
自分の内面に集中することで、独自の視点や解決策を、見出すことができるのです。
4.ストレスの軽減
孤独は、外部からのストレス要因から解放される時間を提供します。
このような時間は、心の平穏を保ち、ストレスを軽減する助けとなります。
心が落ち着くことで、自己を見つめ直す余裕が生まれ、より、冷静に、自分の状況を、評価できるようになります。
5.自己成長の機会
孤独な時間を通じて、自分の強みや弱みを認識し、改善点を見つけることができます。
このプロセスは、自己成長を促進し、より良い自分を目指すための基盤を、築くことにつながります。
これらの理由から、孤独は、自己を見つめ直す貴重な機会となり得るのです。
孤独を恐れず、その時間を、有意義に活用することで、自己理解を深め、成長することが、可能になります。