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【読書メモ】「心はプログラムできるか 人工生命で探る人類最後の謎」(サイエンス・アイ新書)有田隆也(著)
「心はプログラムできるか 人工生命で探る人類最後の謎」(サイエンス・アイ新書)有田隆也(著)
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[ 内容 ]
人工生命の研究で、生命の長い進化の歴史をコンピュータで再現するには、進化をデザインしたり、理解できる豊かなイマジネーションが重要です。
本書は、人類最後の謎といえる“心”を解き明かそうと、著者が夢中で取り組んできたビックリするようなアプローチを取り上げます。
[ 目次 ]
第1章 蟻たちの真似をして儲ける話
第2章 進化の力を借りてアートを創る試み
第3章 デジタル生命で進化を研究する時代の到来
第4章 人工生命というムーブメントの本質
第5章 利己的であるからこそ利他性が生まれる
第6章 進化と学習が生む生命と心
第7章 暗闇で不安そうに動くロボット
第8章 計算機の中で心を進化させる
付章 計算機の中で心を進化させる
おもしろロボットFile
[ 問題提起 ]
本書は、タイトルを見ると人工知能に関する本のように見えるが、目次を見ればわかるとおり実は人工生命に関して広く紹介した本。
それでは人工知能(Artificial Intelligence = AI)と人口生命Artificial Life = AL)は何が違うか?
いわゆる人工知能、厳密には本書で言うところの「ふるきよき人工知能(GOFAI = Good Old-Fasioned Artificial Intelligence)」というのは、プログラムを重ねた結果、知能を持つように振る舞うソフトウェアを得ることを指す。
【参考図書①】
「大規模言語モデルは新たな知能か ChatGPTが変えた世界」(岩波科学ライブラリー)岡野原大輔(著)
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「脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線」紺野大地/池谷裕二(著)
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そういうAIは、それゆえ全容が解析可能、すなわち単に知能を持つだけではなく、どういう仕組みで知能を持っているかも理解可能なはずなのだけど、そういう、現在のソフトウェアをそのまま敷衍した形でのAIは今のところはまだないし、作るのもかなり難しそうだというのがこれまでのあらすじ。
それに対し、人工生命というのは、はじめに単純なルールだけを与えて、あとは「環境」にそれを「放って」そのまま「置いて」おく。
このやり方は、設計者が全てを把握しなくていいので研究する方も楽だが、出来上がったものはなぜそうなるのか理解できるものとは限らない。
もっと単純化して説明すると、人口生物の箸の上げ下げまで文句を言う神を研究者が演じるのが人工知能、産みっぱなしで放置する神を演じるのが人工生命とも言える。
どちらが神にとって楽なのかは言うまでもないだろう。
【参考図書②】
「記号創発ロボティクス 知能のメカニズム入門」(講談社選書メチエ)谷口忠大(著)
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「脳は世界をどう見ているのか 知能の謎を解く「1000の脳」理論」ジェフ ホーキンス(著)大田直子(訳)
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「タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源」ピーター・ゴドフリー=スミス(著)夏目大(訳)
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「意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論」ジュリオ・トノーニ/マルチェッロ・マッスィミーニ(著)花本知子(訳)
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[ 結論 ]
本書を読むと、単純なルールでも端から見て知能があるのではないかという行動を示すようなモデルがいくつもあることに改めて驚く。
特に面白いのは、一見ややこしそうな利他的行動も、単純なルールと適切な環境の「合わせ技」で現れてしまうことだ。
本書では有名なアクセルロッドのしっぺ返し戦略だけではなく、利他的行動を示す他の戦略も登場する。
本書は人工生命の世界を深くよりも広く紹介したものなので、あらすじを要約できるタイプの本ではない。
その点でも本書は人工知能的であるより人工生命的であり、全部頭から読まなくても、各章をざっと読んで、あとは自分でプログラムを書いて遊んでみるという使い方があっているように思う。
そう。
人工生命は、実に簡単に作れるのである。
【参考図書③】
「問いの編集力 思考の「はじまり」を探究する」安藤昭子(著)
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「High Conflict よい対立 悪い対立 世界を二極化させないために」アマンダ・リプリー(著)岩田佳代子(訳)
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「世界観のデザイン 未来社会を思索する技術」 岩渕正樹(著)
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この簡単に作れることとそれが思いもかけぬ結果を生み出すことこそ、人工生命研究の醍醐味なのだろう。
それは研究者でなくても、「Game of Life」の「Glider Gun」を見ているだけで感じ取ることができる。
なお、「Game of Life」に関しては、本書よりももう少し古くて狭いけど、さらに深い「ライフゲイムの宇宙」があるので、余裕があればあわせて読んでおきたい。
「ライフゲイムの宇宙」ウィリアム・パウンドストーン(著)有澤誠(訳)
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それらを勘案すると、「心はプログラムできるか」というのは、人工知能的でちょっとミスリーディングなタイトルだ。
「コンピューターに心は生まれるか」とかの方がよかったかも知れない。
本書はそのタイトルから想起されるほど難しい本ではない。
もっと簡単で、もっとリラックスして読むべき本だ。
それでいて、「もっと深く知りたい」という人にも親切で、例えば参考論文は巻末ではなく章ごとに紹介されているし、新書でありながら索引もきちんとある。
【参考図書④】
「「複雑系」が世界の見方を変える──関係、意識、存在の科学理論」ニール・シース(著)西村正人(訳)
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「現象が一変する「量子力学的」パラレルワールドの法則」村松大輔(著)
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[ コメント ]
とても200ページちょっとの本とは思えない読み応えで、その意味では、お買い得だった一冊の一つだ。
生命に興味がある人は、ぜひご一読を。
【参考図書⑤】
「コンピューター誕生の歴史に隠れた6人の女性プログラマー 彼女たちは当時なにを思い、どんな未来を想像したのか」キャシー・クレイマン(著)羽田昭裕(訳)
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「ひと目でわかる プログラミングのしくみとはたらき図鑑」(イラスト授業シリーズ)渡邉昌宏(監修)山崎正浩(訳)
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「決定版 コンピュータサイエンス図鑑」クレール クイグリー/パトリシア フォスター(著)ヘレン コールドウェル(監修)山崎正浩(訳)
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