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【LAWドキュメント72時間】地学ノススメ

「地学ノススメ 「日本列島のいま」を知るために」(ブルーバックス)鎌田浩毅(著)


■地学とは?

地学は、地球を構成する物質を解明し、地球の過去や現在を理解することで未来を予測する学問です。

地球科学とも呼ばれ、地球を研究対象とする自然科学に分類されます。

地学の目的は、地球の過去や現在を理解することで未来を予測し、地震や火山、土砂災害などの自然災害や地球環境問題の防止・対策に役立てることです。

地学の研究領域はさまざまで、次のようなものがあります。

①天然・人工の結晶などを対象とする「鉱物学・結晶学」。

②地質・地盤を対象とする「地質学」。

③地殻・マントルなどを対象とする「岩石学・火山学」。

地学とほぼ同義の地球科学には、地質学・鉱物学・火山学・古生物学・海洋学・自然地理学・地球物理学・地球化学などが含まれます。

一方、地学には地球以外の天体に関する学問や、人文地理学など人文科学の分野も含まれます。


■ぎゅぎゅっと地学

豊かな大地があり。

海があり。

空がある。

私たちの地球。

「超絵解本 大地、海、空、そして宇宙 ぎゅぎゅっと地学」田近英一(監修)

そこは、多くの生命が住む奇跡の惑星です。

そんな地球と、それをとりまく宇宙のダイナミックな変動について学ぶのが

「地学」

です。

地学の知識は、地球に生きる私たちがもっておくべき

「教養」

といえるかもしれません。

「別冊 大人の教養教室 新・地学の教科書」

なぜなら、21世紀になって、

・環境問題

・甚大な自然災害

など、地球環境の変化が、私たちの暮らしに、大きな影響をおよぼすようになっているからです。


■仕方なく地学・・・

実は、英語には、

「地学」

に相当する言葉がありません。

地質学、気象学、天文学の総称を、日本の高校では、

「地学」

と称しています。

恐らく、英語で一番近いのは、"Astronomy"でしょうか。

「地」の部分も"planetary science"として"Astronomy"の一分野なので。

何と言えばいいか、物理、化学、生物学に収まりきれないものを突っ込んだ、英語圏のクイズ番組でいうと"potpourri"に分類されるのが地学という感じですかね。

いや、もしかしたら、博物学(natural history)の方だろうか。

そのせいか、地学というのは、

「理系」

には、一番人気がないようだです(^^;

文系の学生が強要、失礼・・・、教養課程で

「仕方なく」

取るというケースが、多いようにも見受けられます。


■なぜ日本人は「地学」を勉強しないのか・・・


■地学に興味がわく

「イラストで学ぶ 地理と地球科学の図鑑」柴山元彦/中川昭男(日本語版監修)東辻千枝子(訳)

ところが、ここ数十年で、最も面白くなったのは、この地学なのである。

科学は、実験と観測からなるが、第三の手法として、

「シミュレーション」

というものが登場したが、この第三の手法の恩恵を、一番受けたのがこの地学だからです。

地球シミュレーターという素敵な名前の電脳が登場したのも、21世紀に入ってからの事ででした。

かつて、最も博物学に近かった地学にも、「近代化」の津波が押し寄せて来ています。

かつては、定性的にしか扱えなかった事項が、今、やっと定量的に扱えるようになったんですね。

しかし、地学は、断じて、

「うんちく学」

ではありません。

それらの知見のほとんどは、それこそ、世界中の科学者たちが、汗まみれになり、泥まみれになり、時には、命をかけて集めてきたものです。

地学は、最も、

「ガテン系なサイエンス」

でもあります。

いくら地球シミュレーターがあるからといって、それに食わせるデータは、最も汗臭い方法で、かき集めているのだから。

確かに、高校の3年という時間の中で、効率的に知識を与えるには、お湯を入れて3分で食えるような

「加工された」

知識でないと、だめなのやも知れない。

だけど、それじゃ、なんで

「科学」

「食いたい」

と思うだろうか。

発見という皿の上に載った料理も、確かに科学の味ではあるが、本当に

「うまい」

のは、その過程ではないか。


■新しい高校地学の教科書

「新しい高校地学の教科書―現代人のための高校理科」(ブルーバックス)杵島正洋/松本直記/左巻健男(著)

本書に関して言えば、シリーズ4冊の

「料理」

としての味はすばらしいが、

「インスタント食品の味」

ではある。

過程を楽しませるという一点において

「ロウソクの科学」(角川文庫)ファラデー(著)三石巌(訳)

に遠く及ばないのは、学習指導要領を責めるべきなのだろうか。

しかし、

「インスタント食品」

だけに、いつでも、どこでも、味わえるという利点は、すばらしい。

満員電車の中でも、カプセルホテルの中でも、ちゃんと科学の味がする。

しかし、やはり

「高校」

が頭についている以上。

「なぜ科学?」

という、

「青臭い疑問」

にも、正面から答えて欲しい。

本書は

「なぜ科学?」

を過ぎた、あるいは、それを疑問に抱かなかった人々にはすぐ味わえるが、この青臭い疑問を強く抱く、ある意味最も科学者向けの生徒達へのアピールがやはり弱いと言わざるを得ない。

この部分に関しては、アメリカの教科書も参考にしてもらいたかった。

アメリカの教科書はほんと分厚い。

大学まで行かぬとも高校の段階でそうだ。

なぜそうなるかというと、

「料理の過程」

を端折らずに載せているから。

だから載っている

「料理」

の数では、日本のそれと変わらないが、

「レシピ」

は、ずっと豊富だ。

実は、執筆陣たちは、その点をよくわかっている。

いかにして、既存の教科書が伝えきれなかったことを、伝えようかという姿勢が、どの一冊からもきちんと伝わってくる。

しかし、あまりに学習指導要領に縛られている。

どうせやるなら、文部科学省に喧嘩を売るつもりぐらいでやって欲しかった。

その意味で、同じ"Yet Another Textbook"の分野として見ると、この四冊は「高校生のための文章読本」三部作に何歩か及ばない。


■日本列島の贈りもの

あまり人気のない地学ではあるのだけれど、豊かな和の食材は、地震や噴火と引き替えに得たものだった!んだよね(^^)

「和食はなぜ美味しい 日本列島の贈りもの」巽好幸(著)

「料理は科学である」

とはよく言われますが、普通は、せいぜい、美味しさを引き出す調理法や食品に起こる化学反応まで。

この本の真骨頂は、食材となる生きものの生態から、それを育む土壌や地形、そして、これらを生み出した日本列島の成り立ちにまで及ぶところにあります。

事例1:
駿河湾や相模湾のエビが美味しいのは、エビをはぐくむ湾が深いから。

そして、それは、プレートの沈み込みで生まれた南海トラフの深さと関係する。

事例2:
京都西山名産の筍が美味しいのは、海性の粘土質の土壌で育つから。
そして、この土壌は、かつて京都まで広がっていた瀬戸内海に由来する。

そう、食べものは、ダイナミックな地球の変動とも繋がっているので、地学を学ぶと、旨味が増してきます。

「四季折々の日本の料理を嗜むときに、それらをはぐくむ日本列島の地勢や自然の成り立ちを知っておくことも味わいを豊かにする。」とは著者の弁。

軟水の日本(ヨーロッパは硬水)でないと、昆布のうま味成分が溶け出しにくいので、実験するのも面白いですよ(^^)


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